ひきポスーひきこもりとは何か。当事者達の声を発信ー

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ひきこもりは終わらない 〜「ふつう」に見える当事者たち〜

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画像:Sweetie187 

(著者SS /30歳 男性)

  

 平成が生んだ"ひきこもり"

 残りわずかとなったこの平成の時代には、「オタク」や「ニート」といった若者にまつわる言葉が社会に広まった。今年で30歳になった私くらいの世代は、「ゆとり世代」や「ミレニアル世代」という言葉でくくられ、メディア上で評論の対象になっている。

  中身が同じものであっても、どのような名前をつけ、どう定義するかによって、物事の印象は変わってくる。

 いま日本で使われている「ひきこもり」という言葉も、厳密に中身を考えてみると、とらえがたい意味合いをもっているように思う。

 

  厚生労働省による「ひきこもり」は、「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、 6ヶ月以上続けて自宅にひきこもっている」状態(※1)と定義されている。

 

 私は十代・二十代の頃に、この条件にあてはまる生活をしていたことがある。今は一人暮らしをして就職もしているけれど、私は現在の自分のことを、「ひきこもり経験者」よりも「ひきこもり当事者」に近いと思っている。

 私にとっての「ひきこもり」の言葉からすると、厚労省の定義は限定的すぎる。これだけでは、ひきこもる人を強制的に外に出しただけで、「ひきこもりを解決した」と言うことも可能だ。けれど、「ひきこもり」は外に出れば終わりというものではない。

 

 すそ野に立つひきこもり

 仮に十年間ひきこもっていた人が、急に社会に出て人と接するようになったとしても、精神的な問題がいっぺんに解決するはずはない。むしろ支援者の中で、どうしてそのように考えられる人がいるのかがわからない。就職したとしても、結婚したとしても、その人が生きづらさを抱えたままなら、その人はまだ「ひきこもり」問題のすそ野に立っている。

 

 私の「ひきこもり」経験は、テレビの発信してきた「ひきこもり」のイメージともへだたっている。たとえば髪のボサボサの太った男が、真夜中の散らかった部屋でパソコンに向かっていて、アニメか何かに熱中している、というようなイメージ。

 モデルはいるのだろうけれど、少なくとも私自身の「ひきこもり」はそういった姿ではなかった。体は痩せ型で、身なりには気を使っていたし、昼夜逆転は一度もなかった。アニメや漫画は特に趣味ではなく、掲示板などのネットの世界にもハマらなかった。

 

 精神的に不安定な時期もあったけれど、実家にいた時は親と食事をして、日中はテレビを見たり、本を読んだりして、多くは平凡な過ごし方をしていた。人との交流が極端に少なかったことをのぞけば、見た目はふつうの若者に見えたと思う。 

 

 キーワードとしての「ひきこもり」

「ひきこもり」と言ったときに、重い精神疾患を患った人や、人間関係を完全に断って数十年を過ごしている人もいるだろう。ただ、個人的にも社会にとっても、「ひきこもり」という言葉は広い含意を持っている。

 たとえば、「ひきこもり」の女性に焦点をあてた「ひきこもりUX女子会」は、主催者の予想をはるかに上回る参加者数を記録した。それまでは専業主婦や家事手伝いとされてきた女性たちが、「ひきこもり」のキーワードによって集まり、多くの支持を得た企画だった。

 

 私の参加してきた「ひきこもり」に関する集まりでも、多様な人が参加している。精神的に不安定な人もいるけれど、さわやかで社交的な人もいれば、就労して賃金を得ている人もいる。これらは行政が問題としたり、テレビで取り上げられるような旧来の「ひきこもり」ではないだろう。けれど特定の生きづらさを持って、「ひきこもり」と地続きの苦しさを経験しながら生きている人たちだ。

 特定の状態だけが「ひきこもり」なのではなく、多くの人の生きづらさを結びつけて、サポートへとつなげるコンセプトとして、「ひきこもり」という言葉が活きている。

 

 もしもまだ「ひきこもり」という言葉が、「暗い部屋に閉じこもった男」しか意味していないと思っている人がいるなら、新しい定義を付け加えることをおすすめする。現代の「ひきこもり」の諸相を見渡すなら、生きづらさを抱えながら生きている、社会的には「ふつう」な当事者たちの姿を想定できるはずだ。

 

1 厳密には、「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(厚生労働省、平成 22 519 日公表)において、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念」と定義されている。

 

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