ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

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ワケあり女子のワケのワケ⑯ 高校中退という選択

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(実家の集落近辺。撮影:ワケあり女子)

こんにちは!ワケあり女子です。

Twitter(@wakeali_joshi)が全然更新できません!やばい、三日坊主だってバレる……!

そのうち慌てて更新しますのでどうか生ぬるい目で見守ってやってくださいm(_ _)m

そんなワケで、「ワケあり女子のワケのワケ」、今週はついに、中退します!えらいぞ17歳の私!笑

 

www.hikipos.info

(これから記述するひきこもり期、おもに15歳から18歳頃までの出来事については、
 本人の記憶が曖昧なため、時系列など一部正確でない可能性があります。)

顔見知りのいない町

伯母の家での居候生活も数ヶ月が経った。
犬の散歩や夕飯の買い物など、ちょっとした用事を引き受けて家庭への貢献度を保ちつつこっそりとメンタルクリニックへ通う生活だったが、
前回の件で通院をやめてからはあてもなくぶらぶらする日が続いた。
散歩の途中で皮膚科を見つけたので、アトピーを治しに通ってみたりした。

そんなことができたのはそこが顔見知りのいない町だったからだ。
日中にジャージ姿でうろつくのを不審な目で見られることはあっても、
顔だけでどこの誰かまで特定されることはない。
これがもし実家付近ならたちどころに噂が広まるだろう。
田舎のそういうネットワークは時にSNSよりも強い。

不登校中の学費は「ムダ」?

実家や高校の担任ともかろうじてやり取りを続けていた。
父親は時折様子を見にきてくれた。母親のことは覚えていない。
ただどこかのタイミングで母親に言われたことだけは覚えている。

行きもしない高校の学費を払い続けるのがもったいない、と彼女は私に言ったのだ。

そこまで貧困家庭というわけでもないのに、公立高校の学費を出し惜しまれるなんて思いもしなかった。
それはまるで、入会したはいいもののほとんど通っていないお稽古事とか、
無料期間を終了しても契約しっぱなしの課金サービスなどと同じような扱いだった。
ムダな出費として切り捨てられようとしていたのだ。
私が優等生でいる間は散々人に自慢していい思いをしてきたのに、
学校に行けなくなった途端にこの仕打ちなのか……。
怒りを通り越して、親に失望した。

とはいえ自分でも改めてよく考えてみると、もはや学校に通いたいという気持ちはほぼないことに気づいた。
教育システムや学歴格差など、あらゆることに疑問を抱いてしまった今、
どうしてあの画一空間に無批判に戻ることができるだろう。
私には無理だと思った。中退しよう。それしかない。
私が私の人間性を担保するには、もうそれしか方法がない。

担任に連絡をして、退学届を入手した。
意外とあっさりした、A41枚のわら半紙だった。
他の記入欄は覚えていないが、最後に退学理由を書く欄があったことだけは覚えている。
そんなもの、社会人の退職届なら「一身上の都合により」とでも書いておけばいいような欄だ。
しかし当時は随分と頭を悩ませた。
テンプレートで身を守る術なんてまだ知らなかった。

みんなここになんて書くんだろう。
「家庭の経済事情により」とか、「妊娠・出産のため」とか……?
私は「自分自身の将来のため」というようなことを書いた。
自分の将来のために、必要なことだと判断したのだ。

定時制高校に通ういとこに編入を勧められたが、断った。
どんなスタイルの高校も自分にはもう合わないと思った。
そして「高校へ通う」という目的のなくなった私は実家へ戻されることになった。

ついに何にも所属せず、何者でもなくなってしまった。
17歳の冬が終わろうとしていた。

 

(つづく)

(著・ワケあり女子)