ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

『ひきポス』は、ひきこもり当事者、経験者の声を発信する情報発信メディア。ひきこもりや、生きづらさ問題を当事者目線で取り上げます。当事者、経験者、ご家族、支援者の方々へ、生きるヒントになるような記事をお届けしていきます。

国際的に広がる当事者メディアHikipos編集のネットワーク ― 私たち編集部の舞台裏を少しだけお見せします。


Japon : la vie en retrait des "hikikomoris" par France24

文・ぼそっと池井多

 

海外からのご反響をいただいて

それまでも、南米やアジアのひきこもりを紹介させていただく記事を発表するたびに、それぞれの近隣諸国から数日に一件ほどのペースで反応をいただくことはあった。

しかし今年1月、France24というフランスに拠点を置く国際テレビ放送網によって、私たちひきポス Hikiposの活動が紹介されたときには、一日に数件を上回るペースで世界中からお問い合わせやコメントをいただくようになった。

こうなると、「反応」よりも「反響」という語があてはまる。

「ひきポスに集まっているひきこもりたちは、ノン・コンフォルミスト(体制に逆らう者)だ」

などという勇ましい論調で報道されたために、寄せられた反響の数々も、

「その勢いでぜひ、アメリカ主導のこの世界をひっくり返してください」

などという、「いったい何の話か」と私たちが度肝を抜いて首をかしげてしまうものも少なくなかった。

しかし、なかには私たちひきポス Hikiposが目指していることを、報道者以上に正しく把握してコメントやサポートを寄せてくださる外国の方々もいた。

それも、抽象的な声援にとどまらず、インターネットを介して、具体的に私たちの編集を地球の裏から手伝いたいと言ってくださる方々があらわれたことは、私たちにとってたいへん嬉しいニュースであった。

 

南米大陸でデザインされた本誌

その一つが、冊子版の次号、すなわち3月に発行を予定している第6号の表紙デザインである。本記事が配信される3月7日の段階では、第6号はまだ発売していないので、そのデザインの全貌を皆さまにお見せすることはできないのだが、ウェブ版の愛読者の方々には、ひごろのご愛顧に感謝して、そのごく一部をチラリと先行してお見せしよう。

 チラリ。

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この一部がどのように表紙全体に展開しているかは、第6号が発売されてからのお楽しみとさせていただく。

ともかく、これはひきポスHikiposの活動に深い賛同を示してくださった、ブラジル人でいまウルグアイで活躍している美術家ダグラス・P・ロボさんの傑作なのである。

 

 プロの翻訳技による英語記事

また、記事の翻訳でも、これを機会に海外から強力な助っ人が加わった。

これまでこのウェブ版Hikiposにおける 外国語の記事は、いくつかの例外をのぞいて不肖私、ぼそっと池井多が書いてきたわけだが、しょせんは私は翻訳の素人であり(というか、そもそも「働いてない」から何に関してもプロではない素人であり)、自分が日本語で書いた文章でさえ、ときには外国語に翻訳できなくて、頭をかかえこんでいたものである。

そういうときは、日本語を外国語に訳すのではなく、初めからたどたどしい外国語で書きなおしたほうが、私には楽であった。このようにできあがった文章でも、ようするに外国の読者に意味が通じればよいのだが、結果として、英語版とフランス語版と日本語版が、逐語的にまったく対応しない、などということも起こった。

そうこうするうちに、日本のアニメ文化の影響か、海外の多くの国では「ひきこもり」という語だけをいちはやく輸入して、正しい認識も伴わないまま使い始めるようになってきた。インターネット上には「ひきこもり」の語義や歴史について、あまりにも誤った言説が散見されるようになった。

こうした国際的風潮を見るたびに、「これはよくない」と思い、私は昨年12月に発表させていただいた拙記事、

「ひきこもり」概念の拡大 ー 誰でもかれでもひきこもりになる時代を振り返る

を一日も早く外国語でも発信しなければ、という必要性を感じるようになった。

www.hikipos.info

 

ところが、自分で書いた日本語が厄介で、翻訳が至難の技である。せめて英語だけでも、と思ったのだが、どうも私自身の手に余っていた。

そこへ今回、英語・フランス語・日本語を自由にあやつるプロの翻訳者、フィンチさんがヨーロッパ大陸から編集に参入してくれることになり、私自身がこれまで訳すことのできなかった記事も、英語版を作ってくださるようになったのである。

これがまた、すばらしい翻訳なのである。

「なるほど、自分の言いたいことを英語にすると、こうなるか」

と、目を見開いている。

というわけで、日本の読者の皆さまにはあまり必要ないかもしれないが、今日は同記事の前編の英語版を発表させていただくに際して、その前座として、昨今の私たちHikipos編集部の舞台裏を少しばかりお届けしたという次第である。

 

くだんの記事はこちら。

www.hikipos.info