文・インタビュー ぼそっと池井多
瀬戸さんは現在47歳、女性のひきこもり当事者である。以前ほかのメディアで発表した彼女のインタビューを編集して、ダイジェスト版でお届けする。
蒸し暑い夏でもお風呂に入れない
ぼそっと池井多:私は中高年の男性のひきこもりですけども、うつで動けなくて何日もお風呂入れないと、
「自分の体臭がくさいんじゃないか」
といろいろ考え、それが原因でさらに外へ出かけられない、という状態になります。
とくに夏場はこわいですよね。
さらに中高年になってくると、自分では感知できない加齢臭というのが加わります。これで指さされ、責められるとなると、まるでカフカ『変身』のザムザ状態となり、自分ではわからない理由で他人から指弾されるわけです。
こうなってくると、世の女性たちが「オヤジはくさい!」みたいな話をネットでしているのを見るだけで、なんか罪人にでもなった気分になって、よけい外へ出られなくなります。
女性にも、こういうことはあるんじゃないですか。
瀬戸:私は自分のことしかわからないので、男性と女性、どっちがそういう傾向が強いかはわからないですけど、鬱がひどくなると、たしかにたとえ夏であろうと、お風呂には入れなくなりますね。
いまは、私は三日に一度はお風呂に入れています。
でも、ほんとに鬱になって完全に周りをシャットアウトしてしまう時期が定期的にやってきます。期間としては、一ヶ月から長くて三ヶ月。
ひどい時は半年ぐらい周りをシャットアウトしないと、受けた刺激を消化できなくて。そういうときは、本当にお風呂に入れないです。
2012、2013、2014年の3年間は、それぞれ100日近くお風呂に入れない時期が続きました。
でも、アトピーがあるんで、パジャマを変えたり、水でちょっと顔を洗ったりはしてました。
あとは一切しません。なぜか、お風呂にだけは入れないんですよ。
体臭をごまかして大衆の中へ
ぼそっと池井多:その、100日ぐらいお風呂に入れなかった時っていうのは、季節は冬でしたか?
瀬戸:夏でした。
たしかに私は冬も動けないんですけど、その時は原因があって特別に夏に鬱になっていたのです。
ぼそっと池井多:お風呂入れない時は、外出はどうしてますか。臭いまま出かけるのですか。夜コンビニ出るだけとか?
瀬戸:夜11時まで空いてるスーパーがあるので、たいてい暗くなってから、そこに買い物へ行きます。
冬だったら帽子をかぶって行きます。帽子かぶっても「ちょっと臭いかも」と思う時は、エッセンシャルオイルをつけていきます。それを安く買えるサイトがあるんですよ。そういう所で買った奴を、帽子につけて誤魔化して。
服は毎日取り替えてる。案外、臭ってるのは服なんですよね。毎日服を替えてると、地肌っていうのはそれほど臭わない。
垢は、みんなこすれて服の方に移っちゃうのです。
とにかく服をまめに替えて、帽子をかぶって、冬だったらコートとか着ちゃえば、臭いのはそんなにバレないと思ってます。
夏ですね、困るのは。
ぼそっと池井多:なるほど! とにかく、ひきこもりの臭い対策は、服しょっちゅう替えて、防御するというわけですね。
でも、服を替えたら洗わないといけないでしょう。服をしょっちゅう洗うっていうのは、面倒くさくないですか?
瀬戸:それが、私の場合、すごい鬱で寝込んでても、なぜか洗濯だけはできるんですよ。
「お腹すいた、スーパー行かなきゃ」
って思った時に、ついでに服も替えて洗濯もしちゃうんですね。
でも、そこだけ取り上げられて、
「鬱でひきこもってる割に、けっこう動けてるじゃん」
なんて言われると、
「うっ!」
って詰まって、困っちゃうんですけど。
・・・「第2回」へつづく