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就活で90社落ちるってこういうこと

 

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(文・湊 うさみん)

 

就職活動で90社落ちた。

 

世の中の人は「受かるまで活動続ければ働けるだろ、甘えんな」などと気楽に言うけれど、それがなぜ無理だったのかはこの90社という数字に表れている。

 

当時は100社受けてみてダメだったら別の道を探してみようと考えていた。でも実際には90社だったのは、精神力が持たなかったからだ。

 

就職活動で不採用になるということは「お前なんかイラネ」と」ゴミ箱の中に投げ捨てられるようなことだ。面接官に面と向かって言われるわけではないけれど「使えなそうだから採らない」という意思表示であることは間違いない。

 

元々ストレス耐性が高いほうではなかった私は、完全に心がやられてしまった。100社に到達することなく、90社で行き倒れになってしまった。精神状態は最悪で、親の前で大泣きしていたことを覚えている。

 

「100社受けてダメなら200社受けろ」と世の中の人は言うけれど、ハッキリ言ってそんな数はおかしい。異常な行動をしなければ働くことができないのは間違っていると思う。自立のハードルがあまりにも高すぎる。

 

私のようなダメ人間が就職するのが無理なのは、本屋に行ってみればわかる。本棚に並んでいる就職活動の指南書は、「海外留学をした」とか「ボーイスカウトでリーダーを務めている」とか「英検1級」とか輝かしい経歴を持った人向けばかりだ。

 

私の経歴はと言えば「フリーター4年」「小学校の頃飼育委員をやった」「ジャンケンで負けて遠足の班の班長をやった」といったものだ。このような人のための就職マニュアルがないということは、不可能だからそのような本は書けないという事実を表している。

 

90社落ちたあとは薬を飲みながらも、日雇い派遣で働くことにした。パートやバイトでないのは、良さそうな会社があったらそこに就職するためにフットワークを軽くしてきたかったからだ。

 

しかし、日雇い派遣でもうまくいかなかった。

 

刺身にたんぽぽを添えるだけのような誰でもできる単純作業だと思っていた。そのような仕事でとりあえずお小遣い程度を自力で稼いでおけばいいと考えていたのだが、働くというのはそんなに甘くはないようだ。

 

日雇い派遣を取り入れている仕事場の場合、毎日新しい人が来る。その度に仕事を教えるのは面倒なので、「教えない」「超おおざっぱな教え方をされる」の二種類のどちらかの対応を受ける。

 

自分でやることを判断しなくてはいけないのだけど、現場を知っているわけではないからどうしても判断ミスをしてしまう。そのたびに怒られる。雷を落としたような大声で怒鳴られたこともある。

 

いくつか職場を選んで働いて、パチンコのデバッグ、チラシ配り、食品工場、ピッキング、運送会社などをした。かつて4年間フリーターをやっていたことがあるけれど、その時とは扱いが違った。どこも「所詮は使い捨ての日雇い派遣」という見下された対応を取られた。

 

次第に日雇い派遣にも行かなくなった。派遣会社に中抜きされたうえにストレスフルな職場で働くのは割に合わないと思った。この時が27歳くらいだ。

 

それからしばらくはこの先はどうやって生きていこうか悩んだ結果、小説を書けるのなら小説家になればいいという結論を出した。売れっ子になれなくてもコネを使ってうまく立ち回ればライターとして使ってもらえるという目論見だった。

 

しかし、10年以上書き続けても結果が出せない。編集者に名前を覚えてもらえるところまでは言ったが、出版にはつながらない。

 

就職で落ちまくり、小説を投稿しても落選ばかり。

 

落ちるということは自分を否定されることだ。あり得ない量の否定をされ続けた私は精神がイカレてしまい、やがて自殺未遂に至る。今もなお、働くことはできていない。(ひきポスのライターは別)

 

働くということは人権であり正義である。例えばマザーテレサのような人間性を持っている人であっても、若くして生活保護を受けていたら「働けよクズ」などと罵倒される。

 

つまり、働いていないというだけですべてを否定される立場になってしまう。人間扱いされないのだ。私は働くための努力はしたが働けなかった。

 

「人間」になるためのハードルが高すぎる。私は人間になれそうにない。