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ひきこもり、外に出る

 

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(文・湊 うさみん)

 

日本一の詩人、中原中也は精神病院に強制入院させられ、脱走。精神衰弱して外を出歩くのは人のいない深夜のみだったと言います。

 

人のいる昼間に外に出たくない気持ちはよくわかります。みんなが自分を見下しているんじゃないかとか、自分の存在は異質だからじろじろ見られるとか、色んなことを妄想してしまうんです。

 

実際に外に出るとそんなことはないんですが、ニートをやっていて自分への自信が底辺まで行きつくと、被害妄想が表れてしまうんです。

 

私も外がイヤだなーという時期があって、食料の買い出しをしに行く時は必ず深夜でした。

 

しかし、コンビニや24時間スーパーには店員がいます。店員が「温めますか?」とか「お箸いくつつけますか?」とか聞いてくるところはNG。ひたすら無言で接客してくれるお店を選んで行ってました。

 

同じ時間帯に行くことが多く、ごくまれに「よく来られますけどポイントカードを作ると便利ですよ」などと言われることがあります。そうなるともうダメ。そのお店には二度と行きません。

 

人間が苦手すぎて、コンビニの店員に顔を覚えられるというだけで強い嫌悪感があるんです。もちろん自分でも異常だとわかっているんですが、湧き上がってくる感情はどうしようもないです。

 

そして外へ

それでも「このままではいけない」という危機感はありました。ちゃんと外が怖くないようにしないと。誰もいない町は快適ですが、問題なく外に出られるようにならないと。

 

そして私は作戦を決行しました。

 

毎日昼間に外に出る。最初のうちは「いやだなー」「暗いほうが安心する」などと考えていましたが、通行人たちは誰も私のことなんて気にしていない様子で、外に出ても怖いことはないと成功体験を積みました。

 

しかし、毎日外に出るにしても行くところがありません。図書館に行くと顔を覚えられるし、遊ぶにしてもお金がない。なので仕方なく近所の公園のベンチに座ってぼーっとしてました。

 

でもね、意味なかったんです。外に出さえすれば何かが変わると思っていたんですよ、本気で。しかし、活発な性格になるとか、働く意欲が出るとか、そういった変化は起きませんでした。

 

何も変わらなかった。いや、正確に言えば何も変わらなかったことにショックを覚え、失敗のトラウマに打ちのめされてしまった。

 

それからは毎日出歩く無意味な行動はやめました。また部屋に閉じこもりがちになってしまいました。

 

慣れたことで昼間に出歩くことがあまり怖くなくなったのはいいんですが、美容院みたいに誰かと深く関わらないといけない場所には未だに行けてません。

 

「外に出る」というのは物理的に外に出ることではなく、「外の世界に触れる」ことなのだと思います。誰かと話したり、働いたり、美容師さんと楽しく会話したり。

 

そうすることで始めてひきこもりを脱出できるのだと思います。美容師さんとの会話は生まれ変わりでもしない限りできる気はしませんけどね。

 

子どもの頃はひきこもってなかったけれど

人生をドロップアウトしたのは20代の時なのですが、ひきこもりの兆候のようなものは幼少期からありました。

 

人の目を見れない。

 

なぜだかわからないけれど心理的にものすごく抵抗があるんです。相手が見知らぬ人であろうが、友達であろうが関係なし。まったく目を見ることができません。

 

動物を飼っている人は知っているかもしれませんが、動物の世界では目を合わせる行為は敵意を意味してます。野良ネコ相手に目を合わせたら引っかかれることもあるので注意しましょう。

 

精神的に衰弱しているせいで、そういうマイナスの意味合いを持った行為をできないのかもしれません。人間の世界ではきちんと目を合わせて「話を聞いていますよ」という意思表示をするのが当然だとわかっているのですが、その当然ができない。

 

今もなお人の目を見れないわけですが、これから先、誰かと目を合わせて会話することはあるのかなあと時々考えます。死ぬまで無理なんじゃないかな。

 

生まれ変わったら、かたつむりになって、家(殻)にひきこもったまま外出もできるようになりたい。