ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

『ひきポス』は、ひきこもり当事者、経験者の声を発信する情報発信メディア。ひきこもりや、生きづらさ問題を当事者目線で取り上げます。当事者、経験者、ご家族、支援者の方々へ、生きるヒントになるような記事をお届けしていきます。

電話するくらいなら死んだほうがマシ

f:id:usa_mint:20190103153248j:plain

 

 (文・湊 うさみん)

 

殺人。自殺。災害。電話。死刑。虐殺。葬式。

 

一つだけ仲間はずれがあるじゃないかと思うでしょうが、私にとっては仲間はずれではないんです。電話がとにかく嫌いで嫌いで仕方なくて、上に挙げたような単語と同じくらいマイナスの意味合いを持っています。

 

心の底から電話が苦手です。私は虫が大嫌いなのですが、ゴキブリと電話が肩を並べるくらいの存在になっています。

 

アルバイトの面接を希望する時、大抵の場合は電話をしなくちゃいけません。ネットに掲載されている情報であってもメールではなく電話です。

 

なので、いい条件の求人があっても「電話にてご応募してください」と書いてあるだけで却下になります。ウェブに載ってる情報なんだからメールで応募させてよ!と本気で思います。

 

最近はウェブでの応募も増えてきつつありますが、ようやく時代が追い付いてきたなどと考えるのですが、アルバイトの面接以外にも電話しなくちゃいけない機会は結構あります。

 

例えば、病院。精神科の場合は初診の場合、あらかじめ予約をしておかなければいけないケースがほとんどです。

 

「〇〇と申しますが、初診の予約をしたいのですが」
「□□日の〇〇時でお願いします」

 

それくらいしか言わないとわかってるのですが、電話をかけるのが恐ろしくてたまりません。結局、良さそうと思った病院を捨て、メールで予約できる病院を選びました。

電話のない世界に行きたい

もし電話をしなくちゃいけない状況になった場合、紙に言うセリフをすべて書いて、深呼吸をして、頭の中でイメージトレーニングして、「大丈夫大丈夫」と自分を鼓舞して、それでようやくかけられます。

 

電話が終わったあとは精神的エネルギーをすべて使い果たしてもう起き上がっていることすらおっくうで、布団に横になります。遊ぶ気も起きません。何時間かはぐったりしてます。

 

また、郵便物の再配達の依頼をする時もものすごく緊張します。「自動受付センター」と書いてなければ電話できません。

 

人間と会話しなくちゃいけないのなら、荷物はあきらめようとすら考えます。最近はネットやLINEで再配達の受付をしてくれることも多いので、生きやすい世の中にありつつあると実感しています。

 

ある時、この電話嫌いを治そうとアルバイトの面接を電話で取り付けたことがありました。名前を名乗り、面接希望であることを伝えると、先方はこう言いました。

 

「あなた中国人?」

 

日本人です。生まれも育ちも東京都の生粋の日本人です。両親祖父母も日本人です。発音がつたなくなりすぎていたために中国人と間違われたのでしょうが、ショックでした。

 

私がコミュ障でなければ「どうも、魏から来た曹操です」などとノリのいい返し方をできたのですが、電話苦手にとっては切り返しもうまくできません。

 

「え……いえ、違いますけど」


と若干キョドった返しをするしかありませんでした。相手は「んー、そう」と気のない返事。

 

このアルバイトは面接しましたが、結局落ちました。努力はまったくもって無意味だったわけです。正確に言うと、さらに電話嫌いになりました。

電話機能のない携帯電話がほしい

また、私はスマホも持っていません。正確には持っているのですが、5000円くらいで買ったSIMなしのスマホで、音楽プレイヤーとして機能しています。

 

もしも私が電話を持った場合、電話をかけてくる人がいるんです。当たり前なんですが、電話番号を持つと応対しなくちゃいけない。だから私は電話機能のあるものを持つことができません。

 

スマホがない時代に携帯電話を持っていたこともありましたが、電話がかかってきたら、メールで「どうしたの?」と返事を返す始末。

 

どうしてこんなに電話が嫌いなのかと自己分析してみると、おそらく以下の三点が原因です。

 

1.コミュ症で話すのが苦手
2.自分の声が嫌い
3.ICレコーダーで自分の声を聞いた時、ものすごく気持ち悪い声をしている

 

3は誰にでも当てはまる現象のようですが、ネガティブ思考の私を電話嫌いにさせるには充分な理由でした。

 

この異常なまでの電話苦手が、私の生きづらさを作っている一因です。いや、苦手というより「怖い」とか「恐怖」と表現した方が正確ですね。

 

もしもテレフォンオペレーターの仕事をすることになったら、私は死を選びます。冗談じゃなく本気で。

 

 

執筆者 湊うさみん

20代でドロップアウト。ニート歴10年以上のエリートニートになっちゃいました。

ツイッター→https://twitter.com/usa_mint3