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ひきこもり経験者の詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』ご案内

(文 『ひきポス』編集部)

 

不登校・ひきこもり経験者の喜久井ヤシンさんが、詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』を発表しました。

 

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   書籍情報
題名:ぼくはまなざしで自分を研いだ(ぼくはまなざしでじぶんをといだ)
著者:喜久井ヤシン(きくいやしん)
制作:子ども若者表現応援基金(https://hyogen.thyme.jp/
ページ数:132
サイズ: 12.8 × 18.2 × 1.0
※本書は「子ども若者表現応援基金」の助成により制作されました。通常の書店でのお取り扱いはありません。

   著者 
喜久井ヤシン(きくい やしん)……1987年生まれ。8歳から学校へ行かなくなり、20代半ばまで断続的な「ひきこもり」を経験している。2015年シューレ大学修了。現在は『ひきポス』『不登校新聞』などでライター活動をおこなっている。2019年NHK『ハートネットTV』出演。同年『引きこもり文学大賞』入賞。
(ツイッター https://twitter.com/ShinyaKikui 

   概要
ひきこもりや不登校の専門メディアで活躍するライターが詩集を発表。渾身の詩35編に加え、アフォリズム集も掲載したボリューム満点の一冊。さらに付録として、引きこもり文学大賞入賞の小説「僕は産まれてから堕ろされた」を収録している。

 

子ども・若者のための居場所を運営している方からのご希望があれば、詩集一冊を無料でお送りいたします。
詳細 当ページ下部に記載 

 ※募集は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

 

詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』について


喜久井さんは八歳から不登校になり、十代のほとんどを自宅で過ごしてきました。

「ひきこもり」の生活は孤独で、家族以外との会話はほとんどなかったと言います。
しかし、悩みを書き綴った日記が心の支えとなり、現在の創作活動の源になりました。

喜久井さんの詩には、一般的な社会で生きられなかった悲しさが込められており、マイノリティならではの視点があります。

孤独を込めた言葉の結晶は、生きづらさを持つ読者の共感を呼ぶのではないでしょうか。

また、親御さんや支援者にとっては、当事者の内面が伝わる一冊になるかもしれません。

 

 

内容紹介


詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』は、三部構成に分かれています。

今回は、各章からいくつかの作品を切りとって紹介します。

 

第一章 生まれてくる前からぼくの顔があった

第一章は、十代で創作した言葉を含んだ、初期の作品集となっています。
比較的シンプルな言葉で綴られていますが、苦しさから生まれ出た表現が感じられます。

  

とおい彼方を見たのと 
おなじまなざしで見られたら
つらぬかれてしまうかもしれない
名札をピンで刺すときと 
おなじまなざしで見られたら
刺さってしまうかもしれない

 

そのような目で人から見られ
そのような目で人を見てきた
(「まなざし」)

 

今日はどの体にしよう?
どんな足を履き
どんな胸を着て
どんな顔をかぶっていくのか。
今日も
ぼくは服に似合っている。
(「ぼくはまるで人間みたいだ」)

 

第二章 短文集

第二章は詩文とは異なり、タイトルのない短い言葉が集められています。
学校教育に対する怒りや、子ども時代への思いなどがストレートに綴られています。 

 

子供であったという喪はまだあけていない。

 

学校
僕は毎日ゆっくりとした落雷に打たれていた。

 

 僕は僕に顔向けができない。

 

僕に何も教えなかった教師たちよ
僕に悲しみを授業してくれ
あなたたちから教わったならきっと覚えていられないだろうから

 

世界中の人が目をつむっても
まなざしが閉じられることはない

 

第三章 ぼくはまなざしで自分を研いだ

詩集の最後となる第三章には、著者が三十代となった現在の作品が収録されています。
現代詩ならではの分かりづらさもありますが、それだけ切実な思いがこめられているのではないでしょうか。

 

夜風吹くマンションの下の方から

沈黙に住んでいる言葉がやってくる

ぼくの名前を思いださせるベランダに

明日を行き止まりにさせる河があった

道のないところで立ち止まり

ぼくはぼくであることの非に耐えている

(「幽霊を埋葬する」)

 

またあしたには 自分をかぶれるだろう

ぼくはぼくに与えられた満潮を知っている

いちばん小さな国境の内周への

打ちよせる波のところにいてすわりこむ

遠くからやってくる酸の粒に息した

ちいさな子の涙だったことのある潮風

どのわたり鳥もふりむかずに飛びたった

ほんとうにそれは地上だったのですか

空の赤んぼうの頬がかげっていくなかで

ぼくはすこしだけりんかくを脱ぐ

溶けていく水平線だけがまなざした腿

顔を剥がしてみるとうらがわの磯には

ぼくでないものがびっしりと張りついていた

削ろうとしても取ることのできない甲殻

ぼくほど外見でいた者はいなかった

(「磯」)

  

付録 スピーチ集

本書の付録として、詩以外の作品も収録されています。
中でも、引きこもり文学大賞入賞の小説「僕は産まれてから堕ろされた」は、「ひきこもり」当事者の叫びが記録されています。 

兄は何十年も前に流れ去ったというのに、僕はこれまで胎盤のような場所で、羊水じみた空気の中で歳月を負ってきた。だけど僕は自分が穏やかなところにいると思えたことは、この人生で一度もなかったと断言できる。実際のところは 母さん 僕は産まれてから堕ろされたかのようだった。僕がこれから亡くなったとしても、生涯を回想させる走馬燈に僕の幸せは見つからない。そしてそんなことよりも、 母さん 何よりもあなたの幸せを見つけることができない。
(「僕は産まれてから堕ろされた」)

 

 

ご提供について

子ども・若者のための居場所(オルタナティブ・スクールやひきこもり当事者のための活動団体など)を運営している方からのご希望があれば、詩集一冊を無料でお送りいたします。

  ※募集は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

 無償提供できる団体の例

・オルタナティブ・スクール(フリースクール)
・自立援助ホーム
・子ども食堂
・「不登校」当事者向けの居場所
・「ひきこもり」当事者向けの居場所

 

提供希望の場合は、件名に 「詩集希望」と明記の上、活動団体名・個人の氏名・配送先のご住所・電話番号の記載をお願いいたします。

可能であれば、活動団体のWEBページへのリンク、もしくは活動内容の概要をお書きください。

応募締め切り: 2020年5月31日まで

※部数に限りがあるため、希望者多数の場合は先着順とさせていただきます。ご了承ください。

 

提供希望・購入方法など、詳細は下記の「喜久井ヤシン|note」のページに記載しています。なお、条件によっては配送できない場合がありますのでご了承ください。

note.com

※サポート(購入)された方限定で、「note」でも詩集の一部を公開しています。

 

 

喜久井ヤシンさんの記事

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