ひきこもり経験者による、1000文字のショートショートをお届けします。〈生きづらさ〉から生まれた、空想の世界をお楽しみください。
令和博物館
このあいだスクールで「令和博物館」の見学があって、古い時代の物をわざわざ見て回った。
令和ってどれくらい昔だっけ?まだ「5G」が出始めた程度の時代だから、どうでもいいんだけど。
「スマホ」とか「VR」とか、笑っちゃうような旧式のアイテムが置かれていた。
嘘みたいだよ。昔の人って、よくあんな遅い処理速度で我慢できてたね。
「令和のジェンダー意識」とかいうコーナーを見たんだけど、令和の日本では、まだ女性差別があったらしいよ。
「政治家の9割が男性」とか、「女性の大学進学率が低い」とか。
本当だとしたら耐えられなかったと思うんだけど、令和時代の人って、なんでそれでいいと思ってたんだろう。
あれ?それともあそこだけ「江戸博物館」の別館だったっけ?
もしかしたらわたしが間違って見ていたのかもしれない。まあどっちでもいいか。
「Twitter」(古すぎでしょ)というネット文化では、#MeTooというムーブメントがあったらしい。
日本では#KuTooっていって、「パンプス」(?)という履き物が強制されることへの抗議が起きていたんだって。
人が何を履くかなんて自由だと思うんだけど、たぶん古代中国の「纏足(てんそく)」と同じことなのかな?
令和っていうのは、きっと今よりも足が大事な文化だったんだろうね。
あと「子育ての変化」みたいな説明があって、雑誌に男性が赤ちゃんを抱っこしてる表紙が出ていた。
あれって、有名人の赤ちゃんではなくて、自分の子どもを抱っこしている写真なんだよね?
父親が子どもを抱くっていう、当りまえのことをやっているのに、偉そうな顔をしているのは何様なんだろう。
「結婚制度の歴史」についても説明がされてたんだけど、当時の結婚は、なぜか夫婦が同じ苗字じゃないといけなかったんだって。
男性二人の結婚を報じているニュース映像もあったけど、今の時代からしたら「だから何?」としか思えない。
はじめは何で報道されているかがわからなかったんだけど、たぶんこのころまでは同性婚が禁止されてたってことだよね?
どうして人を好きになることを制限していたのかは理解できないけど、まあなんにしても昔の話だし。
でも、令和のよくわからないシステムがなかなか変化しなかったっていうことは、当時の人が生きづらさを感じていなかったということなのかな。
この時代の人たちのことは、博物館を見ても、やっぱりよくわからなかったよ。
END
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絵 フルタアキヒコ
思春期に精神的にひきこもる。双極性障害持ちで、入院経験あり。絵と音楽の創作活動に励んでいます。44歳、兵庫県在住です。
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文 喜久井ヤシン(きくい やしん)
1987年生まれ。詩人。不登校とひきこもりと精神疾患の経験者で、アダルトチルドレンのゲイ。
Twitter https://twitter.com/ShinyaKikui
※物語はフィクションです。実在の人物・出来事とは無関係です。
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