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「ひきこもり」の反対語を16個考えてみた 「孤独」や「ぼっち」を対義語で考えるためのキーワード

 

今回は、「ひきこもり」当事者が「ひきこもり」の反対語を考察します。一言では語れない「ひきこもり」の本当の意味とは何か。〈反対語〉を考えることで、新たな発見があるかもしれません。

 

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 まず、ざっと「ひきこもり」の反対語だと思われる言葉をあげてみます。

 

 社会的ひきこもり ←→  社会人 会社員 国際人(コスモポリタン) 健康的(ウェルビーイング)

 

存在論的ひきこもり ←→ 遊び人 のんき者 放浪者 自由人

 

文化的ひきこもり ←→ 押し出し 押込 遊牧民 遊離型

 

通俗的ひきこもり ←→ リア充 パリピ でしゃばり 意識高い系

 

※ 社会問題化された「ひきこもり」よりも、個人において問題化された「ひきこもり」の反対語に注目しています。なお、前回紹介した「ひきこもり」の四分類(https://www.hikipos.info/entry/2020/10/01/070000)を下地にしていますが、当記事だけでもお読みいただけます。

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社会的な意味での「ひきこもり」の反対語 

  • 社会人
  • ウェルビーイング

どのような人でも、生活していれば何らかの社会に出ているはずですが、日本社会では、働いていなければ「社会人」ではないかのような風潮があります。

「会社員」であれば「ひきこもり」への批判は起こらないでしょうし、世界で活躍する「国際人(コスモポリタン)」は、「ひきこもり」のイメージからはかけ離れたものでしょう。
これらの言葉は、「社会的ひきこもり」の反対語の候補といえそうです。

 

行政の就労支援や、外部団体が強制的に「ひきこもりを救おう」などというときの「ひきこもり」は、これらが反対語になっているときの「ひきこもり」だと思われます。

ですがこの使われ方は、「ひきこもり」という言葉の一端でしかありません。

 

引きこもる人が、「健康的」かどうかもポイントです。

「健康」というと、心身の病気や障害のことだととらえられがちです。

しかし社会的に良好であるという意味も含めた「健康」(もしくは「幸福」)のとらえ方で、「ウェルビーイング」という言葉があります。

「ひきこもり」に社会的な充足感に欠けている、というとらえ方に対しては、この言葉がキーになるのではないでしょうか。

「友和」「協同」「紐帯」「パートナーシップ」など、関係性が豊かになることは、問題化された「ひきこもり」とは対照的です。

「ひきこもりを解消するべきだ」というメッセージは、「社会人になって働け」ではなく、「ウェルビーイングを高めよう」という意図で発信してほしいものです。


個人的・内面的な意味での「ひきこもり」の反対語

  • 遊び人
  • 自由人

私自身が経験してきた「ひきこもり」の反対語をあげるとしたら、「遊び人」です。

「のんき者」「自由人」「ユーモリスト」といった特性にも通じます。

 

私は社会通念的な圧力に苦しみ、途切れることのない緊張感が何年も続いていました。

自分の欲求を重視し、多様な娯楽に向かっていける「遊び人」のイメージは、「ひきこもり」の反対として的確だと思います。

「道楽者」「放蕩者(ほうとうもの)」という言葉もありますが、私が「ひきこもり」によって失ったものを一言でいうなら、それは「遊び」(Slack)でした。

生活を豊かにさせるようなゆとりが少なく、自らの欲求がわからなくなっていたのです。
自分の好きなものを心から楽しめているのであれば、一人で部屋にこもっていたとしても、「ひきこもり」の本質的な問題はないと思います。


言語的・文化的な意味での「ひきこもり」の反対語

  • 押し出し
  • 押込(おしこめ)

「引(ひき)」も「籠(こもり)」も、一般的な日本語として使われてきました。

たんに「家にいる」ことや「在宅中心のライフスタイル」のことを、「ひきこもり」といっても間違いではありません。

 

学問別に反対語を探るなら、文化人類学的な観点で「遊牧民(ノマド)」。

生物学的な観点で(動かない生存方法を「固着型」とするなら)「遊離型」などもあげられそうです。

 

言語学的(?)に直接的な反対語をあげると、「押し出し」になるでしょうか。

「引き」の反対が「押し」なのはよいとしても、「こもり」は他の言葉でもよさそうです。

 

私が特に対称的な言葉だと思うのは、「押し込め」です。

中世の日本には、罪人を自室に幽閉させる刑罰がありました。

その名も「押込(おしこめ)」といいます。

自ら「引き」、能動的に「こもる」ことが「引きこもり」であるのに対して、他人が「押し」、受動的に「こめ(られ)る」ことで「押し込め」になります。

力関係の対称性からいっても、言葉の上での「引きこもり」の反対語になるのではないでしょうか。

 

俗語・流行語的な意味での「ひきこもり」の反対語 

  • リア充
  • でしゃばり 

SNSやライトノベルのタイトルなどには、かなり軽いノリで「ひきこもり」が使われています。

それらはたいていの場合、「友達の少ないインドア派」くらいの意味でしかありません。

気軽に使われる「ひきこもり」の反対語にあたるものは、インスタ栄えするような、「リア充」「パリピ(パーティーピープル)」あたりかと思われます。

 

一人で地味なことをしているのが好きだと、「ネクラ」や「ぼっち」といった言葉もあります。

それらの反対語だと、「でしゃばり」や、皮肉で使われる「意識高い系」もあてはまりそうです。

 

なお、「ひきこもり」たちが活躍(?)する小説に、『ヒッキーヒッキーシェイク』(津原泰水著)があります。その小説では、「ひきこもり」の反対語として「デバる(でしゃばる)」があげられていました。

これは、通俗的な意味での反対語にあたるものでしょう。

 

最後に

一口に「ひきこもり」といっても、使われ方はさまざまです。

今回あげた反対語には、一言では言い尽くせないバリエーションがあります。

「会社員」のような身分か、「遊び人」のような特性か、「押込め」のような行為か、「リア充」のような通俗的な言い回しか。

動詞なのか名詞なのか、固定的か流動的かどうかも違います。

「ひきこもりを解決する」「ひきこもりを治す」といった、断定的な口調で語られるときには、言葉の機微がとらえられておらず、経済面のみを問題にしていることがあります。

「支援者」が使う「ひきこもり」の反対語を考えたときに、経済に関することしか含まれていないのであれば、私はその人の「支援」の姿勢を疑います。「ウェルビーイング」や「遊び人」を含めた使い方であれば、話してみようという気持ちも起こるかもしれません。

 

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執筆者 喜久井ヤシンきくい やしん)

1987年生まれ。20代半ばまで断続的な「ひきこもり」を経験している。
ツイッター 喜久井ヤシン (@ShinyaKikui) | Twitter 

 

 

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