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「宗教団体は私にとって何であったか」 中年ひきこもり子守鳩さんの当事者手記  第7回  宗教団体時代 その3

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お祭りの御神輿 写真・PhotoAC

 

第6回」からのつづき・・・

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文・子守鳩

 

前回お話ししたような理由で、私は32歳のときに、それまで12年間、私の人生をささげてきた真理幸福学会(仮称)を脱会したのですが、その12年間、年齢的には20歳から32歳までの期間は、いったい自分にとって何だったのでしょうか。

私の人生にとってどんな意味があったのでしょうか。

 

なかなか答えが出ず、今でも考え続けています。

 

「人生に無駄な経験はない」

と、よく言われます。

 

もし、それが本当ならば、あの年月の経験にも何か意味があり、私の今後の人生を良くするために、きっと何かの役に立つはずだという思いが湧いてきます。

というのも、普通に考えると、若くて活力のある一番いい時期を宗教団体に奪われたように思えてくるからです。

 

「あの期間は無駄だった、意味がなかった、騙されていただけだった」

と感じて、裁判に訴えている元信者の人々もいるらしいです。

しかし、私は今のところ、そうしようとは思っていません。

そこまでの怒りが湧いてこないのです。

 

みんなで御神輿をかつぐ一体感

宗教団体の信者だった12年間には、苦しいことも辛いこともたくさんありましたが、振り返ってみると総じて楽しかったし、やりがいもあり、充実していたことが思い出されます。

 

あのころの気持ちは、例えて言えば、お祭りの時にみんなで御神輿を担ぐような充実感に似ていました。あるいは、野球部で甲子園出場に向けてみんなで一丸になって頑張っている感じにも似ているかもしれません。

 

御神輿を担ぐのも甲子園に出場するのも、経済的には一円にもならない活動でしょう。でも、お金には代えられない一体感、やりがい、高揚感が得られ、同じ目標に向かってみんなで助け合い協力し合う連帯感などが味わえることでしょう。

 

私が感じていたのは、そういうものでした。

だからこそ、朝起きてから夜寝るまで1日15~16時間、1年365日、年間休日0日で働けていたんだと思います。だからこそ、給料月2万円で働けていたんだと思います。

 

 

給料が安くて困ったことはない

どんなにやりがいや充実感があっても、給料が月2万円では少な過ぎますよね。

それでは、どうしてそれで生活できていたのかというと、住むところは信者が20~30人ほどで共同生活している独身寮に住んでいたので、家賃は掛かりませんでした。

食事も朝昼晩三食無料で提供されていたので、2万円の給料は服を買うのと携帯電話代の支払いぐらいにしか使っていませんでした。

 

真理幸福学会では、物やお金に執着するのは良くないことだと教えられていましたし、特に買いたいものもありませんでしたから、給料が安くて困ったことはありませんでした。

 

月2万円でしたから年収24万円。

とうぜん所得税も住民税も非課税レベルでしたし、国民年金も払えないので免除申請していました。国民健康保険料だけは払っていたような気がしますが、労災保険や雇用保険にすら入っていなかったと思います。

 

さらに、会員数拡大や自分の成長のために、自主的に断食や水行すいぎょうもしていました。

 

断食というのは、文字通り水以外何も口にしないのです。

水行というのは冬に風呂場で裸になり、洗面器に水を溜めて、お椀で冷たい水をすくって肩から体に掛けるのです。それを40杯、120杯と掛け続けるのです。

よくやっていたと思います。

断食は最長で7日間やりました。7日間水だけです。

苦しかったですね。

 

 

厳しい性の戒律

けれども、そういう肉体的苦行よりも苦しかったのが精神的修行でした。男女交際禁止という戒律があったのです。

20人から30人という男女で共同生活をしていたのですが、結婚して家庭を出発するまで男女で手をつなぐことさえ禁じられていたのです。男女二人っきりで一つの部屋にいることも禁じられていました。

自慰行為さえも禁じられていました。

おそらく多くの宗教の中でも最も厳しい性の戒律に属していたのではないでしょうか。

私は性の悩みが高じてこの宗教団体に入ったのですが、結局性の悩みは解決しないまま、むしろ悩みと苦しみは強められて継続していたのです。

 

 

・・・「第8回」へつづく

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