「第8回」からのつづき・・・
文・子守鳩
ネットビジネスの登竜門に挑戦
私にしてはめずらしく、2年11か月も勤めが続いた印刷会社を辞め、その後3か月間は失業保険で食いつなぎ、さらにその後6か月間は職業訓練で支給される給付金で食いつなぎながら、前回お話ししたようなアフィリエイトに精を出していました。
しかし、コーチに指導してもらっていたにも拘らず、やがてアフィリエイトにも挫折し、貯金もなくなり、給付金が入る目途もなくなり、途方に暮れることとなりました。
その頃私は何か役に立つ情報はないかと、ネットビジネス系のメルマガをいくつも購読していました。
その中の一つに「せどり」の教材が紹介されていました。
「せどり」というのは一言でいうと転売のことでした。
いろいろな人がメルマガの中で、
「せどりはネットビジネスの中で一番ハードルが低い」
と言っていました。
そうこうするうちに、多くのメルマガ発行人が大絶賛するせどりの教材と出会いました。
気になって販売ページを見てみると、そこにはとても魅力的に書いてある、長い長い文章があり、せどりの概略が説明されていました。
複雑でややこしいアフィリエイトに取り組んで来た私からすると、せどりの仕組みは拍子抜けするほど単純で、
「本当にそんなんでちゃんと稼げるのか」
と半信半疑になるくらいでした。
疑いを気持ちのなかに秘めながらも、販売ページの中の言葉が心にひっかかりました。それは、
「せどりはネットビジネスの登竜門である」
という言葉でした。
私は、この言葉を信じて14,800円を出して、その教材を買ってみることにしました。
こんな嬉しいことがあるのか
教材はファイル形式だったので、郵送されるのを待つこともなく、購入するとすぐにダウンロードして読むことができました。私はすぐにこの教材にのめり込み、1日で読み終えてしまいました。
内容は驚くほど単純で、要はブックオフで本やCD等を買ってきて、それをアマゾンで売るというだけのことでした。
その教材のセールス・ポイントは、「どのような商品を買ってきたらいいか」という目利きの部分にありました。
私は「なるほど、なるほど」とわくわくしながら読み終えると、もう居ても立っても居られなくなり、翌日にはさっそく大きなブックオフへ行ってみることにしました。
家から少し遠かったですが、そんなことはまったく苦になりませんでした。
ブックオフの本棚を眺めてみると、あるわあるわ、お宝本がすぐにたくさん見つかりました。お宝本というのは100円で買って1,000円で売れる本、500円で買って2,000円で売れるような利幅の大きい商品のことです。
次から次へとお宝本が見つかり、ものの2時間ほどでカゴは満杯になりました。
家に帰って出品してみると、すぐにバンバン売れるというわけにはいきませんでしたが、ポツポツと着実に売れていきました。
売れたときは本当に嬉しかったですね。
何て言ったって100円で買ってきた本が1,000円や2,000円で売れていくわけですから。
「濡れ手に粟とはこのことか」
と思いました。
さらに1か月か2か月に一度、100円で買ってきた本が忘れた頃に10,000円以上で売れることがありました。そんな時は、
「人生にはこんなに嬉しいことがあるものか」
と天にも昇る思いでした。
しかも、こちらは自分の利益のためだけに頑張ったのにすぎないのに、お客さんからコメントで、
「探していた本が見つかって良かったです。ありがとうございました」
などと感謝までされてしまう始末です。もう嬉しくてたまりませんでした。
こうして私は、すぐにせどりにハマっていきました。
店でお宝本が見つかる喜び。100円で買った本が2,000円や10,000円で売れる喜び。そして、お客さんから感謝の言葉を貰える喜び。
これら3つの喜びが私の当時の原動力でした。
会社で働いていた頃にも、アフィリエイトに精を出していたころにも、それは感じたことのない喜びでした。
こうして私は教材購入2か月後には、すでに利益が教材代を上回り、投資したぶんを回収できた計算になりました。
さらに3か月後には利益は5万円を突破、5か月後には利益は10万円を突破、半年後には当時やっていた派遣社員もやめ、せどりのみで生活費を稼ぐようになっていきました。
一年後にはせどりだけで月商100万円、利益だけで月平均30万円を安定して稼げるようになっていきました。(*1)
*1. これは8年前のことで、現在はほとんどのブックオフでせどりは禁止されている。
こうなってくると、
「ただ稼げたらいい。ただ生活できたらいい」
というレベルにとどまっていたくないと思うようになりました。
「がむしゃらに働いて月30万円稼いでいるけど、いつまでもこんな生活を続けるわけにはいかない。もっと楽に、もっとたくさん稼げるようになれないだろうか」
と考え、もっと他の教材をいろいろと買うようになっていきました。それが転落への始まりだとも知らずに…。
・・・「第10回」へつづく
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