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ホームレスなのに女性から告白される!  中年ひきこもり当事者子守鳩さんの手記 第13回

8人部屋のイメージ

 

文・子守鳩

写真・PhotoAC

前回(第12回)からのつづき・・・

www.hikipos.info

 

ホームレス収容施設の日々

帰る家はなかったので、その地域の役所の窓口へ相談に行きました。

すると、すぐに「生活自立支援施設」というところを紹介され、翌日には荷物を全部まとめてそこへ入居することになりました。

それは、わかりやすく言えば、ホームレスの人たちが路上から収容され、それぞれの生活を再建するまで一時的に暮らす宿舎です。7階建てで200人以上は収容できると思われる大きな建物でした。

寝泊まりするのは、2段ベッドが4つ置いてある8人部屋でした。

三食出て綺麗な布団で眠ることができたので、それだけで私は久しぶりに本当に落ち着くことができました。

ただ、収容されている人の中には、禁煙なのに室内でタバコを吸う人や、風呂に入らず体臭がくさい人、トイレを汚物まみれにする人などがいて、けっして過ごしやすい場所とは言えませんでした。

 

 

この施設に入った人は、就職など何らかの形で3か月以内にここを出ていかなければならない、という規則がありました。

しかし、行く先々で嫌な思いをしてきた私には、もはや就職活動をする意欲が残っていませんでした。

私を担当する支援者は、いっこうに就職活動を始めない私の無気力に着目したらしく、

「一度、精神科に行ってみましょう」

と助言してきました。

私は精神科というところが医療機関の中にあることは、もちろん知識として知っていましたが、まさか自分が行くことになるとは思ってもみませんでした。また私は、自分が精神科に行くほどの重い病気を持っているとも思えませんでした。

しかし、医者という存在が、やる気を喪失している今の私をどう診断するのか興味が湧き、無料で受診できるということもあって、誘われるままに行ってみることにしました。

 

 

その医者は、すごく親身になって私の身の上話を長時間よく聞いてくれました。

幼少期から父親にとつぜん怒鳴られ殴られる生活を送ってきたこと。

仕事でミスが多く、ほとんどの職場ですぐに怒鳴られていたこと。

物忘れが激しく、なかなか仕事を覚えられないこと。

今は働く意欲を失っていること。

……などなど、かれこれ30分以上も話を聞いてくれた気がします。

その結果、医者は私に発達障害(ADHD  /注意欠如多動性障害)という診断を下しました。そしてある薬を3週間分、処方しました。

 

翌朝、私はその薬を一錠のんでみました。すると間もなく頭が痛くなり、気持ちも悪くなって吐き気を催すようになりました。食欲も低下し、昼ご飯はほとんど残しました。その上、夕方頃にトイレで尿を出そうとしたところ、なぜか急に精子がドロッと出てきてビックリしました。

「この薬はヤバイ…」

と思い、薬をのむのを止め、その医者にはもう二度と行かないようにしました。

 

 

この施設では、食事と風呂の時間が決まっているだけで、あとの時間は自由に過ごすことができました。逆に言うと、就職活動をしない人や働かない人はかなり暇な生活が送れるという場所でもありました。

私は就職活動も働くこともしなかったので、近くの無料Wi-Fiのある喫茶店に行って暇潰しにネットばかりをやっていました。

 

そんな中で、とんでもないことが起こりました。

ある女性から告白されたのです。

 

 

思いがけぬ告白

その女性、Aさんは、私がこの施設に来る前に居候していたシェアハウスの住人でした。

その頃はいろいろな人が私の状況を案じ、掃除などさまざまな仕事を回してくれて、私はその仕事をすることでわずかな収入を得ていました。

 

Aさんはそういった人たちのうちの一人でしたが、中でもいちばん私に仕事とお金を与えてくれた人でした。

最初のうちは仕事をくれて、私が仕事をしてお金をもらう、という関係だったのですが、次第に仕事以外のことでも会うようになっていきました。

そして何回か会って話していく中で、ファミレスで食事までするようになり、ついに告白されてしまったというわけです。

 

 

私は当時45歳でした。

それまでの人生で、一度も女性から告白されたことも、付き合ったこともありませんでした。私から女性に告白しても断られるだけの人生でした。

定職に就いて、正社員として働いていた頃、彼女を作るために必死に努力していたことがありました。毎週のように婚活・恋活パーティーに出かけたり、女性が参加する飲み会があれば必ず顔を出したりしていました。しかし、一向に彼女はできませんでした。

 

ところが今はどうでしょう。

定職にも就かず、働く意欲もなく、ホームレスで、お金もほとんどなく、自分から積極的にパーティーや飲み会にも行くこともない、髪の毛の薄くなった無職の中年おじさんです。

彼女ができなさそうな条件が揃っていると思われる私に、恋愛感情を告白してくれる女性が現われたのです。

 

これには本当にびっくりするとともに、人生とはじつに不思議なものだと思いました。

もともとAさんは話の馬が合う友達のような存在だったのですが、想定外のことだったので一瞬迷いつつもありがたく告白を受け容れ、お付き合いすることにしました。

 

イメージ

あとで彼女に、なぜ私がいいと思ったのか、聞いてみました。

すると、彼女はこのような理由を挙げました。……

シェアハウスの他の人たちとは深い話をすることができなかったけれど、私だけは親身にいろいろと聞いてくれたこと。

普通はなかなか話せない話題でも意気投合し、理解してもらえたこと。

ここで彼女が言っているのは、いわゆるスピリチュアルや宇宙人、陰謀論などに関連した精神世界の話題を指しているのだと思います。

 

このシリーズを初めからお読みの方はご存じのとおり(*1)、私は過去に個人事業が上手くいかなくなり、苦しみのあまり自殺を考え、死後の世界を調べることに熱中した時期がありました。そのときに精神世界にも興味を持ち、それらの知識が身についていました。

そんなものに興味を持つなんて、いかにもモテない軟弱な男の証拠みたいなものだと思っていましたが、あのころの私は毎日を生きていくのにそういう知識が必要だったのです。

しかし、まさかそんな知識がきっかけになってのちに彼女ができることになるとは、思ってもいませんでした。

人生なんて何がどう転んで展開するか、本当に分からないもんだなと思いました。

 

*1. 本シリーズ 第11回 参照

https://www.hikipos.info/entry/2022/06/30/070000

 

 

・・・第14回へつづく

 

 

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