
ひきポス編集長の石崎が理事を務める「ひきこもりUX会議」では、10月29日(水)に大阪狭山市で、「ひきこもり当事者会 in 大阪狭山」を開催します。これまで主に「ひきこもり女子会」を開催してきたUX会議にとって、性別を問わない当事者会の開催は初めての試みです。そこで今回は、YouTube番組「ひきこもりUXラジオ」第86回で語られた内容から、いわゆる「当事者会」とはどんな場所なのか、どんな魅力があるのかについて、林恭子と石崎森人の対談を抜粋・編集してお届けします。
参加前のイメージは人それぞれ
石崎森人(以下 石崎):ひきこもり当事者会って、恭子さんは参加する前、どんなイメージありました?
林恭子(以下 林):そうですね。まず当事者会っていうのは、いわゆるセルフヘルプグループとも呼ばれていて、ひきこもりだけではなくて、不登校とか、いろんな病気を抱えた方、障害のある方とか、何かしらの当事者である方たちのみで集まる場所なんですよね。お互いにフラットな対等な立場で集まって話をしたり支え合ったりっていうのが、いわゆる当事者会。
私が最初に参加したのは20年以上前なんですけど、実は全く抵抗がなかったんです。自分と同じような経験をした人が集まってる場だってことは分かってたから。そこに行ったからといって、何かを指導されたり、お説教されたりするんじゃなくて、同じ経験をした人たちが、とにかく集まるっていう場だと思ってたから、早く行きたいと思いました。
石崎:どっちかっていうと早く会ってみたいみたいな感じだったんですか?
林:そうそう。もう聞いてすぐ行こうと思った。だって周りに自分と同じような人がいなかったから。「こんなバカなことしてるのは世界中で自分だけだと思ってた」って、みんな言うじゃないですか。
石崎:私の場合は、最初に行ったのは病院から紹介された当事者会だったんですよ。精神疾患のある人たちだけの当事者会。で、ひきこもりの当事者会に出るってことになった時は、自分がひきこもりかどうか分からないっていう不安がありました。当時は自己イメージとしてひきこもりではなかったんです。そこにいる人たちと話が合うのかなみたいな、そういう不安は結構ありましたね。
でも出てみたら、病院の当事者会よりもずっと話が合うんですよ。それがすごい不思議で。
深い話ができる場所の発見
林:どういうところが違ったんですか?
石崎:病院の当事者会って、あまり実は自己開示しないんですよ。日々どう過ごしてるかとか、生活のリズムは取れましたみたいな、表面をなぞるような話が多かった。ところがひきこもり当事者会に行ったら、いきなりディープなところにダイブしていくっていうか。
林:どういう感じ?
石崎:生きてることの苦しさみたいなものを言語化し始めるんですよね、皆さんが。若干哲学的なところもあって、「なんで人は生きてんだ」っていう話になってきたりとか。精神的にすごく共感する部分があって。
林:会ごとに内容とか雰囲気とか、よく出る話も違うんだけど、森人さんの行ったところは、そういう話ができたんですね。
私たちもひきこもり女子会とかをずっとやってきてるけど、本当に勇気を振り絞って来てる人が多い。もうこれが最後の砦だ、最後のチャンスだと思って、必死で来たみたいな方も本当にいるので。会場に来るまでの物理的なことも不安だろうし、どんな人がいるんだろうかとか、うまく話せるだろうかとか、ずっと黙って座っててもいいんだろうかとか、多分いろんな不安があるんだろうなと思いますよね。
「分かってもらえる」という救い
石崎:やっぱり自分がよく行ってた時期っていうのは、社会にうまく参加できない苦しみとか、生き辛さとかっていうものが、もう溢れそうになるんですよね。でも喋る相手がいない。日記に書いたりはしてるけど、それぐらいじゃないですか。
そういう中で、月に1回とか2週間に1回とか、そういう会に行って喋ると、パンパンに詰まったパイプからゴミが出て、水が流れるみたいな感じで。そうすると、結構みんなが共感してくれるわけです。一般社会でそんなこと言ったら、みんな引いちゃうようなことでも、むしろグイグイっと来るわけですね。「そうなんだ」っていう感じで、興味深く聞いてくれる。それがすごく自分を受け入れられたなっていう気持ちがありました。
林:本当にそうだと思う。私も当事者会に行き始めた頃って、親とか周りの人に100言っても1しか分かってもらえない、下手すると100言ってるのに0、全く分かってもらえないっていう経験をずっとしてきたけど、当事者たちと出会った時に、1言うと10分かってくれるんだよね。「それ分かる」とかって。
私よく「日本語が通じた」っていう言い方をするんだけど、本当に全く言語が誰にも通じなかったのが、分かってくれるんだよね、その苦しさとか。あれは本当に救われたし、誰にも分かってもらえない思いって、出口がないから溜め込んでしまうものを、「それ分かるよ」「そうそう」って言ってもらえるだけで、ふうっとそれが消えていくような。
石崎:「分かります」って言われて、「これで分かるの?」みたいな。逆に驚きですよね。
林:当事者じゃない人も、良かれと思って「私にもそういう気持ちありますよ」とか「分かりますよ」とか言ってくれちゃう人もいるの。でも『ああ、違う、そこじゃない』みたいなことってやっぱり結構あって。でも当事者の人たちだと、「そこ、そこ」っていう。
いろんな形がある当事者会
林:当事者会って実は本当に色々なんですよね。他にどんな当事者会があるか知ってます?
石崎:本当に出るところ出るところで違いましたね。みんなで最初に今日何話すかを決めて、それについて話す会とか、少人数で自由にずっと喋るとか、ファシリテーションする人があらかじめテーマを決めていて、それについて話したりとか。順番で話すのか、自由に話すのかとか。これが正しい当事者会だみたいなのは分からないですね。
林:そう、これが正しい当事者会っていうのは実はなくて。今、森人さんが言ってくれたのは比較的話をするところかなと思ったんだけど、実は当事者会って、行ったらゲームとか、トランプとか、最近だったらボードゲームとか、卓球台があるなんていうところもあるし、そういう遊びを一緒に楽しんで、特にあんまり話したりしないっていう当事者会も結構あるんだよね。
女性向けの会なんかだと、毎回プログラムがあって、小物を作るとか、近くの公園までみんなで散歩に行ってみようとか、カフェにみんなで行ってみようとか。私が昔関わってた当事者会では、ほとんどが遊び企画で、公園にみんなで遊びに行ったり、花火大会に行ったり、その中でカップルができたり、結婚したりした人もいるし。本当に色々かなと思いますよね。
石崎:言われてみれば、確かに遊ぶのも結構ありましたね。
林:とはいえ、当事者会がベストっていうわけではもちろんなくて、当事者会に合わない人もいれば、特に魅力も感じないっていう人もいるし、行ったんだけど嫌な思いをしてしまったとかね、そういう人だっていなくはないと思うの。
でも選択肢ってすごく大事だと思って。当事者会でもいろんな当事者会があるから、ここは合わなかったけど、こっちは合うっていうこともあると思うんだよね。少なくともUX会議はそういう選択肢を1個でも作っていきたいっていう気持ちはあるかなと思いますけどね。
石崎:興味はあるけど不安で迷っている人は、もしかしたら1度でも行ってみたら、何か合うものがあるかもしれません。人生の選択肢として、行ってみたら何か得られるものがあるかも、ぐらいの気持ちで。でもあんまり期待しすぎないことも大事です。期待しすぎると傷つくから。「行っても多分何もない。でも、もしかしたら何かあるかもしれない」っていうぐらいの気持ちで行ってみるといいのかなって思いますね。
林:大阪狭山市でやる当事者会も、遅れてきても、途中で帰っても、休憩も全く自由ですから。ちょっと顔出してみて、居心地悪いと思ったら全然帰っていただいて構わないし、自分のペースで気軽にちょっと覗いてみるっていうぐらいで来ていただけたらいいのかなと思いますね。
ひきこもり当事者会のご案内
ひきこもりUX会議主催の当事者会を開催します。性別不問で、ひきこもりや生きづらさを抱えた方ならどなたでも参加可能です。遅刻・早退・休憩も自由ですので、お気軽にご参加ください。
・プログラム:当事者の体験談(約40分)の後、テーマ別の交流会を行います。
YouTube「ひきこもりUXラジオ」について
今回の対談の完全版は、YouTube「ひきこもりUXラジオ」第86回でお聴きいただけます。その他にも、ひきこもりや生きづらさに関する様々な情報を発信していますので、ぜひチャンネル登録をお願いします。
