
インタビュワー ぼそっと池井多
語り手 シアン(@4anCat)
今日はアバターとVtuberの活動を通してひきこもり支援を構想している「V福祉プロジェクト」のシアンさんにお越しいただきました。
いったいどのような活動をしているのか、そして、なぜこのような活動に至ったのか、お話をうかがいます。
コミュニケーションの大切さ
ぼそっと シアンさん自身、ひきこもり経験があったんですよね。
シアン ありました。10代から30代前半まで、断続的に15年くらいひきこもっていました。
ぼそっと それはどのように始まったのでしょうか。
シアン 中学校でバイ菌扱いされていたんです。どこの学校、どこの学年にも一人くらい、そういうイジメの対象になる子がいると思うんですけど、私の学年ではそれが私でした。
ぼそっと それはそれは。さぞ、つらかったことでしょう。
シアン ええ。でも、バイ菌扱いよりももっとつらかったのが無視です。周り中からコミュニケーションを絶たれて、まるで私が存在しないみたいに扱われたのがつらかったです。「私はここにいるのに!」っていう絶望的な気持ちになります。そして最後は、母まで私を無視するようになってしまって。
ぼそっと お母さままでも?……ああ、でも、家庭内イジメみたいなものもありますよね。私は自分の母がそういう人だったからわかる気がする。
シアン 私の母は厳しすぎて、私がひきこもりになることも許さなかったんです。
ぼそっと なるほど。私も学校でいじめられて、それで不登校にならなかったんですが、親が厳しすぎて不登校になることが許されなかったんです。家庭のなかに居場所がないから、仕方なくいじめられる学校へ通っていました。この世界のどこにも希望がない状態でした。だから不登校がものすごく贅沢に見えたものです。あなたもそういう感じですか。
シアン はい。その反動もあって、後に本格的なひきこもりになりました。家から出られず、陽の光もまったく浴びない生活でした。
ぼそっと そういう生活がずっと続いたんですね。
シアン 27歳のとき、統合失調症が悪化しました。現実とそうでないものの区別がつかなくなってしまって、強制入院になりました。そのときに出会ったソーシャルワーカーさんに、命をつないでもらった感覚があります。
ぼそっと 「この人がいなかったら、今の自分はいない」という出会いでしたか。
シアン そうですね。それで今度は自分が支える側になりたいと思って、36歳で大学に入り直しました。今は4回生で、社会福祉士の資格を取ってソーシャルワーカーを目指しています。
ぼそっと 15年かけた回復の過程で「これは大事だったな」ということはありますか。
シアン 自分の感情を言葉にすることですね。
たとえば、父に私が
「私は人がこわいんだ」
と言っても、父も
「おれだって他人はこわいものだと思うよ」
といって返されてしまっていました。そこで私は、
「自分の場合は、他人が刃物をこちらに向けて迫ってくるくらいこわいの」
と言いました。そうしたらようやく父が、
「なるほど、それは異常だな」
と気づいてくれたんです。
小さなことですけど、自分の感覚を「刃物をこちらに向けて迫ってくるくらい」と言葉にしたことが父に理解されるきっかけになった、という体験が、私にとって回復の道筋をたどる重要な転機になりました。
ぼそっと それはすごく重要なことをお話しいただいている気がします。そういう感覚は当事者でないとわかりにくいかもしれません。当事者が訴える生きづらさみたいなものは、「そんなの、誰にでもあるよ」と言われてしまえばそれまでになってしまいがちですから。
「誰にでもある」ものと自分のつらさはどうちがうか、その差をいかに言語化できるかですよね。
外に出なくても社会とつながる
ぼそっと いま取り組んでいるアバターやVtuberの活動は、そうした経験と直結しているのでしょうか。
シアン そうですね。ひきこもっているころ、リアルな居場所に行こうとしたことがあるんですが、緊張でお腹が痛くなってしまって。
ぼそっと 「外に出る」こと自体が、もう限界を超えていたのですね。
シアン だから、自分の部屋から、着の身着のままで参加できる居場所があればいいと思ったんです。
ぼそっと そうするとオンラインの居場所ということになりますね。
コロナ禍が私たちに残した良いこととして、オンラインの居場所が一般的になったことがあると私は思うのですよ。私自身も「4D(フォーディー)」というオンラインの対話会をZoomでやっていますが、これもコロナ禍から始まって、コロナ禍が終わってからも続けているものです。
シアン はい。私たちもZoomを使って、しかもアバターやVtubeを使ってやろうと考えています。アバターやVtubeだと、アニメキャラが話している感覚のようで、人との距離が少し保てる。それが、生き延びるために必要な人もいると思います。
ぼそっと そうですね。Zoomにそういう機能があることは私も知っています。使ったことはないのですが。
シアン 外に出られなくても、人とつながっていい。顔を出せなくても、ここにいていい。ひきこもっている部屋から着の身着のままで他の人とコミュニケーションできる選択肢を、私たちは増やしたいと思っています。
