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NPO法人Node設立記者会見 全文<後篇>

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2018年5月7日 厚生労働記者会にて

 

文・写真・編集:ぼそっと池井多
 
文字起こし・編集:Toshl Honda

 

 

・・・<前篇>からのつづき

2018年5月7日、厚生労働記者会にて開かれたNPO法人「Node(ノード)」の設立記者会見。前半30分あまりを経たころ、本誌「ひきポス」の記者が質問に立った。<前篇>にひきつづき、全文をお届けする。文中、敬称略。( )内は文脈から判断して編集者がおぎなった。

 

 

ぼそっと池井多(ひきポス):ひきこもり当事者メディア「ひきポス」から参りました、ぼそっと池井多と申します。こういう所に出て来ますと、あまりひきこもり当事者とは見られないかも知れませんが、私もひきこもり当事者です。

二点ほど質問させていただきます。

 

「Nodeの総意」は形成されているか

ぼそっと池井多(ひきポス):まず理事の皆さまにうかがいたいのですが、今回Nodeが設立されるに際して、理事の皆さまが考えていることがバラバラで、「Nodeの総意」というものが形成されていないんじゃないか、という見方が当事者たちの間にあります。今日、こうしてNode発足の場を設けるに際して、「Nodeの総意」というものは確立されたのでしょうか?

林恭子:今日の資料にもある「目的」は、総意だと思っています。具体的には2ページの「つなぎ目」という意味について、皆で考えて「Node」にしましたし、一人ひとりの個人が尊重される形ですね。…「支援」という言葉が適切か分からないのですが、サポートし合うものにして行きたい。そこでは総意が取れていると思っております。

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配布資料 2ページ目

森下徹: 個人的には家族会にも関わっておりますが、Nodeを作る経緯として、例えば支援者の集まりだと、目標が「就労」だったり、「親亡き後の生活」というものがあり、そこに向かっていく形があるのですが、Nodeは背景もさまざまで、目標もいろいろなので、(「Nodeの総意」というと)難しいけれど、「でも繋がりたいよね」と、宮武(将大)が入って、関西圏で最初のNodeが始まって、そして今回は法人化しました。

私個人としては、なかなか時間も無く、実際に(日本のあちこちに居住する、他の)理事と会えない難しさもありますが、その中でもネットを活用してやり取りしています。ただ、例えば関西だと、(他の地域と)背景や歴史が違ったりするので、総意というのはなかなか難しいというのが正直な所です。

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左から林恭子氏、佐藤啓氏、森下徹氏

ぼそっと池井多(ひきポス):今日の時点でも、Nodeとしての総意は確立されていない、と。

森下:個人の意見としては、総意や方向性として、まず繋がって行くという物がありますが、実際にはなかなか話せていない。これから皆さんと他の経験者が交流したり、いろいろやっていく中で、だんだん確立して行くかと思っております。

割田大悟: Nodeの総意かどうかという所については、先ほど森下がおっしゃったように、方向性はある程度、資料に書かせていただいた通りだと思うのですが、一方で大事にしたい所として、やはり各地域で当事者活動を実施していた、個々人の特性を、非常に大事にして行きたいと思います。

そして「Nodeの総意」という物に、カッチリ全てをはめなければいけないのか?と言うと、「そうではない」と思っています。それぞれの特性を活かしながら、つなぎ目としてのNodeの役割を果たせる。それをどこまで出来るか、皆さんに注視していただければと思います。

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左から、森下徹氏、割田大悟氏。

下山洋雄:森下さんのお話に賛成です。私も青森で、足枷がありながら当事者活動をして来ました。やはりこういうネットワークが出来たことを、青森の当事者は歓迎しております。青森から東北の当事者の人たちに繋げるという意味もあると思うので、総意が取れているか、取れていないかと言うより、みんなで分かち合って、色々なアイディアを出して、繋がっていく。これに尽きるかなと思っています。

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下山洋雄氏(WEB参加)

川初真吾: そういう意味では、僕は「総意は取れていない」、というのと、「取れていないからこそ良い」という風に、現時点では考えております。今のメンバーは、各地で自分たちの活動や場を持っている。あくまで現時点では、まだまだと言うか、自分たちの活動に軸足を置いて、その足でNodeという場に参加していると、僕は思っています。

そして、これまで全国規模で連帯をすることがなかった人が多いですし、近年、こうした当事者活動が盛んになり、中には繋がることで、新しい活動を始めたり、アクションが出来たり、事業が生まれたりする。そして御社(ひきポス)のような当事者メディアが生まれたりと、可能性が広がることは、当事者の中での実感としても、非常に良いと思うんですね。そういった思いを、隠して持っていた人が集まる形…。

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川初真吾氏

川初:今回、面白かったのは、SNS上で、まだ部分的な活動しか出ておらず、しっかりと始める前の我々に対して、非常に不安や危惧をする声が広がった。少し驚いた部分もあるのですが、僕はこの現象をとても肯定的に捉えていて。ちゃんと自分たちの不安を表明してくれる人が、周りに増えている。

それこそ普段、顔を合わせたり、食事を共にした仲間たちから、疑念の声がすごく出ている。これを僕は好意的に受け止めていて、こんな風に言い合える環境が出来ているんだ、と思っております。

 

ビジネスの場としてのNode

ぼそっと池井多(ひきポス):では、二点目の質問に移らせていただきます。 

これは佐藤プロジェクトリーダーにおうかがいしたいのですが、今日はまず冒頭のご挨拶で、「私はお手伝いをさせていただき…」とおっしゃいましたけれども、SNSで公開なさっているご投稿では「(Nodeの)仕掛け人」と自称していらっしゃいます。

今日、お配りいただいている資料の3ページ「設立までの経緯」にありますように、もともとNodeの原型は2015年からあったようですが、ここ半年ぐらいの間に急速に具体化してきたのは、やはり佐藤プロジェクトリーダーの、表に出ないご活躍が多大に貢献しているのではないかと拝察しております。

佐藤さんは、ご自身がたいへん優秀なビジネスマンでいらっしゃいますから、能力も資本もつぎこんで、ただそれだけで終わるってことはないだろう、と思うんですね。やはり投下した資本に対して、利益回収ということを考えていらっしゃるでしょう。

全国に150万人いると言われ始めた、このひきこもり人口というものが大きなマーケットになるのでは、と考えておられると思うのです。

「そのへんのことが話されるかな」と思って、今日はちょっと楽しみに出て参ったんですが、そういう話が今日まったく出なかったのですけれども、そのあたりはいかがなのでしょうか? 

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佐藤啓

佐藤まず私が、このNodeを立ち上げようと思ったのは、昨年度の4月ですかね。「ひきこもりフューチャーセッションIORI」というイベントに、初めて参加して…。私はたまたま、いとこにひきこもり当事者がいるのですが、彼のことを浮かべながら、自分がITの仕事をしていたので、やはりひきこもり当事者にはITが良いだろうと考えておりました。ひきこもったまま仕事が出来る、ホームページ制作の勉強ですね。

そしてIT業界は人が少ないですから、そこにもし人が増えれば…、もし、これが出来れば、在宅でひきこもり状態のままでも、その状態を変えることなく仕事に就いて、多少なりとも収入を得ることが出来て、多少なりとも状況を変えられるんじゃないか。そうしたことを聞いてみたいと思って、IORIのイベントに参加しました。

私はそこで衝撃を受けたんですね。正直、こんなにひきこもりの人達ってたくさん集まるんだ、とも思いましたし、それと同時に、こんなに優秀な人達がたくさんいるんだと、正直、思いました。

もちろん、すべての人が優秀とは言えないかも知れません。ただ、私がそのイベントで会った人達は、ここにいるメンバーもそうですけれども、非常に優秀な人達でした。そしてビジネス云々よりも、むしろこういった人たちが100万人いるんだと。

もちろん、例えばご本人が今の状態で良いと言うのであれば、それは良いと思います。ただ、例えば「自分はやっぱり働いてみたい」「何とかしたいけれど、そういう機会がない」ということであれば、そこに手を伸ばして、一緒にやっていけると良いな、と。

私も経営者の端くれとして、そういう人材を支えるのは、経営者として当たり前の話じゃないかと思うんですね。私もこの事業をちょっとやっていて、正直、まだまだ赤字垂れ流しです。すぐにビジネスとして結果を出すことは難しいと思っております。

しかし一方で、これは私どもというより、むしろ100万人の優秀な人達が眠っている、日本全体についての問題ですね。これを「そのままにして良いんだろうか?」という思いがあるんですね。

今回の立ち上げについて、私が持っていたモチベーションは、繋がりたいと思った時に、繋げる場所ですよね、まず。そこを用意したいのですが、まず情報が通っていない。話は聞いたことがあるけれど、実際にどこでやってるのか分からない。昨日も町田で説明会をやったのですが、当事者に聴くと、やはり全然知らないと。

情報を知っている人たちは色々出来るけれども、情報が繋がらない人は、そこに行けないんですね。そういった方々に対して、例えばこの「ひきペディア」を通じて、情報をより広く提供できたら良いのではと。 

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「場」と「市場」

佐藤:そして、私の思いとしては「場」と「市場」は違うと思っています。「場」がまずあって、その上に「市場」が乗っかれば、良いと思うんです。「市場」というのは、あくまで売り手と買い手が加わって、お互いが希望して、良いと思ったら成り立つ物です。なのでNodeという「場」ができたから、自動的に「市場」になるのかと言うと、それは違うと思うんです。むしろ、この「場」はいろんな風に使えると思っているんです。

「使える」という言葉が良いかわからないですが、この「場」を活かして、どんなことをしても良いと思うんですね。その中で一つぐらいは、弊社のビジネスになるかも知れないという感じです。

ただ、私がそうすると言うより、あくまでも100万から150万人のひきこもり当事者を、本当に日本の宝だと思っています。この宝をどれだけ輝かせるか。そこに価値があると思っていまして、そのために私はいま関わっています。

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Nodeから発せられる政策提言

毎日新聞:政策提言という言葉が、先ほどいくつかありましたが、具体的には、どのように行われ、必要とされるのでしょうか。

割田:政策について、私個人としてお話をさせていただくと、私自身が「かながわ若者生き活き大賞(キララ賞)」を受賞して、この3月に神奈川県の黒岩知事に表敬訪問をさせていただきました。

その際、こちらから要望書と質問書を出し、神奈川県の政策について、どのように思っていらっしゃるのか、実際に検討していただく事を行いました。

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割田大悟氏

割田:同じように5月中旬には、横浜市の市長に対しても、質問書を同様に送る予定です。そこでどのような回答があるのか、それに対して、こちらがどのようにするか。「ここはもうちょっと変えた方が良いのでは」と、やっていくと思うんですね。

これはあくまで、私個人の活動です。そして一人の活動では、まだまだ政策提言に繋がるのは難しいだろうと思います。その中でNodeというひとつの法人として、今後、政策提言に繋がる活動が出来たら良いなと思っております。

:どういう風にやって行くかは、まだイメージが固まっていない状況ですが、今日この日、ひきペディアの公開を持って、Nodeは始動します。これからメンバーたちが話して、どうやって行くか、何を要望しようか、どんな内容が通っていくか。方向としては支援についてなどがあると思います。

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林恭子氏

森下:個人的には政策提言をしたいと思っていますが、まずは機関と繋がるところから始めて、私たちの希望を伝えたり、行政の希望を聞く所から始めたいと思います。そのために全国区にネットワークがあり、自分たちも法人を立ち上げた。そこから始まるのかなと思っています。

 

(了)