ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

『ひきポス』は、ひきこもり当事者、経験者の声を発信する情報発信メディア。ひきこもりや、生きづらさ問題を当事者目線で取り上げます。当事者、経験者、ご家族、支援者の方々へ、生きるヒントになるような記事をお届けしていきます。

【書評】24年ぶりに復刊した芹沢俊介著『引きこもるという情熱』ほど野心的に「ひきこもり」を全面肯定した本は、この四半世紀をふりかえってみても他に1冊もなかったのではないか

(文 喜久井伸哉) 名古屋で引きこもり引き出し人をやっているOという女がいる。何度もテレビに出ているので知っている人もいるであろう。二か月ほどまえになるが、Oの引き出し人としての仕事ぶりを夜間、またもやテレビが紹介していた。たまたまそれを見た…

「急がば回れ」は本当か? 10年のひきこもり経験者が語るアンダンテの教訓

「人生では遠回りも大事だ」、と言われることがある。違う、と思う。私は長年引きこもっていたが、ぶらぶら遠回りをしていたわけではない。仮に何かに対する「遠回り」だったとしても、じゃあ近道ってどこだよ、と思う。学校や会社に行っている人に対して、…

時間は大切ではない 10年のひきこもり経験者が語る「コスパ」でも「タイム・イズ・マネー」でもない暮らしの教訓

文:喜久井伸哉 私はそろそろ、四十になる。老人からすれば、まだまだ若者。子どもからすれば、老人も同然。幼いころは、大人の男性の場合「おにいさん」か「おじいさん」かの、2分類くらいでしか認識していなかった。30代、40代、50代それぞれの違いなど、…

【2026年】『冊子版ひきポス』 最新号とバックナンバーのご案内

当サイトをご覧いただきありがとうございます。『ひきポス』は、ひきこもり当事者・経験者や、生きづらさのある人の声を届けるための情報発信メディアです。 社会的な課題を当事者目線で取り上げ、多くの人へのヒントを生みだすことを目的としています。これ…

【詩/掌編】代理人代理

今回は、「ひきこもり」経験者による詩をお送りします。ユーモアのある語り口をお楽しみください。 代理人代理 本日代理人不在のため これ以降は本人であるぼくが 直々に代理人の代わりを勤めます なるほど ここに署名すればよろしいか ぼくだって仕事ができ…

【詩】それは私だ

今回は、「ひきこもり」経験者による現代詩をお送りします。「それは私だ」とスピーチのようにくり返す語りをお楽しみください。 「讃えられた虚礼」紙・パステル 18.2cm×25.7cm 多様性ではない それは私だそれはあなたや理念でなかったとしても私私の今日の…

【美術展】モーリス・ユトリロ 「ひきこもり」的な心象風景を描いた伝説の画家

私が16歳のころ、人の顔が吐瀉物(としゃぶつ)のように見えていた。人間という社会的動物の存在が、耐えがたいほどグロテスクに感じられ、表情の変化が直視できなかった。街を歩く時には、あえてメガネをはずし、おぼろげな景色を見るようにしていた時期が…

【最新の「不登校」調査に対する所感】「不登校」の件数ではなく、調査をおこなう文科省が「過去最悪」を更新しつづけている

2025年10月29日、最新の「不登校」児童生徒数が発表された。小中学校で年間30日以上欠席した児童生徒数は、約35万4000人。12年連続の増加で、過去最多を更新した。病欠などを含めた「長期欠席」の数は約50万7000人で、こちらも過去最多だった。 なお、日本の…

近代詩のゲームチェンジャー〈萩原朔太郎〉の世界 文豪なのに44歳になっても無職であることを責められていた「ひきこもり」的苦悩

かなしき郷土よ。人人は私に情(つれ)なくして、いつも白い眼でにらんでゐた。単に私が無職であり、もしくは変人であるといふ理由をもつて、あはれな詩人を嘲辱し、わたしの背後(うしろ)から唾(つばき)をかけた。『あすこに白痴(ばか)が歩いて行く。…

デビュー50周年! 中島みゆきの世界 23歳で「時代」を発表してから半世紀・唯一無二の〈音楽と文学〉が生み出した偉業

23歳で「時代」を発表してから半世紀 シンガソングライターの中島みゆきが、デビュー50年を迎えた。EPレコード「アザミ嬢のララバイ」をリリースしたのは、1975年9月25日のこと。同年12月21日には「時代」がリリースされた。「まわるまわるよ 時代は回る 喜…

「若者に小説なんて読ませるな」 学校が子どもから読書を取り上げていた明治~大正時代

連載 100年前の〈家族〉の暮らし 「若者に小説なんて読ませるな」学校が子どもから読書を取り上げていた明治~大正時代 文・喜久井伸哉 社会一般に、小説を読み、演劇を見る人は、人を堕落せしめるもので、青年にとりては、最も危険なり。(大町桂月) なん…

「若者に囲碁なんてやらせるな」  現代のゲームやスマホよりバッシングされていた100年前の娯楽

連載 100年前の〈家族〉の暮らし 第10回 「若者に囲碁なんてやらせるな」 ゲームやスマホよりバッシングされていた100年前の娯楽 文・喜久井伸哉 昨今はスマホやゲームのやりすぎを防ぐため、条例で制限する動きがある。しかし、50年前にはロックやファッシ…

明治時代の「不登校」的モラトリアム 永井荷風作「すみだ川」の憂鬱

100年前の〈家族〉の暮らし ⑧明治時代の「不登校」的モラトリアム 永井荷風作「すみだ川」の憂鬱 文・喜久井伸哉 今から130年近く前の、1898(明治31)年のこと。文部省は、東京都に尋常小学校の増設を命じた。学齢期の児童全体のうち、6分の1しか在学してい…

100年前の学生の神経衰弱 久米正雄作「受験生の手記」

文・喜久井伸哉 連載 100年前の〈家族〉の暮らし⑦ 100年前は、中学校に進学するだけでも大変だった。1924年の文部省の調査によると、小学校を優秀な成績で卒業した者は、全国で1万8,421人。しかし、そのうちの約半数(9,778人)は、金銭的な事情で中学へ進め…

学校と時計の文化史 「誰だ、時計なんか発明しやがったのは」 100年前の〈家族〉の暮らし⑥

文:喜久井伸哉 くたばっちまえ、時刻なんぞを見つけやがった奴はそれに、ここに日時計を最初に置いて、情けないことに、俺の一日を 時間刻みの細切れに仕上がった奴も。おれが子供の頃は、腹だけが時計代わりで、あんな日時計のどれよりも頼れる、正確無比…

日本に「遅刻」が誕生した年 100年前の〈家族〉の暮らし⑤

文:喜久井伸哉 とけいがなった、おきよ、こどもら。とけいがなった、いそげ、こどもら。がっこうへ。とけいがなった、ならへ、こどもら。よくせいだして。(明治期の尋常小学校3年生用の国語教科書に掲載されていた詩) 「時計」のない暮らし、なんて想像…

鉄道の衝撃と自転車の普及 「女のくせに自転車に乗っている」 100年前の<家族>の暮らし(4)

文 喜久井伸哉 100年前のほとんどの人にとって、外出は「歩く」ことを意味した。 そりゃそうだろう、と思うかもしれないが、今と違って、自転車や車が少ない時代だ。 1921年(大正10年)の内務省警報局の調べによると、東京の自転車の数は12万7228台、自動車…

100年前の<家族>の暮らし(3)映画・アニメ・レコードの誕生 トーキーは「うるさくて見ちゃいられない」

(文 喜久井伸哉) 前回は、小津安二郎の映画について話した。小津映画といえば、日本の巨匠たちの中でも、特に渋い(いわば地味な)作風で知られている。しかし、公開当時は大ヒットを飛ばした監督であり、1929年には、『大学は出たけれど』という作品が社…

100年前の「家族」の暮らし(2) 小津映画に見る「アパート」と「長屋」の違い

(文 喜久井伸哉) 年表を引きながら、100年前の暮らしに思いをはせるという、酔狂なことをやっている。前回は、約100年前にコンクリート造の学校が登場したことを書いた。街なかの景色が大きく変わっていった時代だ。建物に関することでは、以下の年表の記…

100年前の〈家族〉の暮らし (1) ラジオとマヨネーズとオンライン授業

(文 喜久井伸哉) 2025年は、「放送100年」だそうだ。ラジオ放送開始から、100年の節目。ふーん、と聞き流しそうになるが、あらためて考えてみると、ラジオ放送からたったの100年、という時代の流れの早さは、驚くべきことだ。「ネット開始から100年」でも…

ひきこもりの歴史を感じる記事のまとめ 20年前の「ひきこもり専門誌」・戸塚ヨットスクール・関連本ガイドほか

文:ひきポス編集部 『ひきポス』をご覧いただきありがとうございます。今回は『ひきポス』のメンバーである喜久井伸哉(元・喜久井ヤシン)さんの記事の中から、特に反響の大きかった記事を集めました。「ひきこもり」の歴史をさかのぼる内容となっています…

『ひきポス』 喜久井伸哉さんの当事者手記まとめ

文:ひきポス編集部 『ひきポス』をご覧いただきありがとうございます。今回は『ひきポス』のメンバーである喜久井伸哉(元・喜久井ヤシン)さんの記事の中から、特に反響の大きかった当事者手記をご紹介します。長期間の「不登校」と「ひきこもり」の経験を…

『ひきポス』人気記事のまとめ ~親・支援者へのメッセージ~

文:ひきポス編集部 『ひきポス』をご覧いただきありがとうございます。今回は『ひきポス』のメンバーである喜久井伸哉(元・喜久井ヤシン)さんの人気記事の中から、特に親・支援者に向けて書かれたものをご紹介します。長期間の「不登校」と「ひきこもり」…

桜の醜さ

文:喜久井伸哉 昔、ある学者が、「植物の性器なんか見て、なにが楽しんでしょうね」と言い放った。花見、のことだ。信じがたい発想。だが、学問的な客観性を極めると、花を「植物の性器」と言っても、間違いではない、のか。 春の、桜の咲く季節がやって来…

【レビュー】中島みゆき『歌会 VOL.1』 「ケアの音楽」を超えた「キュア(治療)の音楽」

(文:喜久井伸哉) 2025年3月12日、中島みゆきのライブアルバム『歌会 VOL.1』が発売された。『地上の星』『銀の龍の背に乗って』などのヒット曲から、近年発表された話題作を収録。今回は最新のレビューをお届けする。 中島みゆき コンサート「歌会VOL.1…

美大の修了展という〈可能性の祭〉 そして若さの蕩尽を見ると、一年や二年のひきこもりなんてどうということはないように思えてくる

文・写真: 喜久井伸哉 現代の日本は、生きづらい社会だ、と言われている。しかしこの社会には、「美大」という魔境が残っている。 現在、東京・六本木にある新国立美術館で、「五美大展」が開催中だ。美大の修了者の作品が大量に展示されており、全フロア無…

自己否定感でなく〈自己未満感〉に打ちひしがれている 何をしても「ほんとうの私」になれない不全感

文: 喜久井伸哉 「本当の自分はこんなものではない」。そんな、憤(いきどお)りがある。環境のめぐりあわせや、人間関係によっては、もっと社会的に成功できるのではないか。知的な面でも、活動の面でも、もっとうまくやれるのではないか。そんな、人生の不…

〈豊かな孤独〉をつくる ハンナ・アレントと茨木のり子に学ぶ「にぎやかな一人ぼっち」

文 喜久井伸哉 詩人の茨木のり子に、「一人は賑(にぎ)やか」、という作品がある。 一人でいるのは 賑やかだ賑やかな賑やかな森だよ夢がぱちぱち はぜてくる良からぬ思いも 湧いてくるエーデルワイスも 毒の茸も (中略) 一人でいるのは賑やかだ誓って負け…

【2025年】『冊子版ひきポス』 最新号とバックナンバーのご案内

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一年でもっともさびしい日 たったひとりで過ごす年末年始は「孤独のつらさ」ではなく「孤独でいられないつらさ」が身に染みる

文: 喜久井伸哉 年末年始が、もっともさびしい。一年のうちで、ひときわ孤独を感じる時期だ。 年の瀬になると、街はクリスマスと忘年会の喧噪を経て、あわただしく年越しのしたくを始める。大きな駅は帰省客であふれ、大みそかや正月を家族と過ごす人が行き…