(文・湊 うさみん)
ひきこもりはネットゲームの世界でなら英雄になれます。
私はかつて、ネットゲーム(オンラインゲーム)を一日18時間くらいやっていたことがあります。
食事する時はモニターの前で食べ、トイレはできるだけ速やかに済ませ、お風呂は臭くなったときしか入らない。睡眠はさすがに取ります。
そういう生活を続けていたため、ネットゲームの世界では誰からも頼りにされる英雄的な存在でした。一緒にダンジョン行かないかと誘われ、ギルド戦では大活躍。ヒーローでした。
ネットゲームの世界は時間が大事
最近は課金の割合が強くなってきてはいますが、基本的にネットゲームは永遠にゲームをし続けていられる仕様になっています。
家庭用のゲーム機であればレベルが最大になったら飽きてやめるでしょうが、ネットゲームの場合は、レアアイテムを他のプレイヤーに売ったりして金策するという楽しみ方がずっとできます。
時間が有り余っているひきこもりは、カンストするまでレベルを上げ続け、ビルゲイツクラスの膨大なお金を手にするまでプレイし続けることができます。
昔からゲームが好きで、ゲームに育てられたような私は、ネットゲームにの世界では有名な存在になりました。
最近よく聞く「承認欲求」を満たしてくれる存在。それがネットゲームでした。
ひきこもりの居場所
ひきこもりは社会はおろか、家庭内でも居場所がないことが少なくありません。
私自身、家が居場所とは言えません。親が毒親であったり、兄弟仲が悪かったり、一緒に住んでいる親とはほとんど口を利かないので居心地が悪いです。
しかし、ネットゲームの中でなら居場所がありました。
体調が悪ければ心配してくれて、一緒にダンジョンに潜りに行かないかと誘われ、「ただいま」と言えば「おかえり」と返してくれる。
当たり前のことではあるのですが、そんな当たり前を持っていないひきこもりにとっては、ギルドメンバーが家族のような存在でした。
「自分はここにいてもいい」という安心感を得られる唯一の場所がネットゲーム内だったのです。
トップ層にはなれてもトップにはなれない
世の中には、お金がたくさんあって時間も膨大にある人がいます。おそらく投資家や経営者の人だと思うのですが、現実世界でもネットゲームでも彼らが頂点になります。
百万円単位で課金することができ、GooglePlayCardのプリペイド番号を入力するためにバイトを雇うような富豪たち。彼らはひきこもりと同程度の時間をネットゲームに費やすことができます。
ピラミッドの頂点に位置するのは、彼らのような存在で、ひきこもりは二番目か三番目でした。
私は最強になりたいという野心はあまりなく、お気に入りのキャラを強くかわいくしたいだけだったので、それでも満足でした。
しかし、世界の終わりは唐突にやってきます。
サービス終了という世界の結末
ネットゲームは仮想の世界と言われますが、あくまでもビジネスです。採算が取れなくなったら容赦なくサービス終了となります。
ネットゲームの世界が終わりを迎えれば、強くてかわいかった自分の分身は消え、ギルドメンバーもどこかへと旅立ってしまい、居場所も消失します。
今住んでいるこの世界はカンタンには終わりませんが、ネットゲームの世界は案外たやすく終焉を迎えます。
そうして失ったものは膨大な時間とそこそこのお金。
残されたものは、思い出と──喪失感。
地球破壊爆弾はどこに
現実世界は努力と結果が比例しないし、生まれる性別や名前も選べないし、人間関係がめんどくさいし、操作キャラ(自分)がかわいくないうえに不平等だし、クソゲーだと思います。
こんな世界、なくなってしまえばいいと本気で思うのですが、巨大隕石がぶつかるわけでもないし、氷河期が来るわけでもないし、案外頑丈です。
結局、ひきこもりはひきこもりなりに生きていかないといけないようです。
死んだら天国か地獄に行くことになるので、その時を楽しみにしていましょう。現世を捨てて、早く違う世界へ旅立ちたい。
行き先が地獄だったとしても、この世よりかは居心地がいいはずだから。
執筆者 湊うさみん
20代でドロップアウトして自殺未遂。ニート歴10年以上のエリートニートになっちゃいました。