ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

『ひきポス』は、ひきこもり当事者、経験者の声を発信する情報発信メディア。ひきこもりや、生きづらさ問題を当事者目線で取り上げます。当事者、経験者、ご家族、支援者の方々へ、生きるヒントになるような記事をお届けしていきます。

今年のひきこもりニュース&『ひきポス』総まとめ NHK「ヤラセ」問題・川崎殺傷事件・反響のあった記事

(文 『ひきポス』編集部 / 編集  喜久井ヤシン)

 

2019年も残りわずかとなり、新たな年が近づいています。

“ひきこもりの人や生きづらさのある人の声を届けるポスト”『ひきポス』は、今年も活動を続けることができました。 

 

おかげさまで、2019年は冊子版3冊を刊行しています。

 3 5 ひきこもりと幸福

 7 6 ひきこもりと父

11 7号 ひきこもりと偏見

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※アマゾンなどでもお買い求めいただけます。

 

『ひきポス』では、当サイトを含めて一切の広告を掲載していません。
冊子版の売り上げを運営費としていますので、継続ができるのは手に取っていただいた多くの読者の方のおかげです。

 

さて今回は、2019年の『ひきポス』に登場した記事や、「ひきこもり」に関するニュースをまとめました。

足早にではありますが、まずは当サイトの書き手ごとに、特に多くの反響をいただいた記事をご紹介します。

 

ぼそっと池井多さんの記事から

『ひきポス』で最も多くの記事を発表しているのが、ぼそっと池井多(ぼそっといけいだ)さんです。
今年も「ひきこもり」当事者へのインタビューや、ご自身の多種多様な取り組みなど、いくつもの刺激的な記事を発表していただきました。

 

 当事者手記

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 上記では、今年5月に起きた川崎の殺傷事件がテーマになっています。
深い自問自答とともに、読者に対する緊迫感のある問いかけがなされています。

 

 

 インタビュー(国内)

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「ひきこもりUX会議」などで活動されている、林恭子さんのインタビューです。
家族のことを含めたデリケートな体験談を、赤裸々に語っていただきました。
現在第7回まで公開されています。

 

 

インタビュー 世界のひきこもり

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これまでも世界各地の人々へのインタビューがありましたが、この記事では初めてアフリカの「ひきこもり」が登場しました。
世間の「ひきこもり」のイメージを打破するものになっているのではないでしょうか。

 

 

喜久井ヤシンさんの記事から

喜久井ヤシン( きくいやしん)さんは、今年も当事者手記やエンタメの話題など、さまざまな形式でユニークな記事を出していただきました。

 

当事者手記 

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「助ける力」ではなく「助けられる力」をキーワードにして、ひきこもり支援のあり方を掘り下げています。
当事者以上に、居場所を運営する支援者側からの反響がありました。

 

 

カルチャー記事 

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少々マニアックな内容ですが、シオランという思想家を紹介しています。
毒舌な作家のため、驚くような言葉が見つかるかもしれません。

 

カルチャー関連の記事では、この他にLGBT映画短歌マンガ、中島みゆきなど、幅広い好奇心によって、いくつもの特集を書いています。
カルチャー 」のタグなどから一覧がご覧いただけます。

 

 

また小説も発表されており、約一年間連載した短編集「遊べなかった子」は、今年の4月で完結しました。

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 執筆者 喜久井ヤシンさんのコメント 

ある小説で、世の中の役に立たないことをする少年がおり、人から不思議がられる場面がありました。「何でそんなことをするのか」と聞かれ、少年が答えます。「もっと自分を好きになりたいから」。
私もその少年のように、人から好まれるかどうかという尺度ではなく、「自分を好きに」なりえるためのものとして、興味のおもむくままに書いていきたいと思っています。

 

 

湊うさみんさんの記事から

湊うさみん(みなとうさみん)さんも、多様な当事者手記を公開しています。
さまざまな場面での生きづらさが率直な言葉で語られており、短い時間でも読みやすい記事を届けていただきました。

 

お風呂に入りたいけど精神的に入れない

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うつなどの精神状態によって、日常生活が困難になったことが書かれています。
年間を通じてアクセスがあり、多くの方の課題になっていたことを、この体験談によって教えられました。

 

予定があると落ち着かない

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  執筆者 湊うさみんさんのコメント

 私がひきポスに記事を書き始めてから一年ちょっとが経過しました。一年もあればひきこもりから抜け出せると思っていたのですが、まだもうちょっと「当事者」として記事を書くことになりそうです。

 

 

今年のニュースから

つづいては2019年のニュースとともに、連動した記事をご紹介していきます。 

 

3月……NHKのひきこもり報道で「ヤラセ」疑惑

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NHKで「ひきこもり」の特集番組が放送された際、ネット上の一部で演出に「ヤラセではないか」という批判がおこりました。
そこで、問題視された山瀬健治さん本人が、即座に反対意見を表明。こちらの記事となりました。

 

 

5月……川崎市登戸で2人死亡・3人重症の通り魔事件
6月……練馬で元農林水産省の事務次官が長男を殺害

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 今年もっとも悲惨だった事件の一つといってもいいでしょう。
川崎の事件では、犯人に「ひきこもり傾向」があったと報道されたことから、多くのひきこもり関係者を動揺させる事態となりました。
事件によって生じた最悪の反応が、練馬での殺害事件です。
『ひきポス』ではこの事件をとりあげた記事を複数発表しました。
執筆者の一人、田中ありすさんは、メディア上で作られているひきこもり像に警笛を鳴らしています。

 

 

7月……参院議員選挙

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8月……NHKハートネットTVで「ひきこもり」特集

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NHKでひきこもりの特集があり、昨年に引き続いて「ハートネットTV」に『ひきポス』のメンバーが登場しました。
「ひきこもり文学
2019」として自身の体験談を朗読するもので、上記ではその手記の一部が掲載されています。

 

 

10月……台風19号上陸

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記録的な大雨と甚大な被害をもたらした台風19号は、ひきこもりの生活上の問題とも直結するものでした。
ぼそっと池井多さんの手記では、台風が迫っているという報道があっても、逃げることのできない心理がとらえられています。

 

 

12月……長男殺害の元農水次官に6年の実刑判決 

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その他の当事者手記から

 ふたたび当事者手記をご紹介していきます。
今年も「ひきこもり」をはじめとして、生きづらさをもつ人のさまざまな声が『ひきポス』に届けられました。

 

被害者意識の先の加害性 ~川崎殺傷事件に褪(さ)めた傷が疼(うず)く~

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 執筆者 ゆりなさんのコメント
執筆当初の私にとって、この記事を書くことは免れられないことでした。ズキズキと疼くその傷を、私は見て見ぬふりをすることができなかったのです。
そして加害性が生まれた原点に立ち戻り、これを書き終えたとき、傷に染まった過去の私をようやく迎えに行けた感触がありました。
自己否定の深みに自ら再び潜り、回想を重ね、
そこから現在に向けて言葉を紡ぎ出した一本です。

 

 

川崎殺傷事件「死ぬなら一人で死ね」論争に思うこと

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  執筆者 Longrowさんのコメント

この記事では罵詈雑言もお褒めの言葉も含め多くのツイートやコメントを初めていただき、そこから「自分だけの言葉を発する意味」「書き手の在り方」を考えさせられることにもなりました。

 

 

川崎殺傷事件と練馬の元事務次官の長男殺害事件から思う「現代の魔女狩りがおこなわれるディストピア」

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 執筆者 さとう学さんのコメント 

今年、立て続けに起きたひきこもり関連の事件を聞き、2000年にあった西鉄バスジャック事件と新潟幼女監禁事件を思い出した。この2つの事件をきっかけにひきこもりという言葉が広く知れ渡り、ひきこもりバッシングが始まり、引き出し屋が出てきた。

あれから約20年が経ったが、国や自治体の支援はほとんどなく、家族や当事者は高齢化し、日本経済は疲弊した。再びひきこもりバッシングの兆しが見え始め、引き出し屋は社会に召喚されてしまった。

みんな余裕がなくなっている。それでも我々は生きていかなくはならない。唯一の希望は、当事者活動と当事者発信。これらを使って情報収集をしながら身を守り、いまある制度を最大限に活用してサバイヴする方法を模索していきたい。

 

 

 

なぜ小学校を5回も転校したのか(全3回)

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苦登校~12年に及ぶ地獄の学校生活~(全3回) 

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私の魂は黒かった 山本菜々子画集(全2回)

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 この他にも、たくさんの方にご登場いただきました。
ぜひとも『ひきポス』のバックナンバーをご覧ください。

 

編集長・石崎森人からのコメント

今年のもっとも大きなトピックは5月、6月の痛ましい事件ではないでしょうか。社会問題として大きく取り上げられ、そのことがきっかけで、ひきポスも各方面から取り上げられ、変化の多い年でした。

このような時に、社会問題として語るだけではなく、自己のリアリティから現れた言葉で語ることこそが、渦中にいる当事者に響く言葉だと確信しています。このような素晴らしい作品が多く生まれたことを誇らしく思っています。

 

   後記

2019年も『ひきポス』を続けることができ、あらためて読者の方々に感謝申し上げます。苦しいことは多くあり、世の中の悲しい出来事は尽きません。それでも皆様にとって、せめて憂いの少ない次年があるようお祈り申し上げます。今年も『ひきポス』をお読みいただきありがとうございました。   『ひきポス』編集部