ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

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実はひきこもってないひきこもりたち -データで見るひきこもり-

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(文・湊 うさみん)

 

ひきこもりの生態はあまり知られていません。なぜなら、人との関わりがほとんどないからです。

 

ネットでならひきこもりブログ、ニートブログといったものが見られますが、すぐに閉鎖されています。

 

今回はひきこもりを取材し貴重なデータを調べている本「ひきこもりの社会学」(著・井出草平)から引用をさせていただき、主観の混じらないデータとしてもひきこもりを見ていただこうと思います。なお、以下は2006年のデータなのでちょっと古いですが、それなりに参考になるかと思います。

 

まずひきこもりの定義とは?

定義はいくつかありますが、国立精神・神経センター精神保健研究所社会復帰部が作成した「ひきこもりガイドライン」によると以下のようになっています。

 

「ひきこもり」はさまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態のことをさします。

 

ニートのように年齢制限はないのか、長期とは具体的にどれくらいなのかなどがわからないため、多少曖昧ですね。

 

不登校経験率


調査した団体によってデータがばらけています。

 

ひきこもりガイドライン 61.4%
斉藤環の診察データ 90.0%
埼玉県実態調査 64.6%
大分県実態調査 69.6%

 

不登校のうちの2割程度がひきこもりになるとされています。そしてこの2割がひきこもりの中の6~8割を占めています。

 

大学から不登校になった人の場合、中学や高校は普通に行っていたケースが多いです。昔はまったく問題がなかったのに、大学になって突然不登校になるそう。

 

ひきこもりの3つの社会的性質

1.男性が7~8割
2.数十万人単位で存在するのは日本のみ
3.1970年代に現れた現代的な現象

 

1970年以前はただ単に調査してなかっただけとか、なんらかの理由があるかもしれません。昔は覚せい剤が合法だったから、覚せい剤中毒がいない扱いになっていたように。

 

実はひきこもってないじゃん

ひきこもりと言えば自室から全然出ず、家族との会話もメモだけというイメージです。しかし、ひきこもりガイドラインによる調査によると、そのような純粋ひきこもりは4%とのこと。

 

また、自室からは出るけれど家からまったくでないひきこもりは6.6%。
つまり、10.6%だけが家から出ないひきこもりであって、それ以外の90%近くは普通に外出します。

 

特に、毎日外出するひきこもりは11.3%も存在しており、ひきこもりのイメージとは全然違ってアクティブです。

 

ひきこもりの犯罪率は低い

日本の犯罪率は1.4%ですが、ひきこもりガイドラインによると、違法行為をするひきこもりは0.7%。通常の半分ですね。

 

しかし、家庭内で器物破損など物を壊したりする人は15.1%、家族に暴力をふるうケースは19.8%と高め。日常的に暴力行為をするというよりも、親から「将来どうするんだ?」「いいかげん働け」と言われた時に暴力をふるうことが多いとのこと。

 

ひきこもり絡みの事件

2006年には、ひきこもり当事者が親を殺す事件が5件、逆に親がひきこもり当事者を殺す事件が2件。この7件のうち、本人が自殺したのは2件。この2件は実質、無理心中と言えます。

 

この7件は、殺害を計画して最後まで完遂できた数です。未遂に終わったケースもたくさんあると思われます。

 

さらに、ひきこもり当事者が家族を巻き込まずに自殺を図る事件もたくさんあるでしょうが、数字に出てきません。おそらくは、かなりの数がいるのではないでしょうか。私自身が自殺未遂してますし。

 

無職は増えてるけどニートは増えていない?


内閣府による「若年無業者に関する調査」を見ると1992年に130万7000人だったものが、2002年には213万2000人と1.6倍にふくれあがっています。

 

この内訳は以下の通り。
働きたいけど職につけない無職は1992年には63.9万人ですが、2002年には128.5万人と倍増しています。
働きたいけど職探しをしていない人は、1992年に25.7万人、2002年は42.6万人と増加。

 

しかし、最初から働く気のない人は1992年に41.2万人、2002年は42.1万人とほとんど増えていません。
不思議なデータですね。

 

ひきこもりはオタクではない?


マンガやアニメが好きなオタクがひきこもりになるイメージがあります。果たしてそれは真実なのでしょうか。

 

当事者の一人はこう語っています。
「哲学、文学、アートといったメインカルチャー寄りの嗜好を持っていて、端的に言うとオタクを馬鹿にしている」

 

ひきこもりの著書で有名な斎藤環氏もこう述べています。
「オタクはいまだに被差別集団であり、ひきこもりの青年たちの良識が、みずからをオタクたることを許さないのです」

 

ひきこもりは権威のある趣味を志向する傾向があり、ひきこもりはオタクが多いどころか、少ないように見受けられるそう。

 

終わりに


孫子は「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と言いました。ひきこもりの詳しい現状を知ることで、何か見えてくるものもあるのではないでしょうか。

 

NHKのハートネットTVにひきポスが取材された時、視聴者のほとんどが「外出したらひきこもりじゃないじゃん」と思ったことでしょう。


しかし、データから見ると外出するひきこもりのほうが圧倒的多数なのです。何も間違ってはいません。


なお、私は取材依頼を受けてもテレビには映りたくないので家から出ません。

 

執筆者 湊うさみん

20代でドロップアウト。ニート歴10年以上のエリートニートになっちゃいました。

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