ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

『ひきポス』は、ひきこもり当事者、経験者の声を発信する情報発信メディア。ひきこもりや、生きづらさ問題を当事者目線で取り上げます。当事者、経験者、ご家族、支援者の方々へ、生きるヒントになるような記事をお届けしていきます。

【第2回ひきこもりトータルビューティープロジェクト】(第2話)外見を自ら選ぶ、それは「私たちはどう生きるか」に通じる

あらためて、プロジェクトのご紹介を

本記事は「第2回ひきこもりトータルビューティープロジェクト」についてのお話、第2話です。
「第2回HTBP」と略させていただきました。
このお話は第1話からの続きですが、本プロジェクトについて、改めて少しだけご紹介をします。

(2018/11/24追記 本記事は2018年3月に執筆されたものです。現在のプロジェクト内容とは異なることがございます。そのため記事最後のイベント紹介を削除し、各プロジェクトまたはその代表のfacebookページのリンクを貼りました。ご関心をお持ちになりましたら、メディア出演予定やイベント情報など、ぜひともご覧ください。

本プロジェクトの参加者は、ヘアスタイリングのプロである吉澤智洋さんと、トータルコーディネートのプロである河面乃浬子さんによるスタイリングを受けます。

   f:id:Longrow:20180305003822j:plain    f:id:Longrow:20180116215506p:plain
◆(左)内面の魅力をヘアスタイルで「可視化」するプロ ヨッシーこと吉澤さん。
◆(右)次々と内面の魅力を引き出すプロのスタイリスト乃浬子さんの「乃浬子マジック」



NHKのビデオに「ひきこもりからの回復」というものがあります。
その中でも「印象力アップ講座」の巻が特に多く貸し出されたというのです。
そこから「印象力アップ」がひきこもり当事者・経験者・家族から深い関心を持たれていることが分かりました。
そのような関心とニーズに応えようと、本プロジェクトが立ち上がったのです。

「悪くない」ファッションを求めた私

第1話では、主にイベントで私が感じたこと、受け取ったメッセージについてお話しました。
この第2話の冒頭では、ちょっとだけ私個人の話をさせていただきたいと思います。

私は大学時代に、大学に何を着ていくかで非常に苦しんだことがあります。

何を着ていいか分からない。
それ以前に、何を着ても似合っていない気がする。

当時の巨大掲示板に書いてあった「これが基本だからとりあえず買っておこう」というものを買ったりしたのですが、その一式を着ても自信が持てない。

後になって分かったのですが、実は本当は全然悪くなかった。

自分の着ていたものは悪くなかったんです。
そのことに気づいたきっかけは、やはり巨大掲示板。
巨大掲示板のあるスレッドに上から下までの画像を撮ってuploadしたこと。
床に衣服を並べて撮影して投稿したところ、
「悪くない」というレスが返ってきました。

f:id:Longrow:20180313012713p:plain

◆当時の私がネットに投稿した画像のイメージ。

「センスいいね」があったかどうかは覚えていませんが、それは大したことじゃない。その時の私にとって、何よりも欲しかった言葉は「大丈夫」「悪くない」だったんです。

実際はセンスが良かったのかもしれない、ダサかったのかもしれない。
でも実際どうなのかは私にとって大事じゃなかった。
他者からの、自己否定を打ち消してくれるこの言葉が何よりも欲しかった。

それが1つでもあったおかげで、ファッションについての胸のつかえが取れたのです。
そしてその後も、当時学んだスタイル(自分では「無難スタイル」と名付けている)を基本にしていくことになりました。

あなたが選び、あなたが受けいれる

さて、本プロジェクトのお話に移ります。

吉澤さんの丁寧なカウンセリングによるカット。
乃浬子さんの魅力を最大限に引き出すコーディネート。
それを受けた姿を見れば「悪くない」どころか「良い」と思えるでしょう。


しかしこの、「良い」「悪い」。本プロジェクトではほとんど聞かれない言葉だったように記憶しています。
特に本プロジェクトでは、乃浬子さんから、次のようなことがよく話されました。

「あなた自身が、あなたの在りたい姿を選ぶ。」
「あなたは、コーディネート前の姿、後の姿、どちらを選んでもいい。」
「そして、選んだその美しさを受け取ってあげて。」

 

私は「良い悪いよりも、在りたい姿を自分が決めること、それが大事。その姿の美しさを自分自身で認めてみることも大事。」と解釈しました。
だから「良い」「悪い」はあまり使われない言葉なのかな、と。


参加者AさんとBさんのビフォー・アフター

それでは、参加者の皆さんはどのようなコーディネートを受けたのでしょうか。
ここではAさんとBさんの、コーディネート前後の姿をご紹介します。

まずはAさんのビフォー・アフターを。

 

              f:id:Longrow:20180313052419p:plain       f:id:Longrow:20180313052433p:plain

◆(左)Aさんのコーディネート前
◆(右)コーディネート後。「ワイルド」な印象に大きく変化。

続いて、Bさんのビフォー・アフターを。

   f:id:Longrow:20180313052629p:plain       f:id:Longrow:20180313052702p:plain

◆(左)Bさんのコーディネート前((右)で着ているジャケットは脱いでいます)
◆(右)コーディネート後。「アメリカの西海岸でドライブしてそう」という声多数。


基本は、
「ヘアカット」「着こなしを変える」「ストールなどちょっとしたアイテムの追加」
の3つ。
お金がかかるような特別なことはしていません。
…何を着ても自信がなかった頃の私は、ちょっと高い物も買ったりしていたのですが。


そしてこのプロジェクト後、お二人はある驚くべきことを行ったのです。

 

「自分の魅力を受け取る」ことのパワー

AさんとBさんは、このプロジェクトの直後に、自分の姿をSNSで公開しました。
さらにBさんは、この姿をSNSのプロフィール画像としました。

これらはまさに、
「自身の選んだ在りたい姿を、『自分の魅力』として受け取っている」
からこそ、できたことではないでしょうか。


実は私も同じことをしました。
昨年12月の第1回HTBPでのコーディネートの姿(下の画像の左側)。
これがとても素晴らしく、大変気に入ったんです。
そしてこの画像を、第1回HTBPの翌日に、
SNSのプロフィール画像にしました。

   f:id:Longrow:20180313044222j:plain        f:id:Longrow:20180303003938j:plain

◆(左)私の第1回HTBPでのコーディネート後
◆(右)私の第2回HTBPでのコーディネート後

実はこれ、私がSNSを始めてから初の「顔出し」なんです。
ネットで顔を出すって、勇気が必要ですよね。

これができたのは、第1回HTBPの姿を自分の魅力と強く受け取ったからこそ。
だから、たった1日でプロフィール画像を変えたいとまで思ったんですね。そのSNSでは4年間、ずっと顔は出していなかったのに。

自分の魅力を受け取ると、心の中にちょっとした飛躍が起こるんだと思います。
それは外見への自信ということのみならず。
私が「初の顔出し」をしたように、それまで思いもしなかった場所に歩を進めることだって、あるのかもしれません。

私にとっての「『無難』と『攻め』」

さて、第1回HTBPの姿から、自分の魅力を強く感じ取った私。
そんな私はこの第2回HTBPで、結構「攻めた」コーディネートを選びました。

さて、では私はなぜ「攻めた」のか?
その理由は先に書いた「無難スタイル」にあります。

シンプル、使いやすい色、それを優先して衣服を選ぶという習慣。
その基準が優先されると、私の場合、赤系の色の服はまず買わなくなります。
なので赤色が入っている服は、1着しか持っていません。

でも、その習慣になってしまった「無難」に、そろそろ反抗したい気持ちもある。

そこで今回は、普段やらないようなコーディネートをしてみたいと感じたのです。
「普段はやらない」=「無難から出る」=「攻める」。

実際その通りにしてみると、第1話で描かれているような思わぬ魅力が表れました。
初めは違和感を感じるけれど、段々ニヤニヤとワクワク感が湧き出てくる。
そんな、なかなか味わえない躍動感を体験できました。

          f:id:Longrow:20180313182408p:plain

  ◆かなり「攻めた」結果の私。コーディネートしてから間もない。まだまだ違和感を感じていて固い。

さて、そんなとても良い時間を過ごせたのですが、気になることが1つ。

今回私は「攻め」のコーディネートでいきました。
しかしそのきっかけを作ったのは、本記事でも繰り返し出てくる言葉「無難」です。

であれば、この機会に「無難」とも向き合っておこう。


…コーディネートの後、乃浬子さんと
「無難のままでもいいのだろうか」
というお話をしました。

もちろん、「いいかどうか」は誰が決めることでもないです。
それなのにこういうお話をしたというのは、多分気持ちの迷いを晴らしたい、的な意味あいが私の中にあったのだろうと推測します。

乃浬子さんの言葉は、本記事の最後に記しておきます。

 

外見を自ら選ぶことは、「私たちはどう生きるか」に通じる

さて、本プロジェクトは一貫して、「魅力に気づき、引き出す」ことをメッセージとして伝えています。
AさんとBさん、そして私、が受けた今回のコーディネート。
第1話で詳しくご紹介しましたが、ここでも少しご紹介します。

参加者は下のようなシートに書かれた特性を表すワードから、自分が3個、他の参加者が10個ほど選び、その中から自分の在りたい姿を表すワードを1つ選びます。そして、そのワードを外見に反映させるコーディネートを受けるのです。

  f:id:Longrow:20180306024657j:plain f:id:Longrow:20180306024646j:plain

◆「シンプル」「ロマンティスト」「誠実」「アクティブ」など、特性を表すワードが書かれたシート

私は「ロマンティスト」というワードを選び、それを外見に反映させるコーディネートを受けました。
AさんとBさんも、それぞれ1つのワードを選んでいます。それを反映させた姿が、先の画像です。
3人のコーディネート後の姿に対する受け取り方に違いはありますが、それが自分の新しい魅力なのだということは、3人とも認めるところだと思います。

この「在りたい姿を選択し」「コーディネートを行い」「魅力として受け止める」こと。
これはまさに「選択し、実行し、結果を受けいれる」こと、

つまり、「人生をどう生きるか」にも通じること

じゃないでしょうか?選択と実行と受容の連続、それが人生ですから。
だから「魅力に気づき・引き出す」このプロジェクトでは、

「ファッションだけじゃなく、人間の在り方も私たちは伝えていきたい」

というメッセージが度々語られるのだと思います。


最後に、その人間の在り方にも通じる、乃浬子さんの言葉を紹介します。

「私たちはあなたが魅力に気づくこと、気づいた魅力を可視化すること、そのお手伝いをしているだけなんです。そして私たちは答えを提示するわけではない。あなたには無限の可能性があって、自由に選ぶことが出来る。色々な魅力に気づいて、試して、楽しんでほしい。」

 

そして、「無難でいいのかなあ」と悩んでいる私に対して、乃浬子さんがかけてくださった言葉。
無難を選んでもいい。無難は引き出しの1つ。

「『無難』を選んでもいいんです。色々な魅力に気づいて引き出せたら、それをあなたの『引き出し』の1つにすればいい。『無難』だって引き出しの1つ、他の魅力も引き出しの1つ。今でなくても、魅力に気づいた時に引き出しを増やせばいいんです。


私にはこの茶色の部分の2つの言葉が、同じことを表しているように見えます。
皆さんもそう感じませんか?

『ビューティープロジェクト』関連イベントのご案内


『「上を向きて生きよう!」ひきこもりトータルビュティプロジェクト♡プレクリスマス』
・facebookページ:
12/16(日)「上を向きて生きよう!」ひきこもりトータルビュティプロジェクト♡プレクリスマス

(下記情報は更新・変更される場合もございます。詳細は上記facebookページのリンクよりご確認ください)
・次回開催日12月16日(日) 15時〜19時(18時 ~19時 懇親会付き)
・場所大人のための美容室 SENTAC「センタク」(JR山手線原宿駅より徒歩5分、副都心線、千代田線 明治神宮前より徒歩3分)
・参加費3000円 + 懇親会費 1000円
・定員15名


『ビューティフルライフプロジェクト〜トータルビューティー美容室』
・facebookページ:
【12月18日開催】ビューティフルライフプロジェクト〜トータルビューティー美容室


(下記情報は更新・変更される場合もございます。詳細は上記facebookページのリンクよりご確認ください)
・次回開催日12月18日(火)10:00~17:00
・場所アブニール我孫子店(我孫子駅より徒歩3分程です)
・参加費
¥3000(カラー別途)
・定員20名
*見学のみも歓迎*

 

 

 

______________________________________________________________________

(写真提供:ひきこもりトータルビューティープロジェクト、参加者の皆様)
(記事協力:ひきこもりトータルビューティープロジェクト、参加者の皆様)

本プロジェクトへの参加、および記事作成にあたって、
・快く画像の使用を承諾してくださったAさんとBさん
・第2回HTBPの参加者の皆さま
・河面乃浬子さん、吉澤智洋さん
・参加者を和ませてくださったKさん、写真を撮影してくださったYさん
・美容室アブニールの皆さま
・ほか、第2回HTBPに関わった皆さま
に、心より感謝いたします。


本記事内の画像等の無断転載はご遠慮ください。
(文責:Longrow)