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バリエーションのある企画をいつも考える いろは女子会 in 東京・和泉多摩川【全国当事者会めぐり 第3回】

 

文・写真提供 いろは女子会運営者

編集・ぼそっと池井多

 

いろは女子会は 2022 年6月にスタートした、小さな小さなひきこもり女子会です。

支援者でも専門職でもない一個人がひとりで立ち上げて運営をしています。

ささやかながら、現在は次のような三つの会を開催しています。

 

「お喋り会」

   お喋りをして誰かと一緒にひとときを過ごす。

   月1回。定員なし。予約不要。

 

「おそとの会」

   おでかけしてちょっと遊びながら過ごす。

   不定期開催。3人ほどの定員予約制。

 

「楽しむ会」

   いろいろな製作のプログラムを行いながら共に過ごす。

   不定期開催。6人ほどの定員予約制。

 

 

「お喋り会」

「お喋り会」は 2022 年6月の初回から2023年10月現在まで通算17回開催し、延べ100名程の方々が参加してくださいました。
多い時は14名、少ない時は3名で、その月により参加人数は様々ですが、毎月だいたい5名前後の方々にご参加いただいています。

会の名が示すように、お喋りを通して交流をする会ですが、他の方のお喋りを聞くだけでも、喋らずにそこに居るだけでも、もちろん大丈夫です。
参加者が一つの輪になるようにテーブルを配置して、簡単な自己紹介をした後、特にテーマを設けずにお喋りをして過ごします。

近況や季節のこと、読んでいる本、見たドラマや映画などの他愛のない話から、ご自身の経験談や困りごと、生きづらさについて、などの深い話まで様々な話題が出ます。
ゆるく進行する役目も兼ねて私も、お喋りの輪に加えていただいています。

お喋りを聞いていていつも思うのは、誰かを目の前にして、声の温度感、醸し出す空気、伝わってくる思い、相手の存在を感じながら会話を重ねることで生まれるものが確実にある、ということです。

共感、安心感、気づき、相手への思いやり、自分への振り返り。
たとえば普段ひとりで考えていることも、言葉にすることで気持ちの整理ができたり、思いの輪郭がはっきりと見えてくるのではないか、とも思います。

ここは支援や問題解決の場ではありませんが、参加される方々にとって、ちょっと笑い合えたり、ほっと安心できたり、心が軽くなったり、気持ちが温かく交流する場となれば嬉しいです。

 

・カームダウンスペース

お喋りの輪からちょっと離れたいとき、気分転換したいときの為に、窓辺にお席をご用意しています。

 

・素晴らしい景観

開催場所は多摩川のほとりです。広い空、ゆったりとした水の流れ、木々の緑、川を渡る電車。素敵な景観が広がっています。

・読み物のテーブル

会の前後や休憩時間に他の参加者とコミュニケーションが取れずぽつんとなり落ち込んだという、参加者のお声がきっかけです。会ごとにセレクトを変えて本を置いています。

・お菓子のカップくるり!パス

参加者の方からのご提案によりはじめました。言葉が出てこないとき、思いがまとまらないとき、触れたくない話題のとき、このお菓子のカップをくるり!と回すことで周囲に意思表示ができます

「おそとの会」

「おそとの会」は今まで5回開催しています。
お喋りも楽しみつつ、ただ楽しい時間を一緒に過ごせたらいいなあ、と思ってはじめた企画です。

気候の良い季節に多摩川でひとりコーヒーを飲んでいたときに、ふと
「一人もいいけれど、誰かと一緒だともっと楽しいだろうなぁ…」
と思い、その日の夜に1回目の開催告知をしました。

一度きりのつもりで気軽に開催したところ、思いのほか反響をいただいたので、「おそとの会」として内容をその都度考え、不定期で開催することにしました。

 

1回目は「多摩川でコーヒーピクニック・2022」。

和泉多摩川商店街の美味しいコーヒー屋さんでコーヒーとマフィンをテイクアウトして、多摩川までのんびり歩き、河川敷の木陰でピクニックをしました。

秋の気持ちの良い風が吹いていて、身も心もゆったりとリラックスして過ごせました。

 

2回目は「焚火を囲む小さなお喋り会」。

日野市にある焚火のできるミーティングスペース「寄合処ひの」さんの存在を知ったとき、「ここでいろは女子会ができたらきっと素敵!」と思い、企画しました。

薪をくべてひとつの火を囲み炎をじっと見つめながら、想像以上に心豊かになるような体験でした。

揺れる炎は飽きることなくずっと眺めていられます。
代わる代わる火の番をし ながら、お喋りをしたり、お喋りを聞いたり。

 

3回目は「すみればピクニックデイ」。

世田谷区の「すみれば自然庭園」がピクニックデイとして開放される日に開催しました。事情が重なり、ご参加者と私の二人きりのピクニックでしたが、ともすれば運営者の立場もうっかり忘れるほどに語り合い、気持ちが温かくなる時間となりました。

 

4回目は「マヨテラス見学」。

キユーピーマヨネーズにまつわるさまざまな情報やトピックを楽しく学べる見学施設へ行きました。参加者の皆さんは「気になっていたけれど、なかなか来る機会もなくて」と仰っていたので、よいきっかけになったようで嬉しかったです。

 

5回目は「多摩川でコーヒーピクニック・2023」。

昨秋、ご好評いただいた企画を今年も行いました。必ずまたやろう!と個人的にも楽しみにしていた企画です。前回と同じく和泉多摩川商店街をぶらりとしてコーヒーとスイーツを買い、多摩川の河原でピクニックをしました。

広々とした多摩川で開放感いっぱいでした。シートを広げ、大地に足を投げ出して座るのは何とも言えない心地よさがあります。

「楽しむ会」

「楽しむ会」は今まで3回開催しています。
3色パステルアートのインストラクターである、お喋り会リピーター参加者からお声をかけていただき、「楽しむ会」は始まりました。

みんなでわいわい一緒に、時には黙々と手仕事をするようなワークショップ的な会もやってみたいなぁと、ちょうど考えていたので、すぐに意気投合して、お互いのタイミングや詳細などを丁寧にやりとりして実現しました。

都合により、3色パステルアートは2回目となりましたが、「楽しむ会」を生み出してもらえた大事なきっかけです。

 

1回目は「塗り絵でアートセラピー」。
アートセラピストの講師を招いて、塗り絵でアートセラピーをしました。
色彩を通して自分と向き合う参加者の姿が印象的でした。それぞれご自身の言葉がとても深くて、胸に迫るものがありました。

 

2回目は「3色パステルアート」。

インストラクターを招いて、3色パステルアートをしました。
無心で手を動かしてストレス発散になったり、製作の達成感を得たり、可愛らしい色彩に癒される時間となりました。

色鉛筆、クレヨン、絵の具、墨、パステル、様々な画材で塗り絵をしました。

 

3回目は「折り染めでランタンシェードを作ろう」。
告知が遅かったせいか、企画内容の求心力に欠けていたのか、申込み者はおひとり。
しかしその分、運営者とふたりきりで気負わずにかなりリラックスしながら、ゆるゆると製作を楽しみました。秋の夜長のお供にぴったりのランタンシェードが出来上がりました。

和紙を折り畳んで染料につけ、様々な色合いと模様の美しさを作り出します。
次から次へと思う存分、和紙を染めました。

「おそとの会」は、屋外で行う少人数の集まり、という形にこだわっています。

「楽しむ会」は、製作や趣味活動がメインで、お喋りを目的としていません。

「お喋り会」で様々な参加者の方と触れ合ううち、室内の閉塞感が苦手という方もいらっしゃることを知り、また、人が多いと緊張する、面と向かうとお喋りしづらい、あまり自分のことを話したくない、などの思いを抱える当事者の方もいらっしゃることがわかりました。

そんなとき、会の形にバリエーションがあれば、それぞれご自身の状態に合わせて気持ちや気分に負担が少ないように参加していただけるのではないかという思いもあり、「おそとの会」「楽しむ会」を不定期ながらも今後も継続していこうと考えています。

いろは女子会を立ち上げたきっかけと思い

冒頭で触れたように、私は支援者や専門職ではありません。
更に言うと、当事者や元当事者でもありません。

ある時、ご縁があって「ひきこもりUX女子会」の会場に行く機会があり、そこに集う大勢の参加者の方々がお喋りしている光景を目にしたとき、「安心して話ができる場所、同じ目線で寄り添い共感し合える相手を求めている人がこんなにもたくさんいて、ここはそれが叶う場所なんだ」と驚きました。

直接的支援や公的援助ももちろん重要なことだとは思いますが、もしかするとこういう温かな人と人との気持ちの触れ合いこそが、実は救いや希望になっているのかもしれない、と気づきました。

そして、このような場所がひとつでも多くあればあるほど、参加する選択肢が広がるのではないかと思い至り、「ひきこもり女子会」を始めようと考えました。

と言っても、私は社会福祉の知識もなく、ファシリテーションのスキルもなく、そもそも、組織を立ち上げて運営するのも初めてのことです。

不安や心配もありましたが、とにかくやってみよう!出来ることをするだけだ!上手くいかなかったら立ち止まればいい!という楽観的な気持ちと、「やってみたい」という好奇心が後押ししてくれました。

会を重ねるごとに、参加者の方々のニーズやこうした方がより良いのでは、ということが見えてきて、可能な限りそれを取り入れ実践してきました。

言ってみれば、参加者の皆さんと一緒に「いろは女子会」を作り上げているという感覚です。

これからも、参加される方々のご意見やご要望に耳を傾け、出来る範囲での心配りをしていきたいと思います。

いろは女子会を立ち上げるとき、「自己満足にならぬように」と強く思いましたが、今は「参加者の皆さんも私も、みんなが満足できたらいいな」という思いです。

そして「私が参加者なら、どう思うかな」と独りよがりにならぬよう、ちょっと冷静に客観視して考えることを大事にしています。

また、ひとりで運営しているため、私の手が届く今ぐらいの開催規模がちょうど良いのかな、とも思います。

毎回、会の始まりでは緊張していた参加者の表情が、会が終わるころには柔らかくほころぶ様子を見ると、私まで嬉しい気持ちになります。

おこがましくも、「いろは女子会」も誰かの救いや希望になれていたらいいなあ、と願いを込めて思っています。

特別なことは何もできませんが、これからも多摩川のほとりの「ひきこもり女子会」として変わらず在り続け、淡々と細く長く一回一回を積み重ねていきたいと思います。

最後に。

今まで参加してくださった方々、いつか参加したいと思っておられる方々、Xやメールでいつも応援してくださる方々、運営のお手伝いをしてくださる方々、お世話になっている居場所の方々、そして、この記事を読んでくださった方々、本当に感謝しています。

「いろは女子会」がここに在るのは、皆様のおかげです。

 

参加したい人のための連絡先

Xアカウント  @irohajoshikai

メールアドレス iroha_joshikai@yahoo.co.jp

 

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