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【ひきこもりと地方】<当事者会めぐり> 疑問と調査から始まった私たちの活動 ~ ひきこもり女子会 in 北九州 ~

北九州市八幡東区にある河内藤園 Photo by キタキュー

文・西本祥子(北九女子一歩会)

編集・ぼそっと池井多

 

  私たちが活動している北九州市は、1963年2月10日に門司市、小倉市、若松市、八幡市、戸畑市の五市が対等合併を経て誕生し、本州以外では最も早く同年4月1日に政令指定都市になりました。県庁所在地ではないのに1978年まで九州の中で最も人口が多い都市でした。

 それは皆さんが教科書でも習ったように、明治時代に官営八幡製鉄所が造られて栄えてきたことと深く関係しています。だから工業都市のイメージが強いかもしれませんが、北九州には自然や史跡など美しい場所もたくさんあります。

 

 ここで「ひきこもり女子会in北九州」を開催している「北九女子一歩会」が誕生したのは2018年のことでした。

 立ち上げたのは、北九州市でひきこもり支援、困難を抱える子どもや若者の支援、不登校の親の会の運営などを経験してきたメンバー5人でした。きっかけは、それまでメンバーたちが支援活動の中でいだいてきた疑問の答えを探るために行なった、ある調査活動でした。

 

 それは、

「支援機関につながってくるひきこもりや困難を抱える方は、なぜ男性が多く女性が少ないのか」

という疑問でした。

そのときの調査結果は以下のURLからダウンロードしてご覧いただけます。

ダウンロード先https://www.kitakyu-move.jp/tosyocat/back-gender

完成した報告書冊子版の表紙

 

 調査を通じて、改めて私たちは、悩みを抱える女性たちは決して怠けているわけではなく、何とかしようと思っているけれども上手くいかないという気持ちで日々を過ごしているということを知りました。

 そうした女性たちの声に応えるために、私たちはいくつかの取り組みを始めました。それらの取り組みは、現在までに次のような私たちの活動の柱に成長してきました。

 

①  女性たちの居場所「ひなたぼっこ」の開催

②  年1回の「ひきこもり女子会in北九州」の開催

③  北九女子一歩会通信「ひなたぼっこ」の作成・発行

④  北九女子一歩会・サロンの開催

⑤「あなたの一歩を応援する講座」

 

これらを一つずつ説明させていただこうと思います。

 

女性のための居場所「ひなたぼっこ」の開催

「ひなたぼっこ」のご案内

 2020年9月から「安心できる場」、「ひとりじゃないと感じられる場」を目指して月1回、気楽に参加できる生きづらさに悩む女性だけの居場所として「ひなたぼっこ」を開催しています。

 

 2018年に行なった調査では、女子会の開催を望む声があったものの、初めて開催するときは、「本当に参加される方がいらっしゃるのかしら」と運営メンバーたちはとても不安でした。  でも、2020年9月に開催した第1回には、お一人が参加してくださり楽しい時間を過ごすことができました。  回を重ねるたびに、様々な方に参加していただき、2022年11月までに参加者は実人数35人、延べ79人となりました。

 

 やっている内容は語り合いが中心ですが、無理して話さなくてもよく、黙って聴いているだけでもOKです。 また、くるみボタンのブローチ作り、フェルトのコースター作り、体操など、10分程度の時間でできる手芸や体操を行なっています。

左:フェルトのコースターづくり / 右:カレンダーなどで簡単な紙袋を作成

 

 2022年5月は、外部のボランティアの方の指導でハーバリュウムづくりを行いました。造花を選んだり、やり直したり、他の人の作業をほめあったりと、他の参加者と同じ空間にいることを感じながら手芸の時間をすごしました。そして、最後は皆さんの作品を称えあいました。

参加者でつくったハーバリュウムの数々

 

オンラインで開催 新型コロナにも負けません!

 2020年、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発出されると公共施設は使えなくなりました。そのため、2021年1月と5月は中止になりました。でも、これからの時代、新型コロナと付き合う生活は長引くと思われたので、私たちも慣れないオンライン開催に挑戦し、2021年6月、8月、9月はZoomで開催しました。

 

コロナ下でのオンライン「ひなたぼっこ」の様子。 簡単な体操も実施しました。

 

自己の内面と対話する

  回を重ねていく中で、皆さんが自身のことを語る場面に出会い、またその語りから一歩を踏み出そうとされる様子を垣間見ることがあります。そんな経験から、ただ語り合うだけではなく、参加者が自分の内面に向き合えるワークをときどき取り入れています。
 例えば、「新しい自分発見のためのコラージュ」、「コミュニケーション力向上のために、互いをほめ合うワーク体験」などです。
 これからも、様々なプログラムを考えていきたいと思っています。

 

参加者からの声

参加された方からのメッセージをご紹介しましょう。

 私にとって「ひなたぼっこ」は、あたたかな気持ちで安心できる居場所です。今まで1人で悩み、頑張ってきたこと、そんな気持ちを自然にお話しできる場です。参加したほめ合うワーク体験はとても良い時間で、自分自身を認めるきっかけになりました。今後もさまざまな方と関わり外に出ていくための場として、ひなたぼっこに参加していきたいです。

  女性のための居場所「ひなたぼっこ」への参加をご希望の方は、この記事の末尾にある連絡先をご参照ください。

 

レトロな門司港駅 写真・PhotoAC

 

「ひきこもり女子会 in 北九州」の開催

 調査・研究の一環で2019年に第1回を開催して以来、年1回開催しています。2022年度で、第4回になります。対象は当事者・経験者だけでなく、ご家族、支援者、関心のある方にも参加していただいています。第1部は体験談、第2部はグループカフェという構成です。

「第1回ひきこもり女子会in北九州」の 開催風景

 2022年11月13日に開催された「第4回ひきこもり女子in北九州」の様子をご紹介します。
 参加者はスタッフ合わせて40人。
 これまで第1部は当事者の体験談のみでしたが、今年度は前半に「あなたの一歩を応援する講座」を開催したので、その延長で「支援について」をテーマに設定し、4つの支援機関、団体などから支援内容とその参加者の体験を発表していただきました。

 第2部は、第1部を受けて当事者・経験者・支援者に分かれ、グループカフェを行いました。

「第4回ひきこもり女子会in北九州」のチラシ

当事者からの感想

 長い間苦しんでいた私の悩みと同じような方が何人もいらっしゃって、共感で涙が出そうな時がありました。また、人は自分に合った支援や環境が見つかり、自己肯定感が増えたら変われるのだとも理解できてすごく良かったです。

支援者からの感想

 「こんなにいろいろな力が結集すると、おもしろいものが産まれると感じました。」

「支援のかたちは(目標など)、いろいろですが連携でカバーすれば良いと思えました。」

「他職種の方との意見交換や情報の共有は大変勉強になりました。」

「知らない情報があり、困った時に相談していける希望がみえた。」

 など情報共有、支援者同士の連携が求められていることが分かりました。支援者どうしのつながり・連携が大切だと今回も改めて思いました。

 

通信「ひなたぼっこ」の作成・発行

通信「ひなたぼっこ」第1号

 北九女子一歩会は、ひきこもり・生きづらさに悩む当事者・経験者、家族、支援者がつながる場となることを目指して通信「ひなたぼっこ」を毎年1回発行し、参加者、支援機関、医療機関などに配布しています。 活動紹介、当事者・経験者の体験談、専門家による寄稿などを内容として、今まで次のような特集を組んできました。

第1号「女子会について考えよう」(2020年、発行部数200部)

第2号「新たな自分との出会い」(2021年、発行部数300部)

 

 

 

サロンの開催

 女性のための居場所「ひなたぼっこ」や「ひきこもり女子会 in 北九州」を開催するに当たって、運営者である自分たちも勉強をしないといけないという思いで、北九女子一歩会は専門家や当事者の方をゲストスピーカーとしてお招きする「サロン」を始めました。年4回程度の開催を目標にしています。

 「参加者も必ず発言をすること」「自分自身の考え方を深めること」を目指し、北九女子一歩会のメンバー以外の方の参加も可としています。

 これまで、ゲストスピーカーを含めて35名のメンバー以外の方が参加してくださり、支援者のネットワークも広がってきています。

 支援者同士がリアルにつながることによって、当事者の方に他の支援者・支援機関をご紹介したり、より良い支援に繋がっております。

 

 今後はサロンの開催で支援者の輪をもっと広げ、当事者の方への支援の選択肢が広がることを願っています。

今年度の「サロン」開催テーマ

 

第9回 ひきこもり・生きづらさに悩む方の支援について

   (支援の現場から)

第10回 保健室から見た生徒・学生の現状と課題

 

今年度実施した「あなたの一歩を応援する講座」

 北九女子一歩会で開催している、生きづらさに悩む女性たちの居場所「ひなたぼっこ」では、参加者の方々からただ「安心する」だけでなく、「現状をなんとかしたい」、「何かしたい」、「仕事がしたい」など一歩前へ進もうとする気持ちが多く語られます。こんな女性たちのために何かプログラムを開発できないかと考えたものが「あなたの一歩を応援する講座」でした。

 

 下のチラシでご覧いただけるような8回の連続講座です。

「あなたの一歩を応援する講座」の案内チラシ

 事前説明会を開催し、互いを知ることから始めました。定員10名を上回る12人のお申込みをいただき、事前説明会までたどり着いただけでもOKということで全員に参加していただきました。

 12人の申込者のうち、8日(全日程)参加―3人、7日参加―3人、5日参加-2人と、3分の2の方が半分以上参加されました。

 

講座のアンケートより

 講座終了後に行なったアンケートで、どのように参加者が変化したかを評価したいと思い、「生きづらさ」と「自分自身」の変化についても回答していただきました。

 その結果、

生きづらさの変化  8名中7名が変化
         (少し軽くなった6名 軽くなった1名)

自分自身の変化   8名中7名が変化
         (少し変化した6名 変化した1名)

となりました。

 また、Mimura&Griffithsによって2007年に発表された日本版RESSという自己肯定感チェックリストを活用して調査した結果、 40満点で8名中7名が0.5~11.5点上昇していました。
  

北九州市の中心 小倉駅南口 写真・ぼそっと池井多

これからの北九女子一歩会

 私たちの活動は4年になります。今まで自らの疑問、現場の声を元に活動を進めてきました。これからも、自分たちが経験したこと、感じたこと、出会った方々の声を大切にしながら、活動を継続していきたいと思っています。


最近の女性たちの居場所「ひなたぼっこ」は次のようなカタチで開催しています。

対象:ひきこもり状態・対人関係の難しさなど、さまざまな生きづらさを感じている女性

開催日:原則毎月第3土曜日(13:30~15:30)

場所:生涯学習総合センターなど   

定員:10人程度

活動内容:語り合いが中心ですが、簡単な手芸や体操など様々な内容を盛り込んでいます。

参加費:200円(飲み物代、材料代など)

申込み:人数を把握するため、事前申込みをお願いしています。

  メール : kitazyo@gmail.com

 開催日が近づいてきましたら、関係機関にチラシを配布するとともに、活動内容をTwitterでご案内しております。

 ご関心のある方は次のアカウントをぜひフォローしてください。

twitter.com

 

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