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ひきこもりがコロナ禍で感じたこと

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(文・南 しらせ)

 ひきこもりの私が、コロナ禍を過ごす中で思ったことや気づいたことを思いつくままに書いてみました。

普段から緊急事態宣言中みたいな生活をしていた

コロナの感染拡大で、私の住んでいる県でも5-6月に緊急事態宣言が発令された。必要以外の外出自粛や、外出機会の半減などが求められることになったが、緊急事態宣言が出されても、結果的に私の生活はほとんど変わらなかった。

私は親と同居していて両親が生活必需品を買ってきてくれるため(両親には感謝しないといけない)、私自身はコロナ禍以前と変わらず、自分が普段使う生活用品を買ったり、図書館や銀行に障害年金をおろしに行く程度で外出の頻度は変わらなかった。

また私はお酒も飲まないし(ひきこもっている後ろめたさや精神科の薬などが原因)、ギャンブルにも興味がないし、映画館は遠くにあって電車代が高いし(体も疲れるし)、娯楽のために外出するという習慣が普段からなかった。

お金もないし、これをやってみたい、ここに行きたいという意欲もほとんどない。家のTVと図書館で借りる本があればそれで幸せ、というのが私の正直な気持ちで、緊急事態宣言が出た不安はあったけれど、外に出られないことへのストレスや不自由さをほとんど感じなかった。

また「外出機会を半分にしろ」と言われても、ひきこもっているためそもそも外に出る機会がほぼないのでこれ以上減らしようがない。緊急事態宣言が出ても生活に大きな変化がないことに気づき、平時から私のひきこもり生活は緊急事態宣言みたいな日々だったんだなと改めて思った。

病院が電話診察になって気づいたこと

そんな私に起こった数少ない変化が、通院だ。コロナ禍の影響で、通っている精神科が電話診察に切り替わり、家にいながら受診ができるようになった。もともと少し遠い病院にかかっていたため、通院費の方が診察代より高くなる状態だったのだが、その交通費がかからなくなって、金銭的には楽になった。

最初は楽で便利だなと思っていた電話診察だったが、何度も経験するたびに不満も感じるようになった。一番の不満は、コミュニケーションだ。主治医と声だけでやりとりするので対面に比べて、こちらが伝えたいことを相手にうまく伝えられないし、相手がこちらに伝えようとしていることもいまいち理解できていないような、もやもやした気持ちになるのだ。

電話診察を経験してみて、やはり定期的な対面受診も大切なのかなと感じた。個人的には電話診察でもZoomみたいな技術を使って主治医と顔を合わせながら話ができるのが理想で、そうなればもっと便利で中身のある診察になるのになあと思う。

リモートワークへの期待と現実

コロナ禍が始まってすぐの頃、「リモートワーク」という在宅での働き方が加速したことに私はすごく感動していた。ネガティブな変化が多い中で、「世の中が変わってきている」という期待があった。

そもそも私は働きたくないのではなく、働けるなら働きたいという意思はある。ただ体調不良で長時間外に出られないことが働けないことの大きな壁になっていた。だからもし自宅で働けるとなれば適度に休憩を取りながらでも仕事ができて、収入を得ることができるかも!と思ったのだ。

しかし今のところ、特に私が住んでいる地方では思っていたほどリモートワークの導入が進んでいないことを知って、がっかりした。

ただ仮に地元の会社がリモートワークの求人を出していたとしてもそれをどこで知って、どうやって応募したらいいんだろうなど、基本的なことが私には何も分からない(ハローワークでの普通の仕事の探し方も分からないのに)。そもそも本当に求人に応募できる自信があるのかと言われたら、正直不安で全くないのだった。

「リモートワークが広がれば、自分だって仕事ができるかも!」なんてリモートワークに都合のいいことを全部押し付けていたけれど、一番変わらないといけないのは自分自身の気持ちだよなあとふと我に返った。

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執筆者 南 しらせ

自閉スペクトラム症などが原因で、子ども時代から人間関係に難しさを感じ、中学校ではいじめや不登校を経験。現在はB型作業所に通所中(ひきこもり生活は6年目)。