南しらせ
通っている小さな精神科。診察予定時刻を過ぎても、まだ呼ばれない。あと何人くらいいるんだろうと、周囲をぐるりと見まわした。すると、見覚えのある横顔が……。 「あ、この人は……」
(文・南 しらせ) 母、突然の自宅待機 「母が勤めている会社の関係者に新型コロナの陽性者が出た」というニュースが我が家を駆け巡ったのは、2022年が明けてすぐ、オミクロン株による第6波が始まった頃だった。 保健所によると母は濃厚接触者ではなく単なる…
(文・南しらせ) B型作業所や趣味の読書にまつわる話、ポイ活から抜け出せないこと。最近の私の生活についてのとりとめのない話です。 工賃は自分の分身 私のひきこもり生活の数少ない趣味が読書だ。とても好きな作家さんがおり、その人の本を読むのが生き…
(文・南しらせ) 来客対応1 夕方5時を知らせる町内放送のメロディがスピーカーから鳴り響く2分前に、自宅のチャイムが鳴った。 鏡も見ずに急いで手に取ったマスクを顔に貼り付けて玄関を開けると、そこにはマスク越しに薄い笑顔を浮かべているだろうスーツ…
(文・南 しらせ) 地方で車が運転できない不便さは、多くの人が知るところである。しかし車社会で生きるひきこもりには、もっと深刻な問題があると私は感じている。 自動車は常識と自己肯定感の塊 「暑ぃ……」 額から噴き出た汗を腕で拭いながら、私はそう呟…
(文・南 しらせ) これは私のひきこもり生活での、いつものお昼ご飯の話だ。 私は昼食に米系(インスタントのカレー・冷凍チャーハンなど)と、麵系(インスタントラーメン・冷凍パスタなど)の2種類の炭水化物をほぼ一日おきに食べる。あとはそれらをひたす…
(文・南 しらせ) 私が就労継続支援B型の利用を開始して半年ほどが経つ。今回は利用までの流れや、実際に利用を初めてからの感想などを書いてみたいと思う。 「就労継続支援B型」とはなにか? 就労継続支援B型(以下B型)は障害者などを対象にした国の公的…
(文・南 しらせ) あの時あの場所で私が興味本位であの冊子を手に取らなければ、知らなくてもいい現実を知らなくて済んだのにと後悔している。でもそれはいつかは知らなければいけない現実でもあった。 学生時代の同級生の近況を知る ある日、私が地元の図…
(文・南 しらせ) ひきこもりの私が、コロナ禍を過ごす中で思ったことや気づいたことを思いつくままに書いてみました。前回に続き第2回です。 家族との関係について 私の家族は全員「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる仕事についており、コロナ禍でも業…
(文・南 しらせ) ひきこもりの私が、コロナ禍を過ごす中で思ったことや気づいたことを思いつくままに書いてみました。 普段から緊急事態宣言中みたいな生活をしていた コロナの感染拡大で、私の住んでいる県でも5-6月に緊急事態宣言が発令された。必要以外…
(文・南 しらせ) 私は過去に障害を持った方などが就労訓練を行う「就労移行支援」という制度を利用し、福祉作業所という場所に通ったことがある。その時は結局就職できずに利用を終えたのだが、最近になってもう一度作業所を利用しようかと考えるようにな…
(文・南 しらせ) 前日の夜に録画しておいたアニメを、朝起きてから見る。そんな生活を断続的に5年ほど続けている。世間一般のひきこもりのイメージ像をそのまま反映した、典型的なひきこもりみたいだなとも思われるかもしれない。それでも構わないと、私個…
(文・南 しらせ) 毎日夕食の準備ができると、母が私の部屋のドアの向こう側から「ご飯よ」と声をかけてくる。私はこの時間を待ち遠しく思う気持ちと、息苦しく思う気持ちを胸の内に抱えながら、今日も家族の待つ食卓へ向かう。 夕食は家族みんなで 我が家…
(文・南 しらせ) 私は一日のなかで、夕方が一番嫌いだ。夕方は一日の終わりの匂いがする。一番人間が生きている匂いがする。だから嫌なのだ。 夕暮れ時、ある農家の来訪 一日の終わりが近づいている、夕方の4時。私が布団で横になっていると、家の外から物…
(文・南 しらせ) 私は大学時代に就活の不安から抑うつ状態になったことがきっかけで、ひきこもり始めた。卒業後はしばらく家にいたが、母の勧めで、不登校やひきこもりなどを支援するNPO法人に不定期ながら通い始めた。 就労移行支援事業 当時通っていたNPO…
(文・南 しらせ) 「新型コロナウイルスの影響で、東京オリンピック・パラリンピックが1年延期」 そのニュースが飛び込んできた時の私の心境は複雑だった。残念。選手たちがかわいそう。仕方ない。しかしその中で一番強く心に渦巻いていた感情。それは安堵…
(文・南 しらせ) 新型コロナウイルス拡大防止のための「緊急事態宣言」によって、みなさん自宅で生活される時間が増えていると思います。ただ自宅にいても「不安やストレスで辛い」、「どう過ごしていいか分からない」という方もいらっしゃるのではないで…
(文・南 しらせ) 図書館に本を借りに行く。それが私のひきこもり生活の、数少ない習慣だ。図書館の貸出カードを忘れないようズボンのポケットに突っ込んで、私はいつも家を出る。 ひきこもり長期化、募る焦り 私は短編小説が好きなので、図書館でよく借り…
(文・南しらせ) 声優という職業に、私が憧れを抱く理由。それは華やかな世界の裏側で、日々戦い続ける彼らのしなやかな強さであったり、何度転んでも起き上がる姿をかっこいいと思うからだ。 私が声優ファンになったわけ 私はアニメや声優が好きだ。私にと…
(文・南 しらせ) 最近はSNSや買い物など、なにかとスマホが手放せない時代だ。「スマホは命」と言っても過言じゃない。私にとっても、スマホは命だ。みんなとはちょっと違う意味でだけど。 許されるためには、すべてを手放さなければならない 大学を進路未…
(文・南 しらせ) 年末年始のTV特番。TVの傍にある録画レコーダーが、胃に映像を入れようと懸命に働いていた。彼に暴飲暴食を強いていることを申し訳なく感じつつ、一方で私はそんな彼を少しうらやましくも思うのだった。 レコーダーをうらやむ私 年末年始…
(文・南 しらせ) これは私が何度か夢に見る、就活を思わせる面接でのやりとりである。私は着慣れないスーツを着て、年配の男性社員と二人きりで話しているらしい。 どこの会社のどんな求人を受けているのかも分からない。ただ一つ分かっていることがある。…