文・ぼそっと池井多
昨年11月22日に、
「ひきこもりの親御さん、ひきこもりの子である私と喧嘩しませんか」
と呼びかける記事を出させていただいた。
冒頭に、川中島の戦いで武田信玄と上杉謙信が一騎打ちしている銅像の写真をかかげたので、私の周囲ではいつしか川中島企画と呼ばれるようになった。
おかげさまで、全国あちこちのひきこもり親の会や家族会で、川中島企画にご関心をお寄せいただき、実現の可能性についてご検討いただいた。これも、私どもひきこもり当事者メディアであるひきポスを、多くのひきこもりの親御さんたちがご愛読くださっている証であると思われ、まずは厚く御礼申し上げたい。
なかなか実施に至らなかった難しさ
いまだに現在進行形で、多くの親の会さんで川中島企画の採用を話し合っていただいているようだが、どこでもネックになっているのは、お聞きするかぎり、ほぼ同じ問題点である。すなわち、
「会員の中から、はたして誰が親の立場の代表選手として壇上にあがるか」。
これが決まらないために、先へ進まない会が多いという。
それもそうだろう。
そこがスムーズに突破できるようならば、ひきこもりをめぐる今日の日本社会の閉塞した状況はないとも考えられるからである。
ひきこもりの当事者が、すべての他のひきこもり当事者を代表できないように、ひきこもりの親御さんも、すべての親御さんを代表できるわけではない。しかし、ここはやはり誰か代表を決めていただかなくてはならない。
子がひきこもっていることは親の「恥」か
なぜ代表が決まらないか。
もともと日本には代表になりたくない人が多い、という素地もあるだろうが、このような件ではそれに輪をかけてなりたくない、という親御さんが多いことだろう。きっと多くの親御さんにとっては、自分の家の中のことを不特定多数の聴衆のいる前で話したくはないのである。「恥」なのだ。
しかし、「ひきこもりの子がいる」あるいは「子どもがいい齢をして働いてない」ということが、はたしてそれほど「恥」なのだろうか。それを考えていただきたいために、この川中島企画を提案させていただいている面もある。
こうした「恥」の意識が家族の閉鎖を招き、閉鎖が孤立を招き、孤立の行きつく先が、近年に全国各地から上がり始めた「餓死」「遺体遺棄」など、8050問題の象徴と一部メディアに称される事件群なのではないだろうか。
私自身は、そういう事件群が8050問題の象徴とされることに異論があるが、家族の孤立という現象で、そこが一般の8050問題とつながっていることは確かだと思われる。
川中島企画が、こうした状況に風穴を開ける試みである以上、一対一の対論を不特定多数の聴衆の皆さんの前でやっていただくところに意義がある。皆が、家族のことを公衆の前で語れる社会になれば、それはすでに「恥」ではなくなり、「孤立」も少なくなる。
「恥」が「恥」である根拠は、往々にして「皆がやらないから」という他愛もない理由にすぎない。
全国に先駆けて
そうこうするうちに、KHJ町田家族会でみごと代表選手を選出され、私をお呼びくださり、このたび全国に先駆けて川中島企画を実現することになった。
まず第1部は、自己紹介を兼ねて私が自分の家族の内情を暴露させていただき、つづく第2部ではKHJ町田家族会が選出した親御さんの代表選手と、子の立場である私が、壇上で一対一で対論する。
もちろん、激しく論がぶつかりあうシーンもあるかもしれない。しかし、初めから戦闘モードである必要はない。目指すものは、戦うことではなく、理解し合うことだからである。
つづく第3部は、それら第1部・第2部をお聴きいただいたあとの客席の皆さまにもご参加いただくテーブル・ディスカッションへと向かう予定である。
KHJ町田家族会 第38回月例会
「当事者から見た
ひきこもり親子のコミュニケーション不全」
講演と公開対論
【日時】2019年3月23日(土)
13:30-16:30(受付開始 13:15)
【場所】町田市民フォーラム4階 講習室
【参加費】一般 1000円
KHJ町田家族会員 500円
ひきこもり当事者 無料
【申込み / 問い合わせ】KHJ町田家族会 代表 上野
matsuha310★gmail.com (★→@)
参加者があまりに多くなりそうな場合は締め切りになるので、ご関心のある方は、ご自分の名前を添えて早めにお申し込みください。
KHJ町田家族会ホームページ(本会チラシあり)
(チラシには「申込み不要」のように書かれていますが、上記メールアドレスへ申込みは必要です。)
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