文・ぼそっと池井多(VOSOT主宰)
VOSOT(別称:チームぼそっと)では、2019年3月から東京近辺、横浜、北海道、名古屋など各地で「ひきこもり親子 公開対論」というイベントを開催してまいりました。
ひきこもりが問題としてあるために、親と子のコミュニケーションが滞っているというご家庭に、対話のきっかけを取り戻していただこうという企画です。
各地の団体にご主催いただき、弊団体VOSOTが共催というかたちで内容と進行をご提供する、という方式で開催しております。
まずは親の立場、子の立場からそれぞれご登壇いただき、お互いの言い分を語っていただきます。
それによって、何が引っかかって親子の対話がうまく行っていないのかを探っていきます。
ひと口に親の立場といっても、母親と父親では立場も意見も異なることが多いです。
そのような時は、以下の写真のように三者のお立場からご登壇いただきます。
私自身、一人のひきこもり当事者にすぎず、専門家のような上から目線のアプローチはできません。
しかし、当事者だからこそ見えてくる領域というのがあります。
ご登壇いただく方々の問題は、私自身の問題とつながっているためです。
親の言葉と、子の言葉は、接点を持たない場合が多いです。
立体交差する道路のように「ねじれの関係」になっているのです。
そういう時は、どこで両者の言葉が最も近づくかを探っていきます。
「対論」という語には、
「対話より踏みこんでもよいが、議論ほどぶつからなくてもいい」
「対話<対論<議論」
という願いをこめました。
ところが、どうも「対論」というと、「対決」や「対マン張る(*1)」といった喧嘩を連想する方がおられるようで、それを恐れてご登壇をためらう方がいらっしゃることがわかってきました。
じつは私も、このイベントを始めたころ、あえて対決のイメージを演出した部分もありました。
親の会では、当事者(子)のいないところで親が当事者の悪口をいっている。
当事者の会では、親のいないところで当事者が親の悪口をいっている。
それなら、いっそのこと両者が堂々と舞台の上でぶつかりあって、お互いの考えていることを語り合おうではありませんか。
それによって停滞した状態に風穴を開けようではありませんか。
……そういう意味合いで、川中島の古戦場に建つ武田信玄と上杉謙信の一騎打ちの銅像をイメージ画像として用いたりしていました。
下の記事などがそれに当たります。
もちろん、私としてはこの画像はユーモアのつもりであり、ほんとうに戦いを始めようなどという意図はありませんでした。
ところが、どうもひきこもり界隈では皆さんが「まじめ」であるせいか、この種のユーモアは解されず、
「ひきこもり親子公開対論では、壇上に出て親と子で喧嘩をしなくてはいけない」
という誤解が広まってしまったらしく、ご登壇をためらう方々が増えてきたのです。
「これはいけない」
ということで、このたび川中島の戦いも、公開「対論」も、戦いのイメージをそそるものはできるだけ避けて、次回2021年10月開催の第14回から
「ひきこもり親子クロストーク」
と名称を改めることにした、という次第です。
次回のテーマは「ひきこもりと父」
第14回「ひきこもり親子クロストーク」は以下のように開催する予定です。
ご関心のある方の参加お申込みをお待ちしております。
第14回 「ひきこもり親子クロストーク」
特集『ひきこもりと父』
日時:2021年10月16日(土)14:00 - 17:00
場所:練馬区光が丘区民センター 2階「集会洋室」
(都営大江戸線終点「光が丘」駅 トンネル直結)
主催:VOSOT
◆ 献金制 事前申込制
◆ マスク着用、手指消毒、間隔着席などコロナ対策にご協力いただきます。
◆ 参加お申込み
こちらからどうぞ。 https://bit.ly/3Akwrjh
「ひきこもり親子クロストーク」
ではこんなことをやっています
親の立場、子の立場から本音を語るといっても、なかなか語れない場合もあります。
また、すぐに思い出せないという方もいらっしゃいます。
そういう時は、参加者の皆さまに話しやすくなっていただくために、さまざまなワークを行なうことがあります。
もちろん、ワークに加わるのがいやな方は、パスしても、黙って見ているだけでもかまいません。
下の写真は、過去10年の生活を振り返り、皆さまにグラフにしていただくワークを行なった時のものです。
また、ご家族や世間との距離を考えるために、「親と世間の四角形」というワークを行なったところ、それぞれの家族のかたちが浮き出てきました。
2020年12月8日に、NHK Eテレ「ハートネットTV」でもVR版として取り上げていただきました。
面と向かっては言えない、でも聞きたい…
— NHKハートネット (@nhk_heart) December 6, 2020
自分の思いを親には言えない当事者と、ひきこもりの子どもの気持ちが分からない親が、バーチャル空間に集合!実の親子ではないからこそ聞ける本音の対談。
【8日(火)夜8時 Eテレ】 #ひきこもり https://t.co/JgcndLw8M5
その舞台裏です。
2021年1月に、『週刊女性』で本イベントが誌上再現されました。
著作権保護のため、一部ボカシを入れてあります。
2021年6月、中日新聞で本イベントの名古屋篇をご紹介いただきました。
ひきこもり、互いの思い語り合う 名古屋で親子公開対論:中日新聞Web
2021年10月、北海道の地方誌「北方ジャーナル」に掲載されました。
ひきこもりを問題として抱えるご家庭の親御さんは、身も心も疲労困憊していることが多いです。
心が弱った人は
高額な自立支援業者は、親子のコミュニケーション不全を突いてやってきます。
でも、ちょっと待ってください。
深く息を吸って、立ちどまって考えてみてください。
よくわからない団体にお金を払いこむよりも、まずは自分たちでできることを始めてみませんか。
当事者団体VOSOT(チームぼそっと)(*2)では、日本社会の8050問題の解消に向けて、今後とも
「ひきこもり親子クロストーク」
にバージョンアップ(*3)したこのような催しを各地で開催していきたいと考えております。
ご参加申込みの方、主催・共催していただける各地の団体の方、ご関心がありましたら、どうぞご連絡ください。
お待ちしております。
お問い合わせ先(メールアドレス)
VOSOT <vosot.just.2013@gmail.com>
「@」を半角で打ち直してください。
親御さんたちのための語註
*1. 対マン張る(たいまん・はる) 若者言葉で「一対一で喧嘩をする」の意。「マン」は英語の「man」より。和製英語ですらなく、日英混在語。
*2. VOSOT(チームぼそっと) 当事者団体です。支援業者ではありません。団体の正式名称はVOSOTで、Voice Of Survivors Of Trauma の頭文字をとったもの。しかしインターネット運営上、アルファベットを使用できないサイトがあるため「チームぼそっと」が公式の別称。
*3. バージョンアップ(和製英語: version up) 若者たちがよく使うコンピュータ用語で、「より良いものへ改訂する」ことを指す。同種の表現としては、グレードアップ、アップデートなど。英語では to upgrade the version 。
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