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「中高年ひきこもりについての内閣府調査」に対する、一当事者の一意見。「『中高年ひきこもりは61万人』に騙されるな」

 

(文:Longrow)
(画像:pixabay)

 

最近のニュースをチェックした方、そしてweb版ひきポスをお読みの多くの方は、きっとご存じだろう。
中高年ひきこもりに関する、内閣府の調査が公表された。
その調査報告書は下記リンク先にある。関心のある方は第1章の「調査の概要」だけでもお読みになってはいかがだろうか。

生活状況に関する調査(全文)


本記事はひきポスの中でも最も長い記事の1つで、加えて
最後まで硬質な文章が続きます。
結論のみ読みたい方
第1章をさらっと読んだ後、目次から第4章に飛び、第7章までを読む」
「まだいけるなと感じたら、補足Bも読む」

ことをおすすめします。


1.「中高年ひきこもり61万人」「全体で100万人超」「8050問題」というパワーワード


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調査書の内容は200ページを超える

 


(1)内閣府調査が推計した「中高年ひきこもりの人数」



2019年の3月末、内閣府が「生活状況に関する調査」と題する調査結果を発表した。
「生活状況の調査」とあるが、一体誰の生活を調べたのだろうか。

調べたのは、「40歳以上でひきこもり状態にある人達(中高年ひきこもり)」だ。

この調査から推測されたものの1つに、中高年ひきこもりの人数がある。
この数字にインパクトがあったためか、マスメディアは一斉に報道した。

「中高年ひきこもりは61万人と推計。若者のひきこもりより多いと思われる」
「ひきこもりは全体で100万人以上か」

これらの数字は、世間の人々にとって十分にインパクトのある数字だったろう。

以下、そのようなマスメディアの記事をいくつか紹介しよう。
関心のある方は、各報道内容を読み比べてみるといいかもしれない。


なお、この「61万」等の数字は、内閣府が定めた基準によって算出されたものだ。
したがって、この数字が100%正確であるとは限らない。
※61万人、100万人以上、等々の人数の算出方法については、「生活状況に関する調査 概要」の2ページ目を参照。なお、中高年ひきこもり調査と、若者ひきこもり調査とでは、調査年度が異なる。

しかし。
少なく見積もっても100万人前後がひきこもりであること、中高年ひきこもりの数が若者ひきこもりの数を上回るであろうこと。
調査結果によるこれらの推測は、重大なものとして受け止められるべきだろう。



(2)ひきこもりの高齢化を表す「8050問題」



近年、「8050問題」という言葉が聞かれるようになった。

この「8050」とは、
「高齢の親(80歳)と、その子である中高年ひきこもり(50歳)」
を表現した言葉である。

この言葉と共に、ひきこもりの高齢化や、その家庭の地域からの孤立、これらが大きな社会問題であるという認識も広まってきた。

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「8050問題」に関係する、何とも悲しくセンセーショナルな事件を1つ紹介しよう。


タイトルだけでも、その深刻な雰囲気が伝わってくる。

この、ひきこもり高齢化を表す言葉「8050問題」。
そして内閣府調査で示された「中高年61万人、全体100万人」というひきこもりの数。
もちろん、彼らに対する支援体制を、官民一体となって構築していくべきだろう。


2.内閣府調査書をどう読むか


先の第1章では、内閣府が何を調査したか、調査結果から推測される事柄、各報道機関での扱い、等々について述べた。


(1)※この第2章は準備です。



私は第1章のような内容を伝えたいというわけでは、実はない。
私が語りたいことは第4章以降にある。

しかしより正確に伝えるために、内閣府調査の調査書について少し説明をしたい…と私は考えた。

そこで、この第2章、次の第3章では、主に内閣府調査のつくりについて説明をしていく。またそのつくりに対する私の考えも少し述べていきたいと思う。

したがってこの章は準備をする場所で、本筋から外れることもあるだろう。
面倒なら、第4章まで飛ばしていただいて構わない。

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(2)内閣府調査はどのように行われたか?



内閣府調査は、いわゆる統計調査である。データを取り、分析する調査。
これらの調査は、だいたいの場合以下のように進行し、調査結果を出す。

(A)まず、調査目的を決める

(B)次に、調査目的に沿った調査を行う上で必要な要素を考える。また、必要な道具を用意する

(C)(B)で用意したものをもとに調査を行う。本調査では、5000人に配布した調査票(質問票)がそれにあたるだろう。

(D)内閣府調査の場合。(C)で集まった数千の調査票に統計の手法を使い、数千の調査票から読み取れる数字(割合など)や、調査票内の項目間の関係を明らかにする。

(E)(D)で得られた数字や関係を検討し、それらにどのような意味があるかを検討する。そして意味がある・妥当性があると考えられる結果を、最終的に公表する。


本調査はこの「(A)~(E)」の順番通りに行われた。
どうでもいいことのように見えて、実は、この「順番通り」は大変重要なことだ。
次節(3)ではこの点に注意し、内閣府調査の読み方について私の考えを述べたい。



(3)内閣府調査をどこから読もう?①



繰り返しになるが、内閣府調査は、(A)~(E)という順番通りに行われた。
ということは、本調査は一歩間違うと、以下のような誤りの連鎖を起こすことになる。

誤りの連鎖
「(A)に誤りがあれば、(B)以下は全て誤りを含んだ内容になる」
「(A)が正しくとも、(B)に誤りがあれば、(C)以下は全て誤りを含んだ内容になる」
「(以下略)」


(A)から順々に連鎖していくので、本調査では
「調査目的」や「ひきこもりの定義」といった、調査の前提に近いものほど重要
になってくる。

もちろん、どのステップも重要だ。
しかし(A)のような大前提が破綻していれば、それ以降の(B)(C)(D)(E)は全て破綻する。
被害は甚大だ。
※もちろん、本調査はそんなつくりになっていないだろう。

したがって私は、ざっと読みをしないでしっかり読むのであれば、
・(A)から(E)へと順番通りに読み進める。
・各ステップで、調査の主張の妥当性・意味・狙いを丁寧に調べる
という順に読んでいくことは重要ではないか、と考える。

たとえば誰かが調査報告書を手に取って、(C)の段階から読み始めたとしよう。
そして、万が一調査の(A)や(B)に誤りがあったとすれば…
その人は誤ったデータばかりを読み取ってしまうことにもなりかねない。



(4)内閣府調査をどこから読もう?②



内閣府調査の大前提は、当然だが、調査目的である。
したがって、この緑枠で囲んだ文章のようなことに、なる。

「調査のどのステップも、必ず目的にしたがって行われる


つまり前節(3)の(B)以降である、
調査票や統計手法や調査結果の全ては、調査目的という1つの思想で貫かれている。

ということは、本調査を読み解く際には、
「常に調査目的を意識しながら、調査書を読む」
ことがかなり重要になってくる、と言えるだろう。

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この調査は何を目的としてどこに向かうか?


余談だが、このように読んでいくと、時にはデータに込められた調査者の意図を見抜くこともできるかもしれない。
少なくとも、データを鵜呑みにしてしまうことは減るだろう。


3.内閣府調査の目的は、調査書のどこに表れているか?


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調査は、漫然とではなく、よく狙いを定めてから行う

 


(1)内閣府調査の目的はここに表れている



この第3章も前置き的なものなので、面倒なら飛ばしていただいて構わない。

さて、ご存じの通り、本調査で調べたのは「中高年ひきこもりの生活状況」だ。

では、内閣府は何の目的で、「中高年ひきこもりの生活状況」を調べているのか。

2章で述べた通り、この目的が最優先に読むべき箇所で、最重要箇所の1つである。
なお本調査の目的を記した文章は、下記リンク先の3ページ目にある。
関心をお持ちの方はお読みいただきたい。A4の1枚程度の内容だ。

Ⅰ 調査の概要

ここに書かれている内閣府調査の「調査目的」から、その核心部分だろうと私が判断した部分を2か所抜き出した。
緑枠の中をお読みいただきたい。


(1行目~2行目)
『社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者に対する支援を効果的に推進するためには、これらの者についての調査が不可欠であり、(以下略)』

(7行目~終わり)
『(略)ひきこもりの長期化傾向が明らかになった。本調査では、そのようなひきこもりの長期化傾向を踏まえ、全国の(略)満40歳から64歳までの者およびその同居者を対象に、(略)状況等について把握することで、子供・若者がひきこもり状態となることを防ぐために必要な施策や、ひきこもりの長期化を防ぐための適切な支援を検討するための基礎データを得ることを目的とする。』


なぜ重要と判断したか?

まず1つ目の(1行目~2行目)について。
これは調査目的の冒頭で述べられていることで、主に「子供・若者」に関する内容だ。省略部分を含めると、この子供・若者に関する記述に『目的』の前半を丸々割いている。したがって、この箇所は内閣府にとって重要な主張なのだろう。

続いて2つ目の(7行目~終わり)について。
この部分では、まず調査対象から何を得るかを明言している。
そして何より、「目的とする。」というダイレクトな言葉で締めくくっている。
したがってこの部分がまさに目的そのもの、核心部であることは疑いないだろう。

より強い言葉を使うなら、
私は、本調査の目的はこの2か所にこそ表れていると確信する。


4.内閣府調査は、若者のための調査!?

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「中高年ひきこもりについての」内閣府調査、ではなかった?


(1)調査結果は、誰に還元されるか?



調査目的の文章中には、「子供・若者」という言葉が何回も現れている。

例えば

子供・若者がひきこもり状態となることを防ぐために必要な施策や、(略)を得ることを目的とする』

など、子供・若者支援を念頭に置いているだろうことは容易に読み取ることが可能だ。

では中高年についてはどのような扱いがなされているか?
私にとって最も印象的だった一文は、ここだ。

『(略)40歳以上でひきこもり状態にある者の状況等について把握することで、子供・若者がひきこもり状態となることを防ぐために必要な施策や、ひきこもりの長期化を防ぐための適切な支援を検討するための基礎データを得ることを目的とする。』


つまり…
「中高年ひきこもりの状況を調査することで、『子供・若者に対する施策や、ひきこもり長期化を防ぐための適切な支援』に活かす」?


この調査は、中高年ひきこもりの支援を考えるための調査では、ない!?

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えっ?


このツッコミに対して、こういう指摘もあるかもしれない。

Aさん
「確かに調査目的は若者がメインだった。でも調査をやって、初めて『中高年61万人』が明らかになった。これには内閣府も驚いているんじゃないかな。だからきっと、これから中高年ひきこもり支援が検討されるんだろう。」


Bさん
「『ひきこもり長期化を防ぐ支援の検討』と書いてあるから、そこに中高年ひきこもりを対象とした支援が含まれているんじゃないの?」


しかし私は、どうやらこの指摘のようなハッピーな事態は起こらないようだ、と感じている。なぜそう考えるか、それは次節(2)以降で述べていきたい。



(2)ひきこもり長期化の防止は、何のために行われるか
 ①「8050」が生まれた理由は何か



第1章で、「8050問題」がクローズアップされていることを述べた。
ひきこもりとその親の高齢化を表現した言葉だ。

では、なぜひきこもりの高齢化が起こってきたのか?
1つの仮説として、このようなことが指摘されている。

仮説
「若年層のひきこもりが長期化し、彼らはそのまま40歳となった。つまり、若年層ひきこもりが中高年ひきこもりへとスライド(移行)した」


したがって、内閣府がこの仮説を念頭に置いているならば、

内閣府は「若者が、『8050』へとスライドすることを防ぐ」という視点を中心に据え、『長期化を防ぐ』という言葉を使っているのだ

という解釈にも、ある程度の妥当性はあるだろうと考える。

※「若者が中高年へとスライド」に関する(多分に主観的な)補足を、本記事の最後「補足A」に記した。



(3)ひきこもり長期化の防止は、何のために行われるか
 ②国や自治体のひきこもり支援が目指すところは何か



仮に『長期化を防ぐ』の主目的が、「若者の、中高年ひきこもりへのスライド防止」であるなら、なぜスライドを防止する必要があるのか?
国と自治体のひきこもり支援体制から、スライド防止が必要だという理由を捉えてみたい。

まず、ひきこもり支援を担当する国の機関は厚生労働省である。
その厚労省のひきこもり支援策は、以下のページに記されている。
ひきこもり対策推進事業(厚生労働省)

ここで、上記リンク先の画像『市町村でのひきこもり支援の強化の全体像』を注意深く見てみると、
「ひきこもり支援の出口」がほぼ「就労・就学」に限定されている
ということが分かる。

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さらに、多くの自治体では、ひきこもり支援の利用に年齢制限を設けている
※東京都ですら、今年になってようやくひきこもり支援の年齢撤廃を決定したほどだ(以前は『おおむね34歳』を上限としていた)。

このような現状を見る限り、
『長期化を防ぐ』の第一の対象は、「労働人口として長年の活躍が期待される、若者のひきこもり」になる
と考えるのが妥当だろう、と私は感じる。

以上(1)~(3)を総合したうえで、
私は本調査が
「中高年支援より、むしろ若年層への支援体制を構築すること」に重きを置いている
という判断をした。

※本章で述べておきたいこと、補足しておきたいこと、はまだ残っている。
それらの一部について、本記事の最後「補足B」にまとめた。


5.『中高年ひきこもりは61万人』に騙されるな

 


(1)センセーショナルな言葉だけに踊らされないでほしい




マスメディアが報じたように、内閣府調査からは、中高年ひきこもりが61万人いるだろうと推測できることが分かった。

このような数字を国が初めて示したという点で、この調査に大きな意義があることには間違いないと言えるだろう。

だが今一度、この調査の目的に立ち返りたい。
あくまでこの調査の目的は「子供・青年に対する支援」に重きを置いている。

この調査を行ったのは国であるから、この調査目的を真に受けるなら
「国は、現時点では、中高年ひきこもりに対する支援に重きを置いていない」
という悲しい結論に達することになる。

※本記事では数回、「調査目的を真に受ける」という言葉が登場する。この言葉を用いる意図については、最後の「補足B」をお読みいただきたい。


私は本記事のタイトルにあえて「『中高年ひきこもりは61万人』に騙されるな」という言葉を加えた。

それは、


本調査の根幹部分である目的をスルーして、

調査結果の1つに過ぎない『100万人超』『61万人』『8050問題』などの、
センセーショナルな言葉だけに踊らされないでほしい、

という願いを込めたからだ。

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鮮やかなものは、すぐ目に飛び込んでくる


この数字だけを見続けてしまえば、

「中高年ひきこもりは若者ひきこもり以上に存在すると考えられるのに、本調査の目的で明確に言及されているのは、若者に対する支援のみである」

という1つの事実を見落とすことになってしまうだろう。

※本章の赤字部分については補足しておきたいことがいくつかある。
それらの一部について、本記事の最後「補足B」にまとめた。


6.マスメディアは何を伝えるのか?

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(1)マスメディアはこれから退いていく?




昨年あたりから、マスメディアがひきこもりに注目する頻度が高まったと感じる。

彼らはどういう意図をもって動いているか?
マスメディアに直接関係のない私には分からない。
だが、この内閣府調査という一大ニュースに向かって動いていただろうことは間違いないと感じている
※出典を明らかにしない卑怯な言い方になるが、メディア関係者からその通りだと聞いたこともある。

そして調査結果が公表された後、マスメディアは、ひきこもりから退いていくかもしれない。

内閣府調査を目標に取材していたとするなら…彼らは
「目標がなくなった今、ひきこもりには以前ほどのニュースバリューがない」
と考えているかもしれない。



(2)ニュースバリューがなくとも、「調査目的」「国の支援体制」に触れてほしい



ここは私の主観だが、マスメディアの多くは内閣府調査の結果のみに興味を持っているように感じる。

1章で紹介した記事をご覧になっただろうか。
どの記事も調査目的には触れず、「61万人」、「100万人」、「8050問題」、といった分かりやすい結果や言葉のみを取り上げていた。

彼らを批判したいわけではない。
分かりやすい言葉を使えば、調査の存在が広く伝わる。
調査書を読み込んだ専門家の言葉を待ち、それを報道することもあるかもしれない。
いずれも重要なことだろう。

しかし単に

「内閣府調査が行われ、中高年ひきこもりが61万人いると推計された。近年では『8050問題』など、ひきこもりの高齢化が問題視されており、支援体制の構築が待たれる。」

といった報道が行われたとするならば、視聴者の多くは

「内閣府調査は中高年ひきこもり支援のための調査だったのか。彼らへの支援はきちんと整備されていくんだ、良かったね」

…のような印象を持つのではないだろうか?

しかし本調査目的を真に受けるならば、繰り返しになるが、現時点では国は中高年ひきこもりの支援に重点を置いていない。

その国の姿勢を伝えるためには、表面的な数字のみならず、本調査の意図、調査の活かし方についての論考、数字の検証と解釈、等々を語ることも必要だろう。
ニュースバリューはなく、かつ読むのが面倒な内容かもしれないが、表面的な数字を超えた論考に紙面や時間を割いてほしい。


7.「内閣府調査出ました!終わり!」にしてはならない

先に述べたような関心の低下が、マスメディアのみならず、国民全体にも起こるとするならば、当然、ひきこもりが社会で取り上げられる機会は少なくなる。

仮にそのような事態が起これば、この日本に厳然として存在する
「ひきこもり支援は、青年層の就労就学がコア」
という構造に対する社会の無関心が、固定化されることにも繋がりかねない。

これは社会から
「働かざる者食うべからず」「いい年して、自己責任でしょ」
と言われ続けるようなものだろう。

ご存じの通り、これらはひきこもりを最も苦しめてきた声の1つだ。

その声が存在し続けることは、あってはならない。

だから、この内閣府調査をもって、
「調査結果出ました!ひきこもりの一大ニュースが片付きました!はい終わり!」
とはならないでほしい。絶対に。

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内閣府調査出た!幕引き!…で、いいわけない


そのためにも、各団体や調査機関や行政が論をつきつけあい、内閣府調査も含めてあーだこーだと議論を重ね、

「どうすれば、中高年ひきこもりへの支援の流れができるか」
「中高年ひきこもりへの適切な支援とはどのようなものか」

という問いと回答を作り、ブラッシュアップし続けていく流れができてほしい。

そして特に、ひきこもり当事者には大変期待している。
今現在ひきこもっている者の声ほど、響きの強い声はない。
※私はどうなのだろうか

その声はなかなか表に現れるものではないが、当事者の声を集めることで、被支援者たる彼ら自身の提案を、この日本社会に置いてほしい。


最後に2つ


本記事はいくつかの資料を参考にしているとはいえ、基本的には調査報告書の1ページ、「Ⅰ 調査の概要」の「1 調査目的」を主題にしたものだ。
本記事は「調査目的」という1つの側面から内閣府調査を眺めたものに過ぎない。

そして本調査書はまだ200ページも残っている。
今後のひきこもり支援を考えるためにも、この調査書が隅々まで読まれ、徹底的に議論されつくし、新たなひきこもり支援像を作る一歩となることを願う。
ただ「国が調査結果を出した!」では、あまりにもったいない。
この機会を活かさない手はない。



本記事は一見すると私1人が書いたものですが、ではこれらの考えが私1人によって生み出されたものであるかというと、決してそうではありません。
私がひきこもりの真っただ中から出て以降、この5年半の間に、様々な方から色々なことを教えていただきました。皆さまに感謝いたします。

またそのため、1点、大変気がかりなところがあります。
本記事の一部について「それは私のオリジナルの考えであり、あなたの意見であるかのように書かれているのは心外だ」とお感じになられたとしたら、お伝えください。記事の変更や削除など、必要な対応を行います。

また本記事中に表れた私の考えには、浅学故、論理の飛躍・偏った見方・無理解に基づく記述、などが含まれてしまっていることも想像できます。
それによってあなたが不快感を感じたとしたなら、心からお詫びを申し上げます。



補足A. 「若者が中高年ひきこもりにスライド」に関する(多分に主観的な)補足


・出典を明確にできず大変申し訳ないが、各年代における若年ひきこもり・中高年ひきこもりの人口を検討した結果、確かにこの「スライド」の傾向がみられたという調査もあったように思う。

・この「スライドの傾向」については、本調査結果ならびに他機関の調査結果を読み込めば、数字をもって妥当性を検討できた可能性がある。私はそれを怠った。
言い訳をするなら…まず、本調査では長期化傾向の存在を明言しており、かつ子供・若者に対する施策を考えることを重要視している。したがって内閣府は、若者のひきこもり長期化を特に懸念していると捉えることが可能である。ゆえに、「スライドの傾向は確かに存在する」と決め打ちすることに、一定の説得力はあるだろう。


補足B. 内閣府調査は本当に「中高年ひきこもり支援」を目的にしなかったのか?

 


(1)「今回の調査前は中高年が多いと思わなかったから、調査目的に中高年支援を含めなかったのだろう。」という推測に妥当性はあるか?




この推測をより詳しく書くと、このようになるだろうか。

「中高年ひきこもりも、若者のひきこもりが多いと思っていた。だから、若者支援を目的とした調査を行った。だが結果を見ると、むしろ中高年の方が多かった。これは驚きの結果で、初めて分かったことだ。今後、国はこの結果を受けて、中高年に対するさらなる調査や支援を進めていくだろう」

なるほど、この捉え方には一理ある。
しかし本調査目的には、

『平成21年度と平成27年度に(略)調査を実施したところ、ひきこもりの長期化傾向が明らかとなった。』
『本調査では、そのようなひきこもりの長期化傾向を踏まえ、(略)40歳以上でひきこもり状態にある者の状況等について把握することで、(略)』

という記述が存在するため、中高年ひきこもりの数は決して少なくないということを、内閣府は把握できていたと解釈できる。

付け加えるならば本調査が行われたのは平成30年12月であり、内閣府の言う『長期化傾向』が判明してから9年が経過している。もはや「少なくない」という表現では済まされないだろう、そう考えることは全く不自然ではない。

となればやはり、調査目的で「中高年に対する支援」に言及せず、一方で「子供・若者に対する支援」には明確に言及したことに対して、疑問が残ると言わざるを得ない。



(2)そもそも中高年ひきこもりを調査するための法律がない?




本調査目的を読めば分かる通り、本調査は「子ども・若者育成支援推進法」の第17条に基づくものでもある。乱暴に言えば、「若者が社会生活を円滑に営むことができなくなったら、原因究明、支援方法など必要なことを調査してください」というものだ。

この法律のもとで調査を行う以上、若者支援が目的とされることは当然である。法律に従わないわけにはいかないから、これは仕方がない。

いや、仕方がないでいいのか?
そもそもの疑問として、この法律のみに基づく必要があったのか。
ひきこもり支援という枠組みで考えれば、「若者支援推進」と「中高年支援」は対立するものではない。「中高年支援」に適した法律にも基づいて行えば良かったはずだ。

ではなぜそれが行われなかったか。
私なりの結論は、「中高年ひきこもり支援に適した法律がそもそも存在しないから、若者支援推進でやらざるを得なかった」ということになる。
次節でもう少し説明を加えよう。



(3)中高年ひきこもりに適用されるのは「生活困窮者自立支援法」




この辺りに考察を加えると非常に長くなるが、一つだけ述べておきたい。
中高年のひきこもりに対しては、「生活困窮者自立支援法」を軸とした支援が適用される(改めて、厚労省の「ひきこもり対策推進事業」を読んでほしい)。

ご存じの通り、この法律はひきこもりのみを対象としたものではない。
したがって、ひきこもり固有の特徴についての考慮がされているわけでもない。

またこの法律の条文(※PDFファイル)を一読した限りでは、あくまで「支援をどう行うか」に重点が置かれ、被支援者の調査・研究についてはほぼ考慮されていないと感じる。

以上(1)~(3)のような事情で、本調査目的に「中高年ひきこもり支援」を置けなかったのだろうと私は考えている。



(4)内閣府が、それでも中高年ひきこもりを調べた理由の、とても勝手な推測




勝手な推測(憶測?)だが、そんなに間違っている気はしない…

ひきこもり問題、特に近年では中高年ひきこもりに関する声を無視できなくなった。ひきこもり当事者・経験者、家族、支援者、等々が声をあげはじめた。また社会もひきこもり問題を重要視するようになった。
そこで重い腰をあげ、中高年ひきこもりへの対応を検討することにした。しかし対応を検討するには、まず実態調査が必要になる。そこで本調査が開始された。
(※しかし、中高年ひきこもり調査を行うための、上手い根拠となる法がなかった。そこで、若者対象の調査に中高年ひきこもりを何とか乗っけて、間接的に中高年ひきこもりの調査を行った。)

※このような法整備も含め、中高年ひきこもりへの支援体制、さらには年齢で分けないひきこもり全体を支援する体制、が構築されることを望む。