文・写真 中村秀治
朝7時を過ぎると自宅の前の通学路から登校する小学生達の声が聞こえ出す。
談笑したりアニメかなにかの必殺技を叫ぶ子もいれば、単に奇声を発する子もいる。
小学生の列は絶え間なく続いて、笑い声とともに歩道の側溝の石蓋を重たい鍵盤を叩くようにガタゴトと踏み鳴らして歩いていく。
昼夜逆転していなければ、平日の朝はその音と声に僕は目覚める。
そしていつものように水の入った電気ケトルのスイッチを押して歯を磨く。
朝食に食パンを食べてインスタントコーヒーを飲む。
こうして自分のいつもの一日が始まる。
家ですることは、基本的に決まりきっている。
読書、テレビを見るかゲーム、ネットを見る。イラスト、漫画を描くか…。基本的にはこれだ。
まず読書について
自分は他人よりも本は読まないほうだと思う。それでも読書はする。
だが積ん読も多い。
雑学、歴史書が好きで漫画多し。小説はほぼ読まない。(去年「殺戮にいたる病」を読んでみたが面白かった)
たまに図書館で借りることもあるが、借りる本を選んでいる時がテンションのピークだったりする。
またタブレットで電子書籍も読んでいる。当初は電子書籍を利用することにかなりの抵抗があったが、使い続けると慣れてしまった。電子書籍のメリットといえば、かさ張らずに置くスペースに悩むことがない。また本を傷めたり汚したりする心配もせずに読めるし、半額セールもあったりして結構お得だと思う。
以前から若者の活字離れと謳われているが、自分はそうは思わない。むしろスマホの普及とアプリの豊富さで活字がより身近になってるような気がする。
※本に関するの詳しい内容については、また別の回で書きたい。
テレビ
ふとした時につける。ローカル局などを見る。
ゲーム
近年はスマホゲームが人気だが、自分はスマホゲームは一切やらない。アプリも入れてない。ハマると抜け出すことができないのがわかっているからだ。なので据え置きゲームをしている。
※ゲームについての内容はまた別の回で触れたい。
漫画、イラストを描く
イラストはらくがき帳か液晶タブレット(液タブ)などで落書き程度に普段から描いており、気分が乗った時には色を塗ったりしている。その絵をSNSにアップしたりもする。
自分が漫画を描いている理由は、昔から漫画家志望だからである。
出版社に投稿もしていたが、最近はパッとしない。漫画誌の他にWeb漫画アプリも多くあるので、今後はそこに投稿しようかと考えている。
以前より漫画のアシスタントをやってみたかったが、アシスタントは上京しないと雇ってもらえないと思い自分には無理だと諦めていた。
だがしかし、デジタル化が進んだ現在では必ずしも漫画家の仕事場にスタッフが一斉に集まる必要はなく、通話などで先生の指示を受けて在宅で作画をしてネット上で原稿データのやり取りが可能になった。
昨年末、SNSで在宅の漫画アシスタント業務が募集してあったので僕は応募した。
漫画アシスタントの専用サイトもあるくらいだ。僕はお試し期間ということで採用してもらえた。
アシスタント業務の雇用形態は様々で不定期依頼(ヘルプアシ)、契約期間もあれば週3日のみなどもある。給料も時給であるか、または1ページ、あるいは1コマ描いての歩合制もある。
地方にいながらにして漫画家のお仕事を手伝うのだ。漫画が描くのが好きで、地方住まいのひきこもりの自分には合ってる気がする。
またコロナ禍により漫画業界の在宅アシスタントのニーズは、より高まっているのかもしれない。
ネット
YouTubeやネットニュースなどを見る。
あとは定額制(いわゆるサブスク)で映画などを観たりする。
家事
それ以外のことは、家のこともする。
家事は料理などの炊事、お風呂掃除、食器洗いなど。
2、3日に一度、近所のスーパーに買い物に行く。
地元スーパーのポイントカード持ってるとやはりお得である。
今や出掛けにマスク着用は必須である。人の顔を見るのも自分の顔を見られるのも億劫なので特にマスク生活に不便は感じない。
日常会話について
ひきこもりなので家族以外の人とは会って話をすることはあまりない。
フリースペース関連の人と話し合いやイベントなどで会うこともあるが、最近はコロナ禍で集まることが少なくなっている。
あとはSNSで知り合った人と作業通話をする。作業通話というのは、漫画など描きながら通話することだ。絵を描きながら話すのは難しそうに感じてしまうが、そこは十人十色である。苦手な人もいるが、自分は集中できたりする。
雑記、今後このままでいいのか…
昨年末に、自分の描いたイラストを佐世保の地元紙「ライフさせぼ99」の表紙に使いたいとのことで近所のファミレスで取材を受けた。
編集長に「中村さんのプロフィールというか、肩書きはどう載せますか?」と聞かれたので「…あ、『ひきこもり』で良いです」と言った。
以前は『ひきこもり』と自分自身で言うのも他人に名指しされるのも嫌だったが、今はそんなこともない。
ひきこもりは本当のことであり生き方なので仕方ない。おそらくこれからもひきこもりだろう。もちろん誇るつもりはないが、ひきこもりだからといって今のところ何もできないわけではないので、治すことも脱却する必要もない。
取材を受けた数日後に「ライフさせぼ99」が発行された。
配布される日に地元スーパーに行き、買い物後にフリーペーパーラックから「ライフさせぼ99」を手にとった。
表紙の絵を描いた人物として、自分の紹介欄には『ひきこもりクリエイター』と書かれていた。
その肩書きにしっくりきた。
漫画、動画、イラスト、小説、ブログなど誰でも自分の作品をネットで自由に発表できる、総クリエイターと言われる時代だ。ひきこもりも社会に発信できるクリエイターなのだ。
自分にとって『外で働く』ことはパワハラや人間関係で命を削るような感覚だった。
それに比べれば家の中で過ごすのは自分の理想の生き方のような気がする。
自分の生活が劇的に変わることはない。
他人を見返そうとか一発逆転を狙おうとしないほうがいい。
これでいい。
<プロフィール>
中村秀治(なかむら・しゅうじ)
1986年長崎県出身。地方在住のひきこもり。小学6年生から不登校になる。
東日本大震災後、被災地でのボランティア体験を私小説として執筆。
2018年に「おーい中村くん ~ひきこもりのボランティア体験記~」を出版。
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