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(シリーズ作業所) 第3回 B型作業所に通いだしてからの日々

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(文・南 しらせ)

私が就労継続支援B型の利用を開始して半年ほどが経つ。今回は利用までの流れや、実際に利用を初めてからの感想などを書いてみたいと思う。

「就労継続支援B型」とはなにか?

就労継続支援B型(以下B型)は障害者などを対象にした国の公的な制度だ。私が作業所でもらった書類には、B型事業は「就労や生産活動の機会を提供するとともに、就労に必要な知識・技能が高まった者に対して一般就労等に向けて支援することを目的とする」とある。

もう少し具体的に言うと、障害などが理由で現時点では一般就労が難しい人が作業所と呼ばれる場所で作業(一般でいう仕事)を行って工賃(給料)を得たり、レクリエーション活動などへの参加を通して、一般就職などに向けて練習していく感じだ。

私は以前「就労移行支援」というB型とは別の枠組みで作業所に通った経験がある(※当時のことは別の記事に書いている)。その後数年の空白期間を経て、今回はB型枠で、以前とは違う作業所に通い始めた。「何かやりたいけど、家に居てもできることがないな」という気持ちが強くなり、作業所の再利用を決めた。

昨年末から作業所に見学に行ったり、サービスを受けるために自治体や事業所との手続き・契約を地道に行って、今年の春から本利用になった。制度がややこしいことや、色々な事務手続きが必要なので心身への負担も大きく、障害福祉サービスを始めるまでがまず大変という印象だった(手続きのことも機会があれば詳しく書きたい)。

B型に通い始めてからの日々

現在私は食品製造などを行うB型作業所に通っている。作業の内容は日によって様々だが、袋詰めのような内職作業や、簡単な菓子製造作業を行っている。作業にはノルマがないので、自分のペースで進められるのがいいところだ。

作業へは週に1日、1時間のペースで参加している。今の体調を考えるとこの頻度が限界なので、徐々に作業時間を増やしていこうという話になった。実際に作業を始めてみると、やはり1時間は短いので出来る作業が限られたり、作業の手順を思えたつもりでも1週間立つと忘れてしまったりと、思うように経験が積めないのが歯がゆい。

今の作業所の工賃は時給300円ほどで、私の場合は作業にあまり入れていないので、月収(月の工賃)は千数百円ほどだ。当然これだけでは生活できず、障害年金頼みの状態は作業所を利用する前と変わらない。主治医の先生からは「工賃よりも、まずは活動時間を増やすことが大事だよ」と言われており、私もそれに納得しているので、今は工賃のことはあまり考えないようにしている。

これからの目標

B型利用は私にとって大きな一歩だが、こうした超短時間利用をしているため、B型に通いだしても正直以前のひきこもり状態から脱出できたという実感はあまりない。

今後の私の作業所での目標は、作業時間を増やすことだ。そこで作業所のスタッフさんたちとも相談して、この秋から通所日を週2日に増やすことにした。体力的にかなりしんどくなると思うので不安もあるが、それでもやってみようと決めた。

最近読んだ小説に「前に進むのがカヌー、後ろに進むのがボート」という一節があり、とても印象的だった。私の日常はカヌーみたいに前進するばかりではなく、ボートのように後退することも多い。でも今は進む方向のことはあまり考えず、とりあえず今いる場所からちょっとでも動いてみようとすることが大切なのかなと思っている。

それから先ほど工賃のことはあまり考えないと書いたが、内心ではもう少し上がってくれたらうれしいなとも思っている。

 

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執筆者 南 しらせ

自閉スペクトラム症などが原因で、子ども時代から人間関係に難しさを感じ、中学校ではいじめや不登校を経験。現在はB型作業所に通所中(ひきこもり生活は6年目)。

 

 

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