ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

『ひきポス』は、ひきこもり当事者、経験者の声を発信する情報発信メディア。ひきこもりや、生きづらさ問題を当事者目線で取り上げます。当事者、経験者、ご家族、支援者の方々へ、生きるヒントになるような記事をお届けしていきます。

【警句集】ひきこもり断想「耳とマイノリティ」

今回は、ひきこもり経験者による警句(けいく)集をお届けします。短い言葉で刺激的なイメージを起こす手法は、「箴言(しんげん)」や「アフォリズム」とも言われます。独特な一文をお楽しみください。

 

f:id:kikui_y:20211121112204j:plain

 

 

自室……自己と社会の最小公倍数。

 

   ・

 

マイノリティは語る。いつか語らなくてもよいという平凡に至るために。

 

   ・

 

意図せず集まった三本の矢は、三者が各様に意図しても折れない。

 

   ・

 

誰からも聞かれることのない、サイレント・マイノリティの唱和。

 

   ・

 

「当事者が声を上げ始めた」という変化ではなく、社会が聞く耳を持つようになったところに変化がある。自分たちの耳が変わったときに、人々は相手の声が変わったという。

 

   ・

 

常識……最大多数の最大病理。

 

   ・

 

協調性をもちながら独創性をもち、平均的でありながら個性的であり、ローカルでありながらグローバルであること。——これらを毎日同時に達成することが凡人の最低条件である。

 

   ・

 

外国には「二つのイスのあいだに座る」ということわざがある。私はすべてのイスに座ろうとした。親の期待のイスにも、学生として最低限のイスにも、世間から望まれるイスにも。結果、私は地べたで汚れている。

 

   ・

 

現代の民話では、おばあさんが山へ芝刈りに行き、おじいさんが川へ洗濯に行く。そして桃太郎は鬼と協議せねばならない。

 

   ・

 

世間は人々に、「命を粗末にしてはならない」と説く。しかしその世間が人々の命を粗末にしている。

 

   ・

 

就職活動においては、自開症に罹(かか)ることが推奨されている。

 

   ・

 

感嘆符を擬人化したような人。

 

   ・

 

失敗より多くを失うのだとしても、経済的な成功が求められている。

 

   ・

 

自己啓発本がいうように、すべての人々が本当に「ありのまま」で「自分らしく」いたなら、国家は幸福に破綻する。

 

   ・

 

都市に適応した人々は、あらゆる街角を室内にする才能がある。

 

   ・

 

私は僻地(へきち)にした東京を暮らしている。

 

   ・

 

都市は休息の手段をも急かす。

 

   ・

 

ロボット生産工場の人間たちは、機械の親となるにふさわしい愚直さを持っている。

 

   ・

 

人生は理不尽である。その主因が自己であっても。

 

   ・

 

ある短いドラマ――「僕は彼が好き」。

 

   ・

 

同性愛者は慢性的な失恋状態におちいっている。個人的な恋が成就しても、社会的な恋に挫折する。

 

   ・

 

人類に孤独という言葉がなかったころの孤独。

 

   ・

 

藝術家の孤独に相殺される、鑑賞者の孤独。

 

   ・

 

ある創造——狂気の代行。

 

   ・

 

飼いならされていない、獰猛な思考。

 

   ・

 

私の身体は私の野党だ。

 

   ・

 

私は自分にも共感できない。

 

   ・

 

自身に追いつくことのできない自己が走る、最小空間でのアキレスと亀。

 

   ・

 

私は健康にも病気にも向いていない。

 

   ・

 

年中自分自身でしかあれないのは、人類史上の異常事態である。

 

   ・

 

生そのものの慢性痛によって、生命は痛みながら老いていく。

 

   ・

 

どんな言葉も名乗り出ない感情。

 

   ・

 

二度と読まれない文字の数。

 

   ・

 

暗がりは生きることを急かさない。

 

   ・

 

マジョリティは言葉の大通りを歩行する。マイノリティは同じ距離でパルクールをさせられる。

 

   ・

 

オルタナティブな生き方とは、大通りに対する細道を行くことではない。Y字路の真ん中を堂々と歩むことだ。

 

   ・

 

最短距離だとしても、それが隘路(あいろ)なら時間がかかる。「遠回り」であることは、時間的な最長距離であることを意味しない。

 

   ・

 

勉強が既知に向かう歩行であるのに対し、学びは未知に向かう航海である。どこにたどり着くかはわからないが、向かう先はいかなる路上よりも広い。

 

 

 

 

 

———————————————

文 キクイ ヤシン
1987年生まれ。詩人。ブログ http://kikui-y.hatenablog.com/

 

 

  オススメ記事

●シオラン名言集

www.hikipos.info

 

 

Photo by Pixabay