ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

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私が、私でいられるために。

 

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絶望の明滅

 

 

 文・写真 ゆりな

 

 "私は目をふさぐ"

 

これ以上見たくないものを見続けなくていいように

 

表情の隙間に、口角の端の嘲笑を読み取らなくていいように

 

虹彩の奥に、裏切りへの不安を抱かなくていいように

 

綻んだ一瞬に、人を弄ぶ裏の舞台を想像しなくていいように

 

錯綜する情報に感情を奪われないように

 

心の中が忙しくならないように

 

醜い気持ちを育てないように

 

見過ごされた心の態度に傷つかなくていいように

 

 

"私は耳をふさぐ"

 

人の悪口を聞かなくていいように

 

交叉する愚痴に染まらないように

 

気息のリズムを打ち消されないように

 

情報の信頼性を他人に委ねないように

 

即席の意見に惑わされないように

 

私的な思惑に晒されないように

 

本音を知らなくていいように

 

つかれた嘘に気付かなくていいように

 

 

"私は口をふさぐ"

 

未完成の言葉がこぼれないように

 

正体のないものに遇さないように

 

目の前の思いを見失わないように

 

粗野な言葉で大切なものが壊れてしまわないように

 

ここに留まれるように

 

私を放してもらえるように

 

粛々と思いを整理できるように

 

思いを言葉で包み込めるように

 

 

"私は光をふさぐ"

 

物事の真髄を捉えられるように

 

希望を持たないように

 

陰をつくれるように

 

微かな煌めきを見つけられるように

 

流れる想念を逃さないように

 

自らの存在を確認できるように

 

自分の「核」を守れるように

 

1人になれるように

 

 

"私は心をふさぐ"

 

今生きている風景に絶望しないように

 

孤独でいられるように

 

嘘をつかなくていいように

 

大人にならないように

 

一途でいられるように

 

私が私からはぐれないように

 

私を失くさないように

 

私が私でいられるために

 

 

私は、私が今生きているこの世界に、絶望したくない。

 

<プロフィール>

執筆者  ゆりな
2018年2月にひきポスと出会い、物書きデビュー。
以降、自身の体験や心に触れる違和感・痛みを書き綴る。
自己否定の限界が訪れた先で、社会とぶつかった接点に残る傷は、今も薄い皮膜を帯びながら、「生きること」への恐怖を訴えてくる。
苦しさの根源に向き合い、自己と社会の-あわい-の中で、言葉を紡いでいけたらと思う。

  

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